表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界都市備忘録  作者: パイナップルの妖精
第六章「黒兎伝」
49/60

四話「経験の差」



 黒兎の魔闘技法は、師であるネメアとは内容が違うようだった。

 大和は興味津々といった様子で彼女を観察する。


 黒兎は駆ける。

 ミスリル銀製の長物を巨大な大剣に変化させると、全体重を乗せたフルスイングを放った。


 互いの体格差から、この攻め方は無謀に見えた。

 しかし──大和は防御した手ごと後方に押し返される。


「ほぅ」


 大和は感嘆の声をあげた。

 黒兎は攻めの手を緩めない。

 規格外の剛力に任せて強引に押し込む。


 大和は冷静に防御しながら、彼女の力の源を探っていた。


(ただの出力アップじゃねぇな。何だ、この異様な力は)


 魔闘技法を習得できたのは、ネメアを除いて数名のみ。

 それほどまでに高度な技法なのだ。


 黒兎の魔闘技法──その真相は七つの特殊能力にあった。

 ネメアの魔闘技法は単なる出力アップだが、彼女のものは違う。

 七色の煌きが示す通り、七つの能力がある。


『倍化』『譲渡』『半減』『吸収』『支配』『破壊』『再生』


 その能力は多彩にして万能。

 母親譲りの魔術の才が、魔闘技法を一段上の領域に昇華させた。


『魔闘技法・色彩(しきさい)


 今、黒兎が使用しているのは『倍加』の力。

 己の膂力を何万倍にも増幅している。

 だから、無理なゴリ押しができている。


 しかし、


(倍加だけではこれが精一杯……流石パパなのです)


 黒兎は内心、感嘆していた。

 自分の父親はこんなに強いんだと、誇らしくも思っていた。


 大和の能力は単純明快だ。

 極限まで鍛え抜いた肉体と武術。

 たったそれだけ。


 しかし、だからこそ隙がない。

 一つ一つの性能が違い過ぎる。


 反射神経一つをとっても、黒兎は彼に遠く及ばない。


 また、大和の力を支える根底に「あるもの」があった。


全身凶器(フルアーマー)


 全身の、指先から毛先に至るまで全てが武器であり凶器。

 幾星霜の年月、欠かさず自己鍛錬を積む事で得られる武術家として至高の肉体。

 その攻撃力は最強。その防御力は無敵。


 彼は武器を用いずとも、世界最強の存在なのだ。


 黒兎が特に異常だと思っているのは、防御力だ。

 本気の攻撃でも掠り傷一つ負わせられない。


 極限の闘気を練り込まれ、鍛え抜かれた金剛石の如き肉体だ。


 黒兎の持つ攻撃手段で、彼の防御を突破できるものはなかった。


 しかし、黒兎は構わないとゴリ押しする。

 時間稼ぎである。


 極論、大和に勝てなくてもいい。

 時間を稼げれば、それでいい。


(あと十秒……!)


 黒兎は体内時計で時間を計算しつつ、攻め続ける。


 ふと、違和感を覚えた。

 大和が防御一辺倒なのだ。

 その灰色の三白眼と、目があった。


「ッッ」


 黒兎は一旦距離を置く。

 冷たく鋭利な灰色の三白眼。

 まるで全てを見透かされているようだった。


「なるほど……『倍化』したからこの膂力か。あとは『譲渡』『半減』『吸収』『支配』……残るは『破壊』と『再生』か? 七色ってのはわかりやすいな」

「!!」


 黒兎は驚愕で目を見開く。

 大和は笑った。


「パパに隠し事は通用しないぜ」


 チッチッチと、人差し指を横に振る。

 次にデコピンの構えを取った。

 瞬間、「バチン」と、落雷のような轟音が響き渡る。


 指向性を持った爆風が生まれ、黒兎を呑み込もうとした。

 黒兎は上空に跳ぶことで回避する。


 彼女を見上げながら、大和は言い放った。


「もう二分経ったぜ! まだやるか!」

「……やりませんとも。これ以上は怖いですから」


 そう言うと、黒兎は夜の闇の中に消えていった。



 ◆◆



「怖い、か……パパ凹みそう」


 壁に手を付き項垂れる大和。

 落ち込むのもほどほどにして、彼は明後日の方向を見る。


「さぁて、どこに逃げたあのヤロー……んー」


 体臭や肌の質感、直前の言動や走り方。

 その他様々な要素を纏めて、標的(ターゲット)の居場所を特定する。


 大和の戦術眼は最早未来予知……擬似的な千里眼の領域まで至っていた。


 標的の居場所を特定した大和は、その辺にあった石ころを拾い、闘気を込める。

 そして投擲した。


「おそらく近隣の同業者に匿ってもらっていると見た。……まぁ、その同業者の土地ごと吹っ飛ばせば問題ねぇ♪」


 物騒な事を言う。

 直後、地響きが起こった。

 少し遅れて爆発音が響き渡る。


 石ころが着弾し、標的が隠れている事務所ごと一帯を吹き飛ばしたのだ。


 黒兎は妨害屋としての仕事を全うした。

 この結果は、依頼主の問題である。


「うっし、依頼完了♪」


 大和は無邪気な笑顔でガッツポーズを取った。


 黒兎は紛れもない天才だが、まだまだ父親には及ばなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ネメアと黒兎以外の魔闘技法つかえる人が気になります。 あと、ネメアの弟子は何人いるんでしょうか。 登場キャラで弟子だった人は誰かも気になります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