6話
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「昨日は楽しかったね~」
「そうだな。美沙もとっても喜んでいたし、結局はおっけぃだったんだな」
「そうだよ! 美沙ちゃんが楽しそうなのを見て、私も何か気分が乗って来たもん」
翌日、雅たちは、朝遅くからミイの部屋に居た。
今日から冬休み、ミヤの両親は互いにいつもの様に、職場に向かい、妹の美沙は部活で、午後から学校だ。ミイの両親も、今日は店が定休日で、いつもの様に、両親 祖父祖母共に、食事とカラオケに行った。従って、今は二人だけの状態だ。
いつもは二人だけの状態にはなっていても、普通に楽しいお喋りは絶えないが、さすがに先日のあの “件” が脳裏をよぎり、二人の言動が、いつもよりぎこちない。
昼食をミイに作ってもらって、一緒に食べ、今はのんびりとしたいところだが、今の二人にはそんな気持ちの余裕などはない。
「ねえミヤ。最近どう?」
「さささ、さいきんって、どどどどうだろ.....」
何故かテンパるミヤ。
「ミヤ、緊張しすぎ」
「そ、そう言うミィだって、さっきから本が逆さまだぞ」
「な、何か緊張するな」
「うんそうだね、いつもと違って気分が何か違う...、かな.....」
「そ、それに.....」
「それに??」
少し間を置いてから...。
「ミィ......、パンツ見えてるぞ、さっきから」
「な!.....、ミヤのえっち! もう!」
サッと、足を閉じるミィ。
「お、教えてやってるんだから、感謝しろよ」
「言わなくていいの。何なら、黙って見てなさい!」
「え?.....」
「ええ?....ええっと.....、じゃなくって......」
ミヤが小さい声で。
「(どうせもっと先を見るんだから....)」
「なに??」
「いや、何でもない」
「ところで、 アレ はあるのか?」
「アレ?ってアレの事?」
「そう、アレだけど」
「ミヤは持って来たの?」
「一応は、ミイは?」
「取りあえず、私も、入手してあるわ」
「カッコいいな、入手なんて....」
「何か変、ミヤ」
「お互い様だろ」
「............」
「......ミイ、....」
「うん....」
「こっちにおいで....」
「うん.....」
二人は軽く抱きしめ合い、キスをした。
それが合図となり、二人は深く深く溺れていく.......。
(すいません、ここからは 割愛 という事で、お願いいます (作))
□ □ □
新しい年が来た。
朝日が差し込んできて、昨日まで賑やかだった町中も今日は静かだ。
時々歩いている人は、初参りの帰りだろうか、チラリ ホラリ と見え、息が真白でとても寒そうである。
「明けましておめでとう、父さん母さん」
「「おめでとう 雅」」
「おめでとう お兄ちゃん、今年もよろしくね」
「おめでとう 美沙、こちらこそよろしくな」
「じゃあ、頂きましょうか」
と恭子が言い、お節を含めた正月料理が食卓に並び、雅人が挨拶の後、いただきますの掛け声をかけた。
「「「「いただきます!」」」」
恭子と美沙の手作りのお節料理はどれも美味しそうだ。特に今年は美沙が作った出汁巻き玉子が目を引く。
「お兄ちゃん どう? 私が作った出汁巻き玉子....」
箸に挟んで、一口食べ。
「おお!美味い! 美沙 完璧だ。また腕を上げたな、申し分ない」
「へっへ~ん!美味いでしょ?お母さん直伝だからね」
「味も同じだ」
「それは.....ま、当然だよね」
「それにしても、美沙 料理全般、腕を上げたな、父さんから見ても、この卵は美味しいぞ」
「やったぁ~! お父さんありがとう」
「でも、助かるわ。 美沙がこうして、最近は色んな料理を手伝ってくれて、中学でこれだけ出来れば、将来は、いいお嫁さんになれるわね」
「えへへへ.....」
恭子のこの言葉に、雅人は若干だが凹んだ。
こうして石仲家の 元旦は楽しく過ぎていく。
△
先ほど、ミイからメッセージが来た。
『改めて。あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします。ミヤ、後で神社に行くんでしょ?迎えにいくからね。』
実は、昨日の晩もミイと会っていた。 自分の部屋で、美沙も交え3人で、テレビを見ながらの、年末反省会をやった。
取りあえずの返事をしておいて、時間は午前10時とした。お参りと言うモノはは午前中に、と言うのが基本だからだ。
朝食も済み、家族がリビングに集まっているところだった。
「美沙、もう少ししたらミイが来るけど、一緒に神社行くよな?」
「うん!行く行く」
そうしているうちに、ピンポーンの音と共に、ミイがやって来た。
玄関で、恭子とのあいさつが聞こえる、『上がってね』 と言う声とともに、ミイが温かい装いでリビングにきた。
「おじさんおばさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「あけましておめでとうミイちゃん。こちらこそ家族ともども今年もよろしくね」
「はい!よろしくお願いします」
まず石仲家の両親に挨拶を済ませて。
「ミヤ 美沙ちゃん、明けましておめでとう。今年もよろしくね」
「あけましておめでとう、ミイ、今年もよろしく」
「ミイねえちゃん、あけおめ~。ことよろぉ~」
「今どきの挨拶だな、美沙」
「えへへ。スマホで友人に今朝から何度でもやってたから、つい出ちゃったんだよね」
「まあ、今の子たちってハガキじゃないって知っていたけど、挨拶まで短縮してたのね。ついて行けないわぁ~」
と、母親の恭子が若干の呆れた表情で言った。
一通りの挨拶が終わり、ミヤがミイに、前もって普段着でおいでと言っておいたので、温かい普段着で来た。
正月早々から一日中着物だと、結構行動に制限が出来てしまうので、普段着で と言っておいた。
美沙も、初参りは普段着だ。二人とも余談に花が咲き、時間も時間なので、二人に号令をかけ、ミヤはダウンを羽織って、3人で神社に向かった。
道中あまり人には合わない。もう午前11時前だ。すでにここ、神社に向かう道も、早朝の参拝の後になり、昼も近い時間帯もあって、極端に人が少ない。
境内に入っても、参拝の人は10組程度だろうか、自分たち3人を含めても、20人もいない。
三人そろって、参拝する。それぞれ願い事は何だろう?
