表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雅と雅 (A)編  作者: 雅也
3/9

3話


                 3


 正式に付き合う事になったミヤとミイだが、あの三条も中々しつこく、以前よりも、言い寄ることは少なくなったが、それでも学内でも帰りでも、ミイを時々見かけると、近寄って来て、早く別れろと、言ってくる。


 でも夏休に入ると、暫くは三条も言い寄っては来ないだろうと二人は思った。


             △


 夏休み中でも、ミヤ達3人の柔道場通いは続いている。さらにミヤはその合間を縫って、夏休みだけアルバイトを始めた。ボクシングジムがその先だ。


 ボクシングジムの裏方になるが、結構ハードである。週3回、早朝3時間ほど、ジムの清掃は勿論、器具の整備・交換、古くなってきた備品の交換と簡単な修理などで、ジムの生徒が来る10時には終わる。

 終わると、ミヤは30分くらい指導を受ける事が出来た。

 コレはここのトレーナーからのサービスだ。


 トレーナーはミヤが柔道場に通っていることは聞いていたので、筋が良い と言われて、3ステップ先のコースからスタート出来た。



         △ △ △



「ミヤ、宿題すすんでる?」


 ミイがいつもの様にミヤの部屋で、二人で宿題・課題・勉強をしている。


 夏休み前の 公開告白 から数週間が経ったが、この二人の状況は、交際が始まってからも全く変わっていない...が、ただ違う事は、見つめ合うと 時々 キス をすることくらいだ。


「結構。半分くらいかな」

「早~い....、どれどれ.....」


「..........」


「..........」

「スキあり!.......」

 と言い、大胆にもミイはミヤの唇を自分のそれで塞いだ。

「うわっ!.......むぐぅ....」

「むぅ............」

「むゅぅ............」


 その時。


 ガチャ! と、部屋の扉が開いて...。



「あ~~~~~!!! みぃ~ちゃった み~ちゃった」

「「わわわわわ........」」


 美沙がノックもせずに、いきなりミヤの部屋に入って来た。

 二人は慌てて離れたが、しっかり見られていた。


「ねえねえ、いつから、いつからなの??!」


「「あわわわわわ....」」

「“わ”、はいいから、いつからなの? 二人」


「「............」」


「黙秘は許しませんよぉ、白状しなさい!」


「「............」」


「ふっふっふ........、黙秘か....、じゃぁお母さんに....」

 

 部屋を出かけた美沙を、慌てて二人で抑え込む。


「美沙ちゃん、お願い黙ってて....」

「美沙、オレからも頼む」


「どっしようっかなぁ~....」


「雪見まんじゅう+パペコでどう?」

「う!!....」

「ゴリゴリくんも付けるぞ」

「ふぅ~....、仕方ないですね~、黙っててあげます、が。だ、け、ど、....」


「「だ、け、ど ?」」


「お二人は、いつから恋人に昇格なされたんですか?」

「えっと、それは........」



 そして、二人は夏休み前のいきさつを話した。



「そんな事があったんだ。ミィねえちゃん、大変だったんだね」

「そうなの、美沙ちゃんも可愛いから、気を付けるのよ」


 少し照れる美沙。


「それにしても、やるわね! お兄ちゃん。カッコいいよ」

「て、照れるな....」

「....で、それは置いといて。訊きついでに、ファーストキスは何時ですか?教ええて下さい」

「「そこ??」」


 美沙は、興味のあるポイントが二人と食い違っていた。


「だってぇ~、聞きたいじゃない」

「現行犯なのに、過去の犯罪まで暴露するのか?」

「ミヤ、“犯罪”ではないから。“愛” だから....、そこ間違わないで」

「ミイ、言ってて恥ずかしくないか?」

「何言ってるの? 愛情の証なのに」


 若干の赤面を覚えつつ、ミイは言い放し、そのまま二人は見つめ合い。


「ミイ........」


「ミヤ..........」


 更に、ロックオン級に見つめ合う二人.....。


「..........」

「..........」


「やめ~~い!! 独身女の目の前で、夫婦的ラブラブ行為は禁止です」

「「夫婦じゃない!」」


(おお!さすがこの歳からでも息ぴったり(作))




「さて、今までのは置いといて。 いつだったの?ファーストは...」

「「ぐっ!.......」」

「さあさあ、言っちゃいな!」


 執拗に攻めてくる美沙に。


「ミヤ.....いい?」

「そうだな、コイツはしつこいからな」

「ふふ...、どうやら観念したね、お二人さん」


「「あい...」」 


(はい じゃあないのか?(作))



