2話
2
今年、雅たちは、高校2年生になっていた。
「ミイ、また告られたんだってな」
「そう言うミヤだって、この前、隣のクラスの女の子と、良い感じだったじゃない」
この年頃は、色恋沙汰に敏感な年齢である。特に、ミイに至っては、2年になって、コレで6人目の告白があったにもかかわらず、いままで、誰一人とも付き合ってはいない。
ハッキリ言って、ミイはミヤ意外の男子には興味が無い。
ミヤも同じで、小さい頃から、妹も含め、3人で育った環境が、ミイとミヤの居心地の良さをお互いに、認め合っている。
なら、何故正式に付き合ってないのか? そこが問題のところである。その、お互いの、居心地の良さ....、と言うところが問題で、出会ってから8年と言う、普通に 幼馴染 と言われてもおかしくない状態なのに、実は、中学で思春期と言う年頃による気まずさ(気恥ずかしさ)という気持ちがおき、暫く疎遠になっていたのが、高校の受験勉強の時になると、一緒に机を並べて勉強をしているうちに、結構もとの関係にほぼ戻っていたので、告白していても良かったと思うのだが、その大事な時期に、色恋沙汰などは以ての外という事で、タイミングを逃したらしい。
それ以降、お互いに好きなのに、高校2年にもなって、未だに告白が出来ないでいる状態だ。
ほぼ毎日、一緒に登校しているのに....。
「違うよ、たまたま1年の時に、同じクラスになった、女の子に話しかけられただけだよ」
「モテてるじゃん!」
「そっちだろ?!」
2年になって、ミヤとミイは同じクラスになった。中学校以来である。そのせいで、周りでは嫉妬もあるが、一方では、公認 と言う声も聞こえるようになってきている。それでも、3年生からの告白は、未だに絶えない。
ミイが、告白を断る度に、ミヤが変な目で見られる事も、ミイを苦しめる要因になっているのも確かだ。
最近は、そんなことも、慣れてきたみたいで、さすがに今まで嫉妬による暴挙は無い、進学校であるため、大学進学ための事を考えて、手が出せないでいるのだ。
△
授業が終わり、下校中。
「なあミイ、何で ずぅっと色んな男からの告白、断ってるんだ」
「........」
ミヤのこの言葉に、少し頬が膨らむ。
「何だよ! 人が聞いてるのに」
「ミヤ、それ聞きたい?」
ミイがため息混じりに言うと。
「........」
「ほら!黙り込む! 自分だってでしょ?」
こんな風に、ノドまで出かかっている言葉を、二人が出さないでいる。と言うよりも、出せないでいる。そんな二人とも、お互いを、 ズルい と思っている。
「ミヤ、帰りのコンビニで、プリン奢って?」
「好きだな、プリン」
(ミヤの方が好きだよ....)
この言葉がなかなか出ない。
「うん。でも、ミヤは抹茶味のプリンだよね」
「あれは神だ。あれを作った人にはノーベル賞をあげたい」
「大げさね....」
クスクスと笑うミイ。
その時、後ろから....ミヤに、 ボン!!と衝撃がした。しかも、目隠しされて....。
「だ~れだ」
さらに隣で、クスクスと笑うミイ....。
「う~~ん、コレは、傷害事件なので、警察に通報します」
「しないでぇ!!」
「答えは?」
「美沙ちゃんで~す!」
「明るいな」
「お二人を見たので、突進するしかないと言う、思考に捕らわれまして....」
「「せんでいい!」」
「声、揃った。さすが 夫婦」
「「違うわ!」」
「また....」
「美沙、部活は?」
「先生の出張で、今日は個人練習30分で終了した」
「ほ~~~」
「....で、私に内緒で、プリンを食べるんですと?」
「はい」
「そこは、ハッキリしてるんですね」
「美沙ちゃんも、一緒に行く?」
「わぁい! お兄ちゃんの おごり だ~」
「それは決定事項なんですね、美沙さん....」
「おね、よろ」
「未成年はそんな省略後、使ってはいけません。道交法違反です」
「公安委員会は、相手にしてくれませんよ~.....」
「二人とも、もういい加減にしなさい!!」
ミイが、戒めた。
「「ごめんなさい!」」(おお! ぴったりだ。さすが兄妹 (作))
※ 閑話休題 ※
コンビニで思い思いのプリンを、ミヤの奢りで支払った後、そのまま3人はフードコートで、楽しいお喋りをしながら、時間を過ごした。
ちなみに、ミヤはモナカアイスを食べた。
△
時期が夏休み近くになると、3年の 三条と言う先輩が、ミイにひたすら言い寄ってくる事が多くなった。
断っているのに、事あるごとに話しかけてきて、『好きだ 付き合ってくれ』 などと、多い時には日に複数回なんて言うのも珍しくなくなって、ここ最近では、校門の前で待ち伏せるようになった。
三条自身そこそこの容姿なので、結構モテると思うのに、わざわざミイに狙いを向けて、迫ってくる。
*
「三条先輩、困りますから、やめてください」
