ドドメキ作戦開始~BAN~
東京都千代田区九段下
スリーセブン日本武道館前
政府からの委託を受けたサンユウコールセンターを含むコールセンターからの休業要請に応じず、営業することにし、原因となりえるゴミ箱を急ごしらえで段ボールで塞いで、そのまま営業を続けることになった。
コンサート会場の日本武道館の開場となる15時前には客がごった返していたが、開場した今はテロの影響もあってすぐに閑古鳥が鳴く有様となった。
客がごった返していた後にゴミ箱を塞ぐと今度はコンサート終演後のラッシュに備えていた。
とは言え、外国人は外務省からの要請でシフトに入る事が出来ず、すでに直接、本人に連絡がなされており、あらかじめ欠勤する旨が伝えられていた。
急遽、今日、休みだった日本人の従業員を呼ばざるを得なくなったものの、こちらもテロの影響であまり乗り気ではないのが電話越しで伝わってきた。
その間もコールセンターからの電話がかかってくるも、OFCの渡辺正人はそれを断っていた。
『政府からの依頼でお電話させていただいております。ちゅら島コールセンターの運天と申します。Jアラートで発令された通り、コンビニの店舗の休業の要請を行っております』
「・・・お断りします」
『しかし、これは政府からの正式な避難要請でして・・・』
コールセンターからの電話を無言で切り、そのまま持ち込んだノートパソコンで資料作りをする。
売り場にはスタッフの川端と島がおり、この2人も急遽、シフトが伸びてしまっていた。
政府がコンビニに近づかないように喚起したせいもあってか、より客足が遠のいている。
「これじゃ国ぐるみの営業妨害だよ・・・」
渡辺は軽く作業を終え、売り場に出てきて店の有様を見て大きなため息をついた。
気分転換で飲み物を買い、再び事務所に戻って資料作成を始める。
時計を見るとそろそろ17時になろうとしており、一般企業のサラリーマンなら退社時間であるが、コンビニの本部社員はかなり遅くて22時ぐらいが退社時間である。
しかし、この有様であるなら、自分が出来る仕事もなさそうなので、定時と言える17時にあがることにした。
資料を作成し終え、ノートパソコンを片付け、日本武道館前店を出、次の九段下駅富士見店へ向かおうと店を出ようとした時、すれ違いにようやく客が現れた。
それも束の間、塞いでいるゴミ箱の扉を開け、明らかに弁当と空き缶を入れたようなゴミを入れ、すぐに去ってしまった。
マナーの悪い客がいるものだ、と思いながら島と川端に「お疲れ様です」と言い、去ることにした。
近くのパーキングに止めた社用車に乗り込もうとした矢先、地響きと共に花火が上がったような大きな音がした。
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東京都千代田区
警視庁本部庁舎
合同捜査本部宛てに汐留署の内村から電話が入った。
汐留署の管轄で起きた事件で今回の事件に関わりのある人物―宇治島から今回のテロで使われた爆弾に関する情報がある、ということらしい。
『汐留署の内村です。汐留署管内で以前、警視庁組織犯罪対策課と合同で捜査を行った際、宇治島が取引を行うのではないか、というタレコミが別件で逮捕した義藤会と敵対している関東圏の暴力団員から入ったんです。もっとも、ソイツは陥れるつもりだったようですが・・・さて、本題をお話しし致します』
合同捜査本部内に聞こえるようスピーカーに変えられ、内村の話に耳を傾ける。
『結論から申し上げますと、我々はこの捜査で宇治島を取り逃がしました。ですが、宇治島が取引をしようとしていた人物は特定され、逮捕出来ていました』
「逮捕出来ていた?」
神田が内村の"逮捕出来ていた"という発言に引っかかりを覚えた。
『・・・拘置所内で自殺しました』
「自殺?!」
『その人物は観念してか、洗いざらい、全てを話し、検察へ送る直前に自ら突然、舌を噛み切って死亡しました』
