更に3
ひと月半後にお伴の男がやってきました。
こんどは長者どんも一緒です。
二人はおじいさんとおばあさんの家に上がり込むと
おじいさんが二反の織物を差し出しました。
お伴の男は
「ほれ、先月の分と今回の分だ」
小判は二枚でした。
「残り一枚は今度な」
支払いが終わると長者どんはこういいました。
「今度はふた月で三反織ってくれんか、な。
反物を売ろうとおもっとるんだが、知り合いの呉服屋が
三反まとめてなら買うというとるんだ。どうだ、たのむ」
おじいさんとおばあさんと娘はさすがに驚きましたが
おじいさんは冷静に聞きました。
「それで、三反で小判は何枚なんですか」
長者どんは
「できあがったものをもっていかないことにはわからんが、
今よりは、少しましになると思う」と、あいまいに答えました。
そのあと
「たのむ。期待しているからな。」
というと、帰っていきました。
お伴の男も少しだけ家の中をじろじろ見まわしてから
「ふん」と一言放ち、帰っていきました。
さあ大変です。ふた月で三反も織ることなど容易ではありません。
娘は、長者どんとお伴の男が見えなくなるのを待ってから
おじいさんとおばあさんに話しました。
「機織り機は予備の一台があります。しかし...。
三反を織ろうと思えばおじいさんも
作業をしなくてはなりません。」
おじいさんは
「なに、わしもやるよ。ばあさんにだってできるんだ」
と、から笑いをしました。