「いやいや、俺は諦めない、君と付き合えるまでは」
「だから、わたし今はそういうのは...」
「だったら、その隣のヤツはなんだ!」
少し声を荒げる三条が、隣にいるミヤを見て言った。
「............」
「言い返せないだろう?」
「え、えっと......。幼馴染で近所で、小学校の頃からこうなので、いつも一緒なんです」
「じゃ、そいつとは付き合っている訳ではないんだろう?」
「確かにそうですが.....」
「だったら、俺と付き合ってくれてもいいじゃないか」
らちが明かない。
今度はミヤが一言いう。
「先輩、雅がイヤって言ってるじゃないですか?」
このミヤの言葉に、三条が若干の憤りを含めた言葉で...。
「何だと?お前に何の関係があるんだ。付き合っている訳でもないのに」
「........」
「ほぅら、何も言えないだろう.....、だから、俺と付き合えよ、浜」
こういった日が何度も続き、やがて、夏休み前になると。
「明後日から休みに入るが、いい加減、いい返事をくれよ、浜」
三条が、またミヤとの下校途中に話かけてきた。
「先輩、いつもこんな所で待っていて、大声上げて、目立ちますよ」
「いいんだ、この末に 浜 との交際があると思うと、諦めきれない」
「だから私、今はそう言う事は考えていません......、って言っても、どうやら先輩には無駄の様ですね」
「ああ。多分 ノーと言う言葉は、聞く耳を持ち合わせてはいないんでな」
「はぁ~......」
と大きな溜息をつきながら......。
「分かりました」
とミイが言うと三条が。
「お! じゃぁ、俺と....」
「分かったって言っているんです」
「よし、コレでカップル成立だな」
「多分そうなります」
「ウホッ!やった~~!!」
大喜びで、飛び上がる三条、だが....。
ミイはミヤの方に向かって、出た言葉は。
「ミヤ、私に告って....」
「「え!?....」」
ミヤと三条が驚く。
「いいから、今ここで私に告って。早く!!」
このミイの言葉に。
「こんな公衆の前で?」
「いいって言ってるの! さあ!!」
「い、いいのか?」
さっきからの校門前での事態に、若干の生徒が足を止めて、遠巻きに見ている。そして、そんな周りの事情などはお構いなしに、ミイがミヤの正面に向き合い。
「いいのか?」
ミヤが訊き正す。
「いいよ、ミヤなら」
「結構オレ、本気だぞ」
「うん、分かってるから....」
「............」
「............いくぞ、ミイ」
「はい」
ミヤは一度大きく深呼吸してから。
「浜 雅さん、ずっと、ずぅ~~っと好きでした。これからも変わらずに好きでいるので、オレと付き合ってください!」
「はい!喜んでお願いします」
素っ気ない告白になってしまったが、ミイからは、漫勉の微笑みの表情で即答した。
そして、周りに居て、一部始終を見ていた数人からは、拍手と。
「やっとかよ!」
と言う声も含めて、歓声があちこちで上がっていた。
だが......。
三条が固まったまま、動かない。
「そう言う事なので、三条さん、これで失礼します」
「「先輩。じゃぁ」」
二人は、それぞれ三条に挨拶をして、手を繋いで帰って行った。
(三条 大丈夫か? (作))
◇
いつものコンビニに、その後の二人の姿があった。
「なぁにミヤ、あの告り方、ウケる....」
さっきのミヤからの告白内容をディスるミイ。
「だって、しょうがないだろ? いきなりみんなの前で、告れって....」
「うふふ、でもやっとだね」
「え??」
「やっと言ってくれたね ミヤ」
「分かってたのか、オレの気持ち」
「当り前じゃん。だって8年だよ。8年も一緒なんだよ?」
「まあ中学の時は、ちょっとあったけど、今思うと、確かにミイに対する気持ちは変わらなかったかな....」
「やっぱね! 両想いだったんだ」
「........で、オレ本気なんだけど、ミイは?」
と、改めて恐る恐る聞くミヤに.....。
「それまた聞く? 今.....」
「だって信じられなくて.....」
ミイが う~~~~ん と、唸ってから、周りを見て。
「ミヤ、目 瞑って.....」
「?............」
「...............ちゅ♡」
ミヤが驚いて目を開けると、目の前に奇麗な目を瞑ったミイの面持ちがあった。
暫くして、お互いの顔が離れ、ミイから言葉をかけ始めた。
「言っときますけど。今のって私の ファースト だからね、しっかり覚えておく事!わかった? ミヤ!」
「お!おぅ 分かった...、って、オレだって初めてだぞ?」
「あはは....! 私 襲っちゃたね」
「積極的なミイさんも、好きです」
「「あはは..........」」
フードコートに、二人の笑い声が響く。
(良かったね ミイ ミヤ (作))