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日常の破壊者  作者: ファミ・ローⅦ世
1st~日常の破壊者~
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13/202

3社家宅捜索開始直前~The Reluctant Heroes~

東京都千代田区

警視庁本部庁舎

一通りの紹介を終えて、和己の態度に不破は一気に不安に襲われるが、神田から今回の捜査方針となる作戦の立案者であることを聞かされ、驚くもここまでの自信には何かある、とも思えてきた。


「では、オブザーバーから今回の捜査方針とその作戦の説明を」


神田から促された和己はコンビニ本部への捜査をどう行うかを説明する。

和己は火災調査官を一通り、睨みつけて説明を始めた。


「さっそく、説明する。まずはコンビニの本部連中・・・特に滅多に現場に出ない店舗オペレーション部の上層部だが、あまり現場をよく知らんし、知ろうとする時は重大なトラブルが起きた時くらいだ。マニュアル通りに動いていないのに儲かっている店を目の敵にしがち。いつもは本社にこもって机の番だけして、楽な仕事で俺達どころか、オーナーよりもいい給料をもらっているクソみたいな連中だ」


和己はメモを取るだけの時間を与えるも、誰一人としてメモをしていないことに気付いて「メモを取れ!バカか!」と怒号を浴びせ、舌打ちをした。

その怒号で全員、一斉に思い出しつつもメモを取る。

全員がある程度、メモを取ったであろうタイミングを見計らい、話を続ける。


「さて、今回の件はそもそも現場の状況を伝える人間がくたばった以上、本部連中は現場を知る術がない。つまり・・・」


和己の言わんとしていることに気付いたマコは「これまでの経験だけで動こうとする!!」と和己の話を遮って思わず答えてしまい、和己の怒りを買ってしまったかも、と恐る恐る和己の方を見た。

和己は怒っている雰囲気を出しつつも、「それだよ、ネーちゃん。やっぱ、アンタはただ者じゃないな」とマコを睨んだ。


(じゃあ、何で睨むのよ~!?)


多少のやり辛さを感じつつも、マコが話を遮って答えを先回りしたおかげでメモを取るだけの時間が出来たらしく、ペンを走らせる音が早くなっていた。


「本部連中がやっている作業は1つ、店に出向いたネーちゃんと同じ本部社員の安否確認。2つ、マスコミが伝えた情報から遺族などから質問などへの対応。3つ、現場が置かれている状況の確認と経験則からの対応。4つ・・・その現場で起きていた本部にとってまずい情報の隠蔽。この4つだ。警察への対応は後日、情報を整理して自分たちにとって都合の良い情報のみを発信させるのが目的だったんだろう」


それに疑問が沸いたフミは「はいはいはーい!」と手を挙げた。

和己はフミを睨みつけながら、「この場に及んで何だ?あ?オイ!」とフミを威嚇しはじめ、フミは戸惑いながら、続けた。


「あ、えーっと・・・その、自分たちにとって都合がいいことって、ここまで被害が拡大した原因が自分たちにはない、としたいってことですよね。そういえば、コンビニが取り上げられる番組って生放送がなくて、全部収録のやつが多い気がしますけど、関係あったりします?」


「良いとこに目をつけたな。その通り。ここまで組織的にやるような連中だ。心構えとしては徹底的に化けの皮を剝がしに行け。証拠を突き付けて、逃げ場をなくせ。口車に乗るな。何なら、連中の話は全部ウソだと思え。俺達は今から、国家権力を使って企業に全力で暴力をふるいに行く」


全力で暴力をふるいに行く、という宣言に全員が困惑した。

しかし、それをツッコんで停滞させるよりは具体案がある和己に任せるしかない、と思った。


「さて、あとはチェーン別の対応といこうか。その場の対応に任せるが、消防の火災調査の結果が出てからか、もう少しで出るぐらいのタイミングで入ってほしい。ただし、ファミメは少し待って欲しい。ファミメは他の2社に比べて非常に効率が悪く、下手をすると被害者数は他の2つよりも多いはず。何せ自動釣銭機全盛の時代にドロワーを開けて金を出しているのだからな。なので、実際の死体の数と保険会社に提出した被害者数に大きな開きがあって保険会社から調査依頼が入るはずだ。そこを突け」


ファミリーメイトへと家宅捜索に入る捜査員はすぐにメモした。

「次にオーソンだが・・・」と話を続けた。


「オーソンはマニュアル至上主義だ。マニュアルに書かれていることが全てで、ルールが絶対だ。そして、そのルールを作っているのがバカならば、ルールそのものがバカ。当然、この事態はマニュアルでは想定がなされていないはずだ。つまり、今でも事故か何かと思っているはずだ。強めにテロである証拠を突き付けて黙らせに行くしかない。プライドをズタズタにして、床に擦り付けてやれ」


