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いったん
もう夏も盛りになるころのことです
「出来ました」
娘は反物を両手で持つと、勝ち誇る様に上下に広げました。
それを見たおじいさん
「これは見事な出来栄えじゃ」
娘は嬉しくて両腕をバサバサと振りました。
「これを町に出て売って下さい」
娘がそういうと、おじいさんは
「いやいや、もったいない、とっておこう…いや、そう言いたいところじゃが、わしもばあさんも着物の仕立てはできんから売りにいってみようかの」
娘は両腕をバサバサと振りました。
おじいさんは街へ出ると、呉服屋に行き、その反物をお金に替えてきました。
それは、おじいさんとおばあさんの住む、あばらやにあいた風の通る隙間を治せるぐらいのお金でした。
おじいさんは家を治すと、おばあさんも娘も喜びました。
娘は二人の家に住み続け、反物を織ってはおじいさんがお金に変えるので、おじいさんとおばあさんの家は見違えるほど立派になり、二人ともすっかり裕福な暮らしになってしまいました。