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魔界都市備忘録  作者: パイナップルの妖精
第七章「魔忍伝」
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二話「狂気」




 超犯罪都市デスシティ。


『魔界都市』『裏側』『矛盾の坩堝』『悪鬼の巣窟』『世界の果て』『ソドムとゴモラ』


 様々な異名を持つが、表世界では都市伝説程度の認識である。


 ここには、人類にとって「大きな課題」となるものが集まる。


 まずは種族。

 妖精、悪魔、邪神、宇宙人、高度なアンドロイド──

 フィクションの中にしか居ない筈の存在が、此処には当たり前のように居る。


 そして文明。

 多種多様な種族がもたらす知識、文化が、科学者たちの予想を遥かに超える化学反応を引き起こす。


 次に力。

 魔力、妖力、霊力、神力、暗黒物質に純エーテル。

 古今東西、様々な「力」がこの都市では扱われている。


 種族、文明、力。

 この三つが揃うことで、超犯罪都市は魔界都市へと変貌する。

 犯罪者の楽園ではない……人類の手に負えない超常の存在たちの住処となる。


「……ッ」


 時間帯は夜。

 デスシティが真の姿を見せはじめる時間帯だ。


 渾沌とした都市の情勢を、ボロアパートの上から見下ろすくノ一がいた。


 百合である。


 彼女は黒色のポニーテールを揺らしながら、その表情を苦渋で歪めていた。

 装衣に包まれた成熟した肢体を両手で抱きしめている。


 魔界都市──その名に嘘偽りがないことを、百合は改めて理解した。

 異常とも言える文明発達。入り交じる数多の種族。


 そんなことよりも──

 百合は「あること」に戦慄していた。


 治安が無いのだ。

 悪いのではなく、無いのだ。


 ヤクザたちが道路のど真ん中で銃撃戦を起こしても、誰も止めない。

 むしろ住民たちは煽り、楽しんでいる。


 視線を落とせば麻薬に酔った者たちが乱交パーティーを繰り広げていた。

 そうでない者も、その場の雰囲気で盛っている。


 右を見れば、邪教徒の集団が異形の混合生物キメラを「生贄」と称して惨殺していた。

 断末魔の悲鳴を上げるソレを、邪教徒たちは意味不明な言語を呟きながら解体していく。


 左を見れば、奴隷商人が自慢の商品を宣伝していた。

 首輪をかけられた少女たちは「味見」と称され、生臭い白濁液をかけられている。

 その目に光は無い。

 嬉々として腰を振るう少女たちの腕には、必ず注射跡があった。


「どうかしてる……ッッ」


 百合は頭を押さえる。

 おかしくなりそうだった。

 この都市の在り方は、「狂気」などという言葉では到底表現しきれなかった。


 平然と歩いている住民たちを見ていると、自分がおかしいのではないかと錯覚してしまう。


(違う、違う違う……ッ、私はおかしくなんてないッ)


 発狂しそうな精神を無理やり抑え込んで、百合はため息を吐く。

 そして冷静に考えた。


 頼れるものはない。

 ある筈が無い。

 自分の力だけで、この不浄な世界を生き延びなければならない。


 百合は覚悟を決めると、ボロアパートを飛び降りる。

 魔忍特有の身体能力を活かして壁を蹴り、容易に地面へと着地する。


「……まずは隠れ蓑だな。そして食料の確保か」


 マフラーで口元を隠し、薄汚い路地裏を進む。

 刹那、その肢体に異形の触手が絡み付いた。


「!!?」


 反応するが、既に遅い。

 その歳不相応に発達した肢体をねっとりと弄ばれる。

 百合は悲鳴を上げようとするが、口に触手を入れられ、闇の中へと引きずり込まれていった。


 暫くして。

 暗闇から異形の笑い声が響き渡る。


「ククッ、これはイイ獲物だ……たっぷりと楽しませて貰うぞ」


 したたるヨダレを拭う音と共に、異形の気配は消えていった。




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― 新着の感想 ―
[一言] こりゃ試験合格で下忍とか上忍はデスシティで通用するレベルなのかな? 表の住人だけど
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