「実はね、ミヤに告られた日の帰りに、いつものコンビニの、フードコートで.....」


 事の顛末を話しながら赤面してくる二人。


「あんなところで? ムードも何もないじゃん」

「でもね、ミヤだからいいの。場所じゃぁ無いのよ美沙ちゃん」

「うわ!...愛だね~、ミイねえちゃん」


 だがこの女子の会話の後半、ミヤだけが固まりかけていた事は内緒の事実だった。



              △



「ふぅ。さっきの美沙ちゃんには参ったわね。でも、何とか黙っていてくれるみたいだし」

「取りあえず黙っててもらって、時期がきたらみんなに言おう」

「そうだね」


 美沙の追求から一段落して、再度二人きりになった後。


「ささ、課題 課題.....、っと」

「すっかり時間がかかってしまったね」

「うん」


「..........」

「..........」


「..........」

「..........」




「なぁ、みやび.....」

「なぁに?.....みやび」



「オレ、しあわせだぁ~.....」

「私もだよ、チュ........」

「むぐぅ~.......」


「..........」


「..........」


「ぷはっ!...、ミイ、.....」

「えへへへ.....」

「もう びっくりした。また美沙に見られたら、まずいぞ」

「そうだね...、さてと、残りをやりますか」

「そうだな」


 机上にある課題を見て、現実に戻った二人。


「うふふ.....、好きよ みやび」

「オレもだぞ、みやび」



(もういいから早く課題 やっちゃいなさい (作))




※注 このストーリーでは、鉄板である夏のイベントは、一切出てきません、期待していた方には、たいへんご迷惑をおかけします。




        ◇ ◇ ◇




 夏休みが終わり、2学期が始まって約一月経ち、休みボケなどがいっさい過ぎ去った頃、またあの問題が再燃し始めた。


 三条の件である。 


 ならなぜ今までミイに、夏休み中に言い寄ってこなかったのか、それは、単に三条がテニス部での、中心人物なのだ。ま、エース級って言うやつだ。


 休み中は、練習と大会で忙しく、他の部員に迷惑をかけてまでミイに言い寄る事は、ある意味、生真面目な三条にとって、出来ない事だった。

 それが、全ての部活動としての立場が終わった途端に、ミイに再度言い寄ってき始めた。





「だから、今の私にはれっきとした“彼氏”が居るので、先輩とは付き合えません」

「それは分かっているが、どうしても、君の事が気になって、忘れられなくて、どうしようもないんだ」

「どうして、そこまで私に執着するんですか?...、周りを見てください。あなたを思う人が他にも居る事が分からないんですか?」

「な、なんだって?」


 少し拍子が抜けたような返事になった三条。


「今の先輩は、自己中の一途で、一方通行で、相手に不快な印象しか与えない、我儘な愛情の押し付け屋です。今のあなたでは、あなたに憧れた後輩たちでさえ、離れていきますよ」

「そんなことは無い、この思いは絶対に、叶えるんだ俺は。だから.....」


 隣にいるミヤが話し出す。


「先輩。人の交際相手を奪ってまで、自己満足の為に、周りをひっかき回して、自分の物にしたいですか?」


 少し間を置いて、さらに三条が続ける


「お前に、何が分かる? お前は思いを成就させているんじゃないか。俺に言わせれば、勝ち組なんだよ。今の俺の気持ちが分かってたまるか」

「でもそれは我儘だと思います。相手の思いを捻じ曲げてまで、自分の物にしたいですか? もしそれであなたが成就しても、その恋愛は短い寿命だと思います」

「俺はこの夏休みの間、部活動に懸命だった、それも、この思いがいつか成就されると信じて思っていたからだ。だから、辛抱した、我慢した、自分を封じ込めた、しかしそれも、きっと 浜 が俺の事を受け入れてくれると信じていたからなんだ」


 聞いていたミイがまた口を開く

「先輩、私の傍らに ミヤ が居る限り、あなたに恋愛感情が湧き出ることはありません。しかも、今のあなたでは、好きなる事は絶対に無いです」

「そうか...、じゃぁ 決着を付けようか 石仲!」


 右腕の拳を自分の胸の前に置いて、威嚇の表情をしながら三条が言ってきた。


「何ですか?」

「決着といったら決着だ」


 三条が、さらに拳を強く握る。


「先輩。暴力ですか? 校内で」

「場所を変えようか?」

「場所を変えても、オレは相手はしません」

「逃げるのか?」

「逃げますね、こんな争いなら」


 不毛な争いは、何も結果を生まないと思い、ミヤは争いを避ける様に言う。


「ミヤ、止めなよ、争いなんて」

「行かないよ。だって無駄な争いだからな」

 ミイも無駄な争いを避けるべく、半ば以上は三条に向けて言う。


「無駄だって?!! いい加減にしろ!!お前にとってはそんな事かもしれないが、今の俺にとっては、どうしても叶えたい事柄なんだ」


 大きな声で、増え始めた周りが少しざわつきだし、それを気にしてか、三条は声のトーンを一段階下げて。


「ついて来い、ココじゃぁまずいからな」

 そう言い、先に歩き出す三条、ミイと目線を合わせて、(仕方無いよな?)と目で訴えて、三条の後を付いていくが、それもすぐに駆け足となり、二人を追うミイが取り残された。


