14/18
疾走
明くる朝
長者どんの家に向け
車を走らせる鶴の姿がありました
それはそれは
大きな
タンクローリー
砂の詰まった甕を助手席と
ガソリンタンクの上に乗せて
運転席の屋根には
今朝の井戸から取ったばかりの
真ん中が厚くなった
透き通る円い氷の板も乗せ
靏は疾走しました
我を忘れ
怒りも飲み込んだ清々しさに
砂嚢を焼け焦がして
汚れなき真白な翼を
憐憫の情に
傷つけながら
瞬きもせず
見開いた目で
たった一つの
非ざる者を滅ぼすため
鶴は光の速さで
魂を矢に変え
突き進むのでした