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飛翔
未明の峠を一気に下り
潜り込んだ霧を掻き分けた
日が昇り
霧が晴れると
鶴は運転席の窓を開け
峠で外したブレーキペダルを
投げ捨てた
アクセルを甕で押さえて
もう誰にも止められない
あと少しで長者屋敷の所まで来ると
井戸から取れた透き通る
丸い氷の板を抱え
太陽に近づかんとばかりに
鶴は勢いよく飛び上がった
その暴走する暴れ馬から
高く高く上がり
両の翼でその氷を掲げると
光は結んだ紐の先に集まった
火が紐伝いに勢いよく燃え始め
火は全ての甕の砂に潜り込んだ