               △


 数分離れたところに、神社がある。


 境内は大きな木が鬱蒼と茂っていて、周りからは、全く見えない場所もある。そこに三条とミヤが着くと...。


「お前は帰宅部だったな」

「そうですが」

「なら、少しは加減してやる。但し、今ならまだ止めてやる。浜と別れろ」


 いきなり三条は、ミイと別れろとミヤに迫って来た。


「即答ですが、別れません。それよりも、いいんですか? こんな事が学校にばれたら、大学には.....」

「そんなの、揉み消せばいいんだよ!!!」


 と言うが早いか、いきなり三条の右の拳がミヤの 鳩尾 に当たる。


「顔はさすがにまずいからな。でも明日、休まない程度にはしといてやるからな」


 ふらついているミヤの体に、さらにもう一撃拳が当たった、今度は左脇腹だ。さすがに立ってはいられずに、倒れこむ。

「どうだ? 効いてるだろ? 俺は日ごろお前と違って、鍛えているからな」

 三条を睨むミヤ.....。

「ははは、睨む事しか出来ないよな、お前くらいだと」


 後から追いついてきたミイが、ミヤに向かって

「ミヤ!! 大丈夫?....。先輩これはひどいです。こんな事でミヤに暴力を振るうなんて...」

「学校からついてきた 石仲 が悪いんだ。やる気が無かったら、付いてこなければよかったんだ、だがコイツは付いてきた。と言う事は、果たす為だと俺は了承した。だから今こうして決着を付けている」


 ミイがミヤに寄りそい、体を起こして

「ミヤ 大丈夫? 私の為に、ごめんね...、ごめん...、ねぇ.....」

 

 最後は涙声になりながら、ミヤの頭を抱えた。


「もう決着は付いたな石仲、浜とは別れろ、いいな!!」


「せんぱ...、い、そ...、それは、出来ないし、イヤだ!」


 頭を抱えられながら、さらにミヤが言う


「コイツがやっとオレの物になったのに、あんたみたいな自己中な奴には渡せない、絶対に!」

「ほう、まだそんなことが言える立場だと思っているんだな。じゃぁもう少しダメージを与えてやろう。立てよ 石仲」

そして。

「よいしょ! ミイありがとう」


 ダメージの割に、スクッと立ち上がるミヤ。


「お!立てたじゃないか、だがすぐに終わるからな」

「はは! もうあなたの攻撃は、一切当たりませんよ」

「なに言ってる? 強がりか?」

 そう言うが早いか、三条は三度、拳を振ってき始める、..........

だが。



それからの三条の拳は一切当たらずに、空振りばかりが数分続く.....。


「はあはあ....、何故だ...お前.....」

「だから言ったでしょう。絶対に当たらないって。最初はあなたの拳の腕を見たんですよ。どうです? 空振りって、体力使うでしょ?」


 さらにその後も、三条の空振りは続き、段々とそれが大振りになってきた。


「な、...はあはあ....、なに? 何でだ?.....」

「もう、止めません? オレは一撃も与えませんから。この辺で許してください、先輩」


 ミイも続けて言う。


「先輩、私どうしても、ミヤ...、雅とは別れません。だって...、だって、やっと告られたんだから。8年ですよ!8年。やっと...、やっと両想いになれたのに.....、うわぁ~~~~~~~ん!!」

 

 大声でミイが泣き出した。


「ま、まいったな。 女に泣かれてしまったか.....」


「すみません先輩、オレもこいつが 好きで、好きで、大好きで、誰にも渡したくはないんです。年齢制限が無かったら、絶対に 嫁にしてます」

「な!....、そう....、そうか....。そうなんだな....」

「先輩?」


「..........」


「...、大事にしてやれよ、石仲.....」


 息が荒そうに言うと、三条は上着を肩にかけて、ゆっくりとこの場を歩き去っていった。



              △



「ミヤ、大丈夫?」


 落ち着いた場所に移動した。


「はは、ホントは全然大丈夫なんだ」

「でも結構体にキテたんじゃない?」

「ちょっとな。でも、ジムのバイトの後のトレーニングが厳しかったからな。あれで体と動体視力が鍛えられたのかも...、それに.....」


「それに?  なぁに??」


「さっきから、ミイのパンツが見えまくって、嬉しくて...、って...」



 パシィ!! 

 

「イテて!!」

 思いっきりミイの張り手がさく裂した。


「もう!!こんな時でも エッチ なんだからぁ........、うふふ.....」


「あはははは」


「「あはははは」」



「「..........」」


「行こうかミイ...」

「うん」


 二人は軽くキスをして、立ち上がり、歩き出した。


 繋がれた手はしっかりと組み、これからも離さないと誓うかの様に繋いでいる。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