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第004話・嬉しい事と残念な事

side:エレノア・グランベルグ


私が南條陽葵としての生を終え、エレノア・グランベルグとして転生してから一年が経過した。


この一年では、幾つかの嬉しい事と幾つかの残念な事が判明した。


その中でも嬉しい事の筆頭と言えば、私が転生したこの国での主食が米だった事だろう。


離乳食を卒業してマトモな白米を食べたときの感動は、今でもハッキリと思い出すことが出来る。


私はその時に思ったね、私の魂は骨の髄まで日本人なんだと。


そして、それとは反対に残念な事の筆頭と言えば、魔力無双が出来なかった事だ。


私にはネット小説の知識があるので、数ある転生物の作品と同じように魔力無双をしようと必死に魔力を消費して自分を鍛えていたのだが、どれだけ魔力を消費しても私の最大魔力量が増えることは無かったのである。


とても、とてもとても残念だ。


魔力無双が出来れば、天下統一も簡単だったのにね。


だが、私はこれくらいで天下統一を諦めたりはしない。


「あたちは、じぶんのてでてんかとーいちゅをはたしゅのだ!」


それに、考えようによっては魔力無双が出来ないのも悪いことではない。


私が望むのは、命を懸けた果たし合いだ。


魔力に物を言わせた戦いなんて、もしかしたら興ざめだったかもしれないよね。


「これで、よかったのでしゅ」


私は、そう言って納得した。


それに、魔力無双をしようと魔力の消費に励んでいたことの全てが徒労に終わったわけではない。


私が魔力の消費に励んでいた結果、魔力操作と結界魔法のスキルが爆上がりした。


このスキルレベルの爆上がりは、恐らく器用貧乏のスキルの効果だと思われる。


現在の私のステータスは、この様な物になっていた。


名前:エレノア・グランベルグ

種族:人族


取得スキル

:天心無念流☆☆☆☆

:結界魔法★★★

:魔力操作★★★

:鍛冶☆☆☆


エクストラスキル

:心眼

:器用貧乏


ユニークスキル

:状態異常無効

:アイテムボックス


結界魔法と魔力操作のスキルレベルは、一歳と言う幼さで★★★に到達している。


スキルレベル★★★と言えば、ベテランの域である。


器用貧乏と状態異常無効とアイテムボックスはエクストラスキルとユニークスキルなのでスキルレベルは存在しないが、上々の成果だろう。


ただし、前世で覚えていた心眼のスキルは良いとしても、天心無念流と鍛冶のスキルはグレーアウトしていた。


これは、私の幼い体では天心無念流や鍛冶のスキルを扱えないと言うことだと思われる。


もう少し体が成長すれば、また一から天心無念流と鍛冶スキルを鍛え直そうと思う。


私は、天心無念流のスキルレベルが☆☆☆☆、鍛冶スキルが☆☆☆だったことを、納得はしていない。


スキルレベル★★★★と言えば一流のレベルだが、超一流の★★★★★には敵わないと言うことだ。


恐らく、スキルレベル★★★★★の超一流と言えば、前世で私に天心無念流と刀鍛冶を教えてくれたお爺ちゃんレベルの達人なのだと思われる。


お爺ちゃんの打った刀は、国宝に選ばれたりもしたのだ。


そんなお爺ちゃんが、常々と言っていた。


私には、自分よりも天心無念流と刀鍛冶の才能があると。


自分よりも強くなることが、自分よりも素晴らしい刀を打つことが最大のお爺ちゃん孝行なのだと。


お爺ちゃんよりも強くなる前に死んでしまった私には、もうそんなお爺ちゃん孝行は出来ないけど、それでもせめて異世界でも良いからお爺ちゃんを越えるスキルレベル★★★★★★には達したい。


スキルレベル★★★★★★と言えば、この世界では人族の限界を越えた超人の域だと言われている。


だったら、その超人になってやろうじゃない!


人族の限界?


なにそれ美味しいの?


「しょんなはずはないのでしゅ!」


限界があるのは、その限界を越えるためだ!


お爺ちゃんなら、そう言うに決まっている!


だから私は、絶対に人族の限界を越えてやる!


「みててにぇ、おじーたん!あたちは、ひとぞくのげんかいをこえちぇさいきょーになりゅ!このせかいでいちばんちゅよいのは、てんちんむにぇんりゅーだとしょーめーしゅるから!」


私がそうやって気炎をはいていると、乳母のマリアベートが呆れた声でこう言った。


「はあ……姫様、何を仰っているのですか?姫様は女の子なのですから、人族の限界を越える必要も最強になる必要もありません。そういう事は、殿方に任せておけば良いのです。あんまりお転婆だと、嫁の貰い手が無くなりますよ?」


マリアベートは嘆くようにそう言うが、私はそれでも構わない。


「まりあべーちょ、しょれでもあたちはかまいましぇんよ?」


むしろ、それぐらいで離れていくような男はコッチから願い下げである。


しかし、マリアベートは私の言葉に眉をつり上げて反論した。


マリアベート曰く、女の幸せには素敵な旦那さんとの出会いが必須であるとの事だ。


「しょんなもにょなんでしゅかね……」


女子高生だった私には、結婚なんてピンと来ない。


素敵な旦那さんとの結婚生活なんて、欠片も想像できないのだ。


「あたちは、けっこんできにゃくてもかまいましぇん」


私にとっての一番とは、強敵との戦いだ。


私を如何に可愛らしく育てるかに心血を注ぐマリアベートには悪いけど、結婚とは当分縁が無さそうである。


ごめんね、マリアベート。


私は、声に出すことなくマリアベートに謝った。


合掌、チーン……南無南無。


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