結構 女性陣が長い気がする。後ろに人が居なくって、良かった。
参拝後、三人は神社からのお下がりを貰い、帰って行った。
(ごく普通な参拝でしたね、 はは...(作))
△
神社からの帰宅は浜家である。
「今年はいよいよ高3だねミヤ」
「うん、いよいよ大学に向けてかあ....」
「そう。大丈夫?ミヤ、私といっしょの大学行けるよね?」
「そのつもりだけど、ちょっとは今よりも順位を上げないと、今あそこの大学だと、ギリギリかな?」
美沙とは一旦別れ、はまちゃん の店舗の隣から、浜家の本宅に入る雅たち。
ミヤが浜家の家族みんなに新年のあいさつを終えて、ミィの部屋にいく。昼からは、ミイの部屋だ。
二人の成績は、それほど悪くないのだが、ミイが学年10位に対し、ミヤは現在30位くらいだ。二人とも学年250人に対し、良い方だが、ミイが希望する大学のレベルには、ミヤの成績では、ちょうどギリギリなのだ。
「頑張るしかないな。ミイ、今年からもう少し、一緒の勉強の時間を増やしてもらってもいいか?」
「うんいいよ。私だって確実にしたいから、せめて、学年一桁にはなりたいかな」
「オレも、もう15人抜きはしたいな」
「お!言ったね? じゃあ頑張ろうね」
「お願いします 雅先生」
「お願いされます 雅くん」
そこへ。
「あらら、相変わらずだけど、あなた達仲がいいのね」
美佐子が飲み物が乗ったトレーを持って来た。
「お邪魔してます」
「さっき挨拶したじゃないミヤくん」
続けて。
「....で?、な~んの話なのかなあ~.....。とうとう 付き合う気になったのかな?二人は.....」
((ぎくぅ!!))
ミヤとミィは、正月からとっても汗を掻きました。
((す....、するどい! 母上....))
「ははは....、な なに言っているのかな~?私たちは、良い幼馴染なのに....」
「へえ...、お、さ、な、な、じ、み、.....、ねえ~.........」
「「あはははは.........(汗)」」
二人をじぃ~~~~っと見つめる美佐子、次の言葉は。
「まるで、付き合ってるカップルみたいよ?...........って、ホントは付き合ってるんでしょ?」
((ぎ、ぎ、ぎ、 ぎくぅ!!))
「白状しちゃえば?........」
「お、おばさん、それくらいオレたちって、仲が良いって事なんです」
「そ....、うなのよ、お母さん。そんなこと言うと、変に意識しちゃうじゃないの.........、もう!」
「ふう~~ん....、そうなんだぁ~....。ま、とりあえず今年もよろしくね、ミ、ヤ、くん....」
「は.....、はい。今年もよろしくお願いします.....」
まじまじと二人の事を見つめ、なにやらニヤニヤしながら。
「じゃあ、後は若い二人でイチャつくなり何なりして頂戴。じゃあね」
と言って、美佐子は部屋を出て行った。残された二人の背中には、汗が滴っていた。
「はあ~~~、びっくりしたぁ」
「私もびっくりした、さすがに鋭いね、母親っていうのは」
「うん。切れ味抜群だったな」
ヒヤヒヤの美佐子の会話が終わったと思った途端、ふたたびミイの部屋のドアがいきなり開いて。
「あ! そうそう雅。お母さんたち、今から私の実家に行ってくるから、雅 行かなかったら、お留守番頼むけど、どう?」
と言って、固まった二人を見ながら、美佐子がまた入って来た。
「あ、私なら改めてまた行ってくるから、今日はやめとくかな~....」
何とか上ずりながらでも言葉になったミイ。
「分かった。ミヤくんも居る事だしね。ウシシ....」
美佐子の含み笑いだ。
「なに?その笑い方」
「何でもないわよ。それじゃあ、お留守番たのんだわよぉ~、み、や、びぃ.....」
行ってしまった美佐子に、また二人は 超 ホッとし、元旦から疲労から脱力感が半端なかった。
ミイの祖父と祖母は、夕方前に、新年会があると言って、支度して早めに出かけたみたいだ。
「ミヤ、晩御飯ウチで食べる?」
「どうしようかな? 帰ってもいいけど、また晩から来るのも、何だしな~....」
「ウチで済ませて、ミヤ....」
「ん?」
「だって.....、だぁって~.....、チャンスだもん」
「え??」
「もう、言わせないで!」
「は、......はい」
(それからどうなったかは、皆さんのご想像通りですので、ご安心を(作))