同じくオーソンに行く捜査員がメモを取り、和己は少し水を飲んだ。

「次にスリーセブンだ」とスリーセブンに行く捜査員を和己は睨んだ。


「スリーセブンはコンビニ業界1位に君臨する、いわば帝国。それだけに対応も素早くて実は厄介な存在だ。何も出ないからな。店舗数も多いことは多いが、ほとんど駅前からは撤退して、住宅地のほうに重きを置いているようだ。あとは、上層部の対応次第だな。何が何でも24時間営業を続けようとするはずだ。これを阻止するだけの証拠を固めてほしい」


スリーセブンだけは少し変わっており、どうやらこれから起こりうる第三波に向けての対策のための布石のようだ。

「そして、全体的な事として」と話を続ける。


「この家宅捜索はドミナント戦略の脆弱性の証明をするための家宅捜索だ。基本的にドミナント戦略は、メリットとしては大まかに1つ、地域での認知度が上がる。2つ、配送効率が上がる。3つ、地域に合わせた宣伝広告ができる…この3つだ。しかし、これをやって都合が良いのは本部ぐらいだ。ほとんどのデメリットは店舗側が占めている」


メモを取らせる時間を設けて、メモを取らせると和己は話を続ける。


「そのデメリットは1つ、地域の事情が変わると売り上げが大きく影響される。2つ、店舗同士の顧客の取り合いにある。そして3つ、災害時のダメージが大きい…このうちの3つ目をテロによってつつかれ、被害が大きくなったことを証明する。これがこの家宅捜索の最大の目標だ。あれだけまとめて一つのエリアに集中的に出店していればまとめて被害に遭う。それを本部側が想定できていたか、どうか。出来ていなければ、本部側に過失があるということが証明され、監視カメラの映像の即時提供の要請に応じなかったのは捜査妨害にあたることにもなる。そうなれば、何かしらペナルティも課せられるなぁ」


ペナルティとなると本部社員の逮捕もありえるのか、とマコ達は唾を飲み込んだ。

「最後に言っておく」と全員がメモを取り終えたタイミングで和己は口を開いた。


「相手はマスコミすら黙らせることが出来る、正直ヤーさんより厄介な連中だ。まぁ、おたくの新聞の扱いをやめるぞ、って脅してな。だから、この事は世間に広く知られることはない。だけど、後から風向きが変わったら、俺達のやったことには意味が出てくる。本当に悪い奴は爆弾で沢山の人達の命を惨たらしく奪ったテロリストだが、ここまでセキュリティーをガバガバにして、どうぞ殺してくださいって言ってるようなことをしている奴らもテロリストと何ら変わらん。警察なら警察らしく国家権力を行使して、明かすものをしっかり明かしてこい!これは一日本国民からのお願いだ!!!」


それまでの態度とは打って変わって和己は深々とお辞儀をした。

和己の行動に呆気にとられたフミやマコ、勇作もすぐに頭を下げた。


「・・・彼の言うことは無茶苦茶だが・・・こればかりは、僕たちも同じ気持ちです。一人の日本国民として、平穏な日常を取り戻すために、何が悪いのか調べて白黒ハッキリさせたり、これから起こりうる悪いことが事前に止められるためなら・・・僕も戦いますよ!」


勇作はグッとファイティングポーズをとった。

マコとフミもお互いに顔を見合わせ、静かに頷いて「私たちも同じです!」と声を揃えた。


「我々の職務は、日本国民をテロの脅威から守ること。そのためなら、どんなこともする。約束しよう。このテロを必ず終結させる」


神田は征陸と頷き、一般人である和己達に誓った。

その時、合同捜査本部に一本の電話が入った。裁判所からだった。


「裁判所から令状、出ました!」


「よし。作戦開始だ!」


神田の一言で全員の士気が上がった。

受け取った警視庁公安部の捜査員らは一斉に動き出し、それぞれの現場へと赴く。


「これが・・・警察か・・・」


フミはドラマ通りの警察の連帯感に憧れと尊敬を抱いた。

捜査本部もすぐに動き、消防に保険会社からの連絡があったか、確認をする。

「保険会社から連絡、あったようです。やはり数字に違和感がある、と言うことだそうです」と電話番の警察官が報告した。

「すぐに現場の捜査員に通達」神田はすぐにファミリーメイトへ向かった松沢達に連絡をするように指示を出した。


「・・・それにしても、松沢を向かわせたんですか・・・どうなるか、わかりませんよ?」


松沢を公安へ引き入れた征陸は神田の采配に驚いていた。

元々は所轄署の刑事課の刑事で取り調べの仕方にはどこか難を感じていたが、その緻密な裏付け捜査には定評があったため、公安部へと引き抜いた。

その読みは当たり、今までは現場には出ずに証拠をまとめ、過激派と繋がって情報を提供するのが松沢の任務であった。

しかし、今回は表に出ていき、直接、事情聴取をして「完落ち」させるのが狙いのようである。


「あの刑事さん、何かヤバいんですか?」


気になったフミは征陸に訊いた。

征陸は「ちょっとな・・・」とへへっ、と笑いながらフミに答えた。

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