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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.1『ゴミ溜めへようこそ!』

ごみ溜め▷意味

1ごみ、汚物などをためておく所。

2ごみ


とりあえず、記録.2『プライド革命』まで読んでいただければ、この作品の本質を理解できます。

 ―――VRMMO。

 それは突如何の前触れもなく市場に現れ、世界を熱狂の渦に巻き込んだ圧倒的近未来ジャンルのゲームである。


 ある者はそのゲームの出現は未来人の仕業と言う。

 ある者は未知の生物が地球に技術を託したと言う。

 ある者は世界各地の天才が集まり、作り上げた技術の結晶体と言う。


 しかし、実のところそんなことどうでもいいのだ。


 消費者にとって、ゲームとは浪費するコンテンツであり、その背景なんて知ったこっちゃない。


「なぁ、そうだろう。もう一人の僕…」


 草原に清々しく吹き抜ける風を全身に感じながら、空を見上げる。

 呟く言葉に大した意味はない。意味を持たせたいのならば、それこそ別ゲーで頭をこねくり回しゃ良いって話だ。ヴァロでもエペでもなんでもしてろ。


 じり、と足裏に伝わる草の感覚を懐かしむ。


 …製品版になって帰ってきたか、愛すべき最悪のゴミゲー…『Soul・Learning・Online』…!

 俺はシステムからステータスをタップする。すると、青白い板のような物体が目の前に出現した。



『ルート』Lv.1

 〔Set(セット)Skill(スキル)

 《ナイフ》Lv.1

 《疾風》Lv.1

 《落下の心得》Lv.1


 〔storage(ストレージ)Skill(スキル)



 …βテストと殆ど変わっちゃいねぇな。

 セットスキル、ストレージスキル、共に上限は十個ずつ。つまり、俺達プレイヤーは計二十個のスキルを抱え込むことができる。

 頭の中を整理しつつ、俺は草原を歩き始める。


 俺はこの『Soul・Learning・Online』のβテストに参加していた、言わばβ勢だ。他のプレイヤーよりも情報アドバンテージがある以上、スタートダッシュは初心者(ルーキー)よりも上手に切れる。


 最初のキャラメイクで、俺は色々と考えながら慎重に選択をした。

 唯一、適当に決めちまったのは髪色だが、精々β時代に黒色だった髪色が明度MAXにしたせいで真っ白になったくらいだ。そこまでの差異はねぇ。


 周囲を見渡しながら歩くと、崖下の窪みの様な場所でルーキーと思わしきプレイヤー三人が必死に魔物と戦闘を繰り広げていた。

 俺はそれを尻目に見ながら、そそくさと崖上に移動し、上から見下ろす。


「おーおー、派手に苦戦してやがる」


 なんとなく呟きながら、腰からナイフを抜き取った。そして、




「――わぁい」


 そんな、気の抜けたような声と共に崖から勢いよく()()した。

 眼球が乾く程の突風が襲う。その中で、俺は最初に取得したスキルの内の一つ、《疾風》を発動させる。その効果は、”2秒間、移動速度が300%になる”というもの。


 ――ハァイ、勘の良い馬鹿ならお判りでしょう。

 なんとこのスキル…現状の速度を300%に増幅させるんですね。つまり、発動前の速度が速けりゃ早いほど、恩恵がデカい訳ですわ。はぇ~、すっごい。


 今の俺は崖から落下中、通常じゃ出せない速度で命を摩耗させている訳ですね~。

 そこに《疾風》が加わりゃ最早鬼に金棒。序盤の雑魚なんてちょちょいのちょいで粉砕出来るっつー算段さ……まぁ、他に有用な移動系スキルがごまんとあるから、使いにくいこのスキルはゴミゴミ言われて蔑まれている訳だが!


 ナイフを構え、《疾風》を発動した俺の体躯が重力に従い加速する。


 …そして更に、もっと頭の良い馬鹿ならば気付くだろう。――『落下死しちゃうんじゃね?』と。

 そこで今度活躍するのはこの《落下の心得》!

 なんとこのスキル、某ポケットのモンスターにあるアイテム、”きあいのタスキ”と似た様な効果を持っている。


 まず、きあいのタスキとは、”HPがMAXの時にダメージを受けて、瀕死になる時、一度だけHPを1だけ残して耐える”というものだ。

 このスキルも同様に、プレイヤーが少しも傷がついていないのならば、落下ダメージで死に至る際、ギリギリのところで耐えてくれるのだ。いやー、便利便利。あまりにも局所的すぎる性能のせいで誰も使ってないが、便利だね!うんうん!


 もうついでに言っちゃうが、最初に取得した最後のスキル《ナイフ》も、ゴミスキルと他所からは言われている。

 何よりも、リーチの短さ故に。まぁ、ナイフ使うなら他の武器でいいよね…?的な風潮がこのゲームには蔓延っていやがる。

 しかし、落下中に容易に構えられる武器と言ったら細かい操作が可能なナイフやナックルと言った近接系統の小さな武器のみだからな、好きで選んだわけじゃねぇ。



 ―――圧倒的な速度を肌で感じながら、俺はそのままルーキー共のいる場所へと隕石の如くドカンと着地した。


 その際の衝撃で魔物一匹、ルーキー二人が天へと還った。ご冥福をお祈りします。そして、いきなりのことに呆然とするルーキーを満身創痍の体を動かし、ナイフで首を掻っ切った。


 〔Congratulations!〕

 〔《ナイフ》Lv.1→Lv.2〕

 〔《疾風》Lv.1→Lv.2〕

 〔《落下の心得》Lv.1→Lv.2〕

 ◀ 獲得!▶

 〔魔物「スレイブルゥ」から《鋭い嗅覚》を獲得〕

 〔プレイヤー「タゲ取りの翁」から《気配察知》を獲得〕



「…く、くけけけけ…!」


――相も変わらずこのゲームは酷いもんだ。

そう、このゲーム、『Soul・Learning・Online』は倒した魔物からスキルがドロップする。それを繰り返し、自分の理想のビルドを作り上げる…!


だが、だがしかし…!…スキルがドロップするのは何も魔物だけじゃない。――プレイヤーを倒した時にも勿論するのだ。流石に魔物と比べれば確率はかなり低いが、それでもゼロじゃない。現に今回は運良く一人のスキルを奪うことに成功した。

 奪われた側のプレイヤーの奪われたスキルは一週間すれば復活する。

 しかし、俺の方でゲットしたスキルが消える訳じゃない。つまり、プレイヤーは美味い宝石箱なのだ。


 このゲームの真の敵は魔物じゃない。

 ストーリー上の敵でもないし、自分自身でもない。――なによりプレイヤー共なのだ。


 俺は自分のステータスを開く。



『ルート』Lv.1

 〔Set(セット)Skill(スキル)

 《ナイフ》Lv.2

 《疾風》Lv.2

 《落下の心得》Lv.2

 《鋭い嗅覚》Lv.1

 《気配察知》Lv.1


 〔storage(ストレージ)Skill(スキル)



「――さぁ…美味しい美味しい宝箱、ルーキー狩りの時間だぁ…!!」


 その顔は、およそこの世の邪悪を凝縮させたような表情だった―――。

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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