埼玉編Ⅰ・取り調べ~cool~
アメリカのCIAは日本政府に協力者を作り、情報を流してもらう事によって、日本政府に知られる事無く対象であるテロリスト、ナイム・ムハンマドを殺害する事に成功しました。
しかし、埼玉県警の捜査員の遍路と森田は千葉県の現地対策本部で起きている電話回線のパンクは元埼玉県警公安部OBによるものと睨み、動いていました。
埼玉県さいたま市
埼玉県警本部
県警本部に着いた遍路とミツキはすぐに15年前の事件について調べ始める。
黒塗りの契約書と携帯電話の端末が押収されているか、それを調べるため、遺留品が保管されている部署で段ボールをひっくり返して探していた。
「手伝うぞ」
所と大園、山下ら埼玉県警捜査一課の捜査員らも加わり、探すものの、それらは保管されていなかった。
ただし、当時の調書が出てきたため、目を通す。調書に目を通して遍路は確信した。
「押収できなかったんだ。やはりな・・・」
他の捜査員も一つの考えにたどり着いていた。
「あの時のプリペイド式携帯が、押収されずに横流しされている」
せめて携帯電話の番号さえわかれば、と思った時、遍路は大胆な策を思いつく。
「・・・公安の捜査員を取り調べる」
その提案に誰もが唖然とした。
「いくら何でも、それは無茶だ」
所ですら遍路の提案に反対したが、「やってみよう」とゴーサインを出した人物がいた。
捜査一課の課長、星野義経だった。
捜査員らがかつての自分の上司である遍路の手伝いをしていると聞きつけて合流したのだった。
「遍路さん、公安にはこちらから話を通しますので公安調査庁に裏取りを。大園、公安の捜査員の取り調べを頼む。所さん、伝手で神奈川県警の藤沢湘南署の花山さんに井上治の動向を探らせてください。他の捜査員の皆さんは井上治が関わった事件を洗い出してください。お願いします」
テキパキと指示を出した星野はすぐに公安部へ連絡を取り、遍路とミツキ、大園と共に取り調べをすることになった。
急展開となった事態についていけず、キョロキョロと落ち着きなくなった。
それを見た遍路はミツキに声をかける。
「どうした?」
「あの・・・すごく急で、その・・・ついていけてないんですよね・・・まさか、一課長の鶴の一声でここまで動くとは・・・」
「星野は頭のいい刑事だからな。加えて人を見る目もある。適材適所に人を配置するのが上手いんだ。人の上に立つようになってその頭角を現した感じだ」
「へぇー・・・」
「所は以前、神奈川県警藤沢湘南署と合同で捜査をした事があってな。その時に組んだのが花山警部だ。それ以降も神奈川に被疑者がいる際はこっそりと探らせているようだ」
「でも、大園さんは何で取り調べをする事になったんですか?」
「大園とお前は年齢があまり変わらないらしいな?」
「はい・・・大園さんが2つ上なんですよ」
「でも、大園は捜一にいるのは何でだと思う?」
「え?・・・元々キャリアで昇級試験とかでなったんですかね?・・・」
「階級はお前と同じ巡査部長だ」
「え?・・・」
「大園は事情聴取と取り調べで捜一に上がったんだ。お前も勉強がてら見てみるんだな」
取り調べ室にはすでに当時からいる公安の捜査員がいるものの、顔出しはしないためか部屋は薄暗い状態だった。
「相手も相当、大園を警戒しているようだな・・・」と星野はため息をついた。
しかし、それを気にせずに大園は取り調べる公安の捜査員の前に座った。
心配になった星野は大園に「大丈夫か?」と声をかけるとすぐに「問題ありません」とどことなく強気な返答が返ってきた。
それを見た星野は任せられると判断し、ミツキに調書を取らせる形で取り調べを始めさせた。
「取り調べを始めさせていただきますね。名前を教えてください」
大園のストレートな質問に公安の捜査員からは嘲笑が漏れた。
素性を隠して捜査を行う以上、名前をまともに答える気はないようだった。
「山田太郎(仮)だ」
ナメてるな、と星野を含め、捜査一課の面々は苛立ちを隠せない。
しかし、大園としては呼ぶ名前がある以上は前進した、とニコッと笑う。
「では、山田(仮)さんに質問です。15年前の特殊詐欺事件について話してください」
「はぁ?」
「調書には捜査一課の視点でのみ書かれてます。ですが、公安側から見たあの特殊詐欺事件を話して欲しいんです」
「なるほど」
「捜一の視点では、OBが逮捕され、携帯電話とその契約書が押収されてないんです。逮捕されたのは元公安の捜査員なので、何かご存じじゃないですか?」
「さぁ?」
想定通りの質問がきたのか、山田(仮)ははぐらかす。
「もしかして、その中に公安の捜査員が捜査で使う携帯電話の番号が紛れているからじゃないですか?」
そこを突かれた瞬間、暗がりではあるが、頭を触るのが見えた。
「焦ってます?」
大園のその一言に山田(仮)はビクッとした。
「そんな事はない」
暗がりとは言え、山田(仮)うっすら顔がわかる程にまで机のライトに顔を近づけてきた。
先程の事が図星だったのか、まばたきが多くなっていた。
「信じられないぐらいまばたきが多くなりましたね」
大園は手元のメモ帳に何やらメモをした。
取り調べを別室で見ていた遍路の元に電話がかかってきた。
相手は公安調査庁の神田だった。
「はいはい」と用件を聞き終わると、大園のいる取調室に入っていき、大園を呼ぶ。
「大園さん」
「はい?」
遍路の手招きで取調室のドアの前に行き、遍路から耳打ちされる。
「・・・なるほど」
かなり有益な情報が遍路からもたらされたのか、小声で発した。
そして、大園は山田(仮)に向き直った。
「公安の捜査員の携帯番号、教えていただけますか?」
「教えるわけがないだろう。我々の機密情報だぞ?」
「そういうわけにはいかないんですよ。・・・二階義信さん」
大園はタブレット端末を見せた。
タブレット端末の画面には公安調査庁からもたらされた情報が記載されていた。
さらにそこには山田(仮)―二階のプロフィールが表示されていた。
「公調めぇ!!!」
「あまり我々をナメないでいただきたいですね。では、話していただきますよ・・・」
「そこまで情報が伝わっているのであれば、話すしかないな」
二階は後ろにいる他の公安の捜査員から肩を叩かれたが、ボソボソと話して言いくるめられたのか、大きなため息をついて取調室の明かりをつける。
ここではっきりと公安の捜査員らの顔がはっきりとわかった。
そして、公安側から見た15年前の事件を話し始めた。