一同は舌を噛み切って自死するというやり方に衝撃を覚えた。
しかし、公安調査庁の神田だけは心当たりがあるらしく、浅見に耳打ちをした。
神田から耳打ちされた浅見はすぐに公安調査庁のデータベースにアクセスし、資料を探し出す。
『その人物は、東谷英和という人物で、20年前にカルト教団のナンバー2の男だった。ただ、そのカルト教団は知っての通りだとは思いますが、警視庁が山梨県内の本拠地に乗り込んで大規模な壊滅作戦を行い、解散に追い込まれたはずです』
「・・・と言う事は、今回のテロはそのカルト教団の再興を目的としたものであると考えてもいい、と?」
『そうです。東谷はそう供述しました。ただし、東谷は留置所で自殺しましたが、それを他の教団関係者が引き継いだとしたら、合点がいきます』
内村と征陸は今回のテロはカルト教団の再興を狙ったもの、ということで意見が一致した。
しかし、神田と浅見は違っているらしく、「待ってください」と割って入った。
「その東谷ですが、教団とは袂を分かち、出所後はひっそりと暮らしていたようですが、一か月前に突然、行方をくらまして失踪しているんです。我々としては元教団関係者を仲間として引き入れて、本人に接触させてずっと監視していたんですが・・・」
『・・・それが再び、宇治島との取引に現れ、失敗し、洗いざらい自供した後に、と言う事ですか』
「ところで、どういった事を東谷は話したんですか?」
『はい。取引される物の事でした。火器と弾薬でした。そして、宇治島はこの火器と弾薬でテロを起こせば再興できる、と言っていたようです』
「失踪は宇治島からチャンスが与えられた、として監視の目から逃げた、と・・・」
それに関してさらに調べた浅見から教団の現在に関する情報がもたらされた。
「教団なんですが、ここ数年、活動をしていません。それまで教団の残党が集まっていたアパートの一室も引き払い、関係者も足を洗っていたり、同じく我々のスパイとして現状を報告したりしてます」
『・・・それじゃ、東谷は自殺しても、誰も引き継ぐ人間がいない、と言う事じゃないですか』
「そうなんです。そこが不可解なところです」
一同はその不可解な部分を考えたが、結論はなかなか出ない。
しかし、神永が一つの可能性に言及した。
「もしかして、第三者がいたんじゃないですか?その第三者が、今回のテロの首謀者、と言う事じゃないですか?」
「それだ!」と内村は合点がいったが、神田と浅見は納得がいっていない。
「それだと、"悪魔の証明"になりますね。いないものを証明しなければならないのはどうかと思いますが・・・」
ほぼほぼ論破に近い形で内村と神永らは黙り込んでしまう。
―宇治島が武器を東谷へ横流しし、その東谷は"第三者"に操られていたとしたら、その"第三者"は相当なタマだな・・・
征陸は得た情報と推理をまとめ、考えうる可能性を探り始めた。
その瞬間、電話が鳴り響いた。一同はそれが何かをすぐに察した。
「第四波です!場所は、五反田と目黒!」
「田町と高輪もです!」
すぐに電話番の捜査員が場所を報告し、神田はすぐに地図上のその場所にピンを刺した。
「件数は!?」
「五反田と目黒が1件、田町と高輪が2件。いずれもスリーセブンです」
先ほどよりは減ったが、相変わらずスリーセブンの店舗が休業には応じなかったために被害に遭ったか、と大きなため息が漏れる。
さらに和己は机を蹴り、自分の力が及ばない事に苛立ちを覚えていた。
その混乱の中、再び電話が鳴り響いた。
「報告!九段下でも発生!」
先ほど話にあった九段下もか、とフミは頭を抱えた。しかし、次の報告で一同は驚く。
「・・・ですが、店舗の前にて被疑者確保!現在、身元を調査しています」
その報告にフミは顔を上げ、マコや勇作と喜びを爆発させた。
「怪しい奴は俺がチクッといたんで・・・ま、俺の手柄ってことで」と正恭がモニター越しにグーッタッチを求める。
和己は正恭の能力がただ者ではないと確信した。




