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パル君 番外編 僕、お茶会に招かれたんだ

作者: 音天響子

パル君本編で気に入った、木漏れ日の下のテーブルでの出会いから生まれた短編です。

薄紫色の風が吹き、ヒヤシンスの香りがしてきた。僕は、6階のベランダから、お空を見上げた。紫色がだんだん濃くなり、藍色が紺色になって、白や黄色いお星様が瞬いている。あっ、夜になっちゃったんだ。ベランダは冷える。目を閉じている間に眠っちゃったみたい。


僕の身体は浮いている。気持ちいい。お空を泳いでいる気分。


周囲の濃紺色がどんどん薄くなり、薄い橙色になり、薄水色になり、暖かくなってきて、雲一つない青空が僕を囲んでいる。


下には、あっ、じったんに連れられて僕が時々お散歩に行った道だ。遠くまで、一面黄色く、菜の花が咲いている。左の方を流れる小川の、蓮華が咲いている細い土手を歩いているのは、


あっ、ななちゃんだ。じったんと手をつないでいる。

「今ね、パル君が逃げ出したって、ばったんのママからメールが来たの」

 「ふ〜ん、そうなんだぁ。朝子さんはメールくれるんだ、いいね」


ふふ、僕、ここにいるんだよ、って虹ちゃんにお顔を見せに降りて行こうとしたその時、


みゃお、って声が右から聞こえてきた。灰色の猫さん。猫さんには滅多に会わないのに。あっ、みうさんだ。


(みゃお、お久しぶり、パルさん)


(わん、ほんと、お久しぶり。あれから、僕、時々、みうさんとお婆さんとお爺さんにお目にかかりたくて、お探ししてたんですよ。あの木漏れ日の下の白いテーブルにも行ってみたんですよ)


(ええ、存じておりました。ただ、私も、あれから一年近く忙しい日々を過ごしておりましたの。ごめんなさいね。パルさん、覚えてらっしゃいます? アルタさんのお孫さんのキロさんはお婿入りなさって、残されたお孫さんのララさんは、お母様のラーファさんに見守られて、もうすぐご出産なんですよ。ですから、私、お爺さんとお婆さんとご一緒して、キロさんのお婿入り先の遠くまでお訪ねしたり、お二方のご結婚祝いの席にお招ばれしたり、気をもんてらっしゃるラーファさんに寄り添うアルタさんとご出産待ちしておりますのよ。今日も忙しくて。でも、パルさんに会えるような気がして、こちらを通ってみることにいたしましたの)


みうさんのお話は長くてややこしかった。誰が誰だったか、思い出しきれない。あの時、誘われたのに、僕が乗せていただきそびれたのはアルタさんだったっけ、ラーファさんだったけ。白いテーブルまでは何度か行ったけれど、お婿入りやご結婚のことには気付かなかった。


(これから、また、お婆さんお爺さんの所に参りますのよ。ちょっと一休みしたくて。パルさんご一緒なさいませんこと?)


と誘われたけれど、僕が左の方の虹ちゃんとじったんを探している間に、気のせいていたみうさんは、もうどこかに飛んでいなくなってしまった。せっかくお茶会に招かれたのに。


で、みうさんとそんなに長くお話ししていたとは思わなかったのに、左を見ると、もう虹ちゃんとじったんの姿は見えなかった。あっ、僕、逃げてることになっているんだっけ?

逃げているつもりはないのに。


気付いたら、

僕はベランダに戻っていた。ベランダのプランターのヒヤシンスが青紫色の香りを漂わせている。

もうすぐ、ななちゃんとあんなちゃんが幼稚園から戻ってくる時間だ。

あれっ? でも、虹ちゃん、今日はじったんとばったんのお家にお泊まりかな? もしかして、今日、幼稚園はお休みだっけ?

僕もあっちに行こうかな。ばったんのママ朝子さんは、今日はこっちとあっちとどっちにいらっしゃるのかなぁ。


僕、優柔不断だったのかなぁ。

お茶会にも行けなかったし

じったんと虹ちゃんは見つけられなかったし

僕の身体、まだふわふわでコントロール、できないんだ。

もっと魔法が上手に使えるようになりたいな。

なれるよね。


楽天ブログ「ペット喜怒哀楽」に同時掲載です。

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