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娘
雪が止んだ日の朝、おじいさんは娘に言いました。
「お前さんはあの時の鶴じゃないかね。」
「いえいえ、そんなことはありません」
「いや、途中から靏の姿をしておったが」
「絶対に無い、勘弁して欲しいですね」
鶴は娘の姿に戻りました。
「実は私、娘なんです」
「おう、そうじゃった」
おじいさんは娘に言いました。
「雪は止んだが、ここにいたければ居ても良いぞ」
いつの間にか隣にいたおばあさんもうなづきました。
娘は「それでは反物が織れるまで」と言いました。
「なんじゃって」
「いえ、なんでもありません。ところでおじいさん、隣の部屋を貸してください。決して覗かないでくださいね」
「機織りは進んでますか」とおばあさん。
「機織り?そんなことしていませんよ」
「そうじゃったかの」
「とにかく、覗かないでくださいね」
娘は二人にくぎをさしました。
娘はそれから毎日、夜な夜な、なにかの作業をするのでした。
「トントンカラリ、トンカラリ、トントンカラリ、トンカラリ」
おじいさんとおばあさんは、音を聞くたび、覗こうと思いながらも眠ってしまうのでした。