ベアトリスのサンマーメン ベアトリスと前世の友人
「残念令嬢」本編第八章を読んでから、お楽しみください。
「さすがに壮観ですね」
ベアトリスが息をつくと、隣のカロリーナが笑った。
「そりゃあ、近隣諸国の王族が目白押しだからね。親睦を深める交流会の主催がナリス王国だから、王族ではない私達も参加できているけど」
カロリーナの言う通りだ。
本来この集いには王族、それも王太子やそれに準じるような国を代表する立場の人間しか参加できない。
警備の都合もあり昼間に短時間とはいえ、国を統べる人間が直接顔を合わせて交流できる機会というのは貴重だ。
今回は主催国がナリスなので、公爵家の人間であるベアトリスやカロリーナも末席で参加しているが、本来はこんな集いが開催されていることすら知らない。
当然、伯爵令嬢であるイリスやダニエラは知らないし、参加していなかった。
「半分くらいは国王、残りは王太子って感じかしら。この面子が集まっているのにバレないって、凄いわよね。何か、どこかの国の魔道具とかを駆使しているらしいわよ」
「さすがに詳しいですね、カロリーナ」
現在はオルティス公爵夫人だが、カロリーナはモレノ侯爵家の人間だ。
国の裏事情にもかなり通じているのだろう。
「それにしても。こういう光景を見ると、本当に異世界に転生したんだなって実感するわね。日本では庶民だったのに」
「そうですね。もうこの世界に馴染んでいますが、たまにはサンマーメンを食べたいと思う時もありますね」
「何それ?」
カロリーナが首を傾げている。
確かご当地グルメだったはずなので、知らなくても無理はない。
「――失礼」
その時、説明しようとするベアトリスの腕に、何かがぶつかった。
淡い金髪に柘榴石の瞳の美少年は、どうやら給仕を避けてベアトリスに触れてしまったらしい。
この場にいるのだから高貴な人間だろうに、丁寧に頭を下げる様に好感が持てる。
「失礼しました。お怪我はありませんか?」
「ええ、大丈夫です。ご心配には及びません。わざわざありがとうございます」
金糸の刺繍が美しい華やかな上着だが、それが引き立て役になるほどの美貌。
文句なしの美少年なのだが、それ以上に何だか懐かしいのは気のせいだろうか。
「……その。『さんまーめん』というのは、御婦人の間で流行っているのでしょうか?」
「はい?」
美貌の少年の口からまさかの言葉が飛び出した。
困惑するベアトリスに気付いたらしい少年は。気まずそうに頭をかく。
「いえ、言いにくいのなら結構です。妃がその言葉を口にしたことがあり、気になったもので。……失礼します」
美しい礼と共に立ち去る少年の後ろ姿を、何となく見送る。
すると、遠くで一人の少女と合流するのが見えた。
灰色の髪のあの少女がさっき言っていた妃だろうか。
少年がどこかの国の国王か王太子だとすれば、少女は王妃か王太子妃なのだろう。
周囲の華やかな美貌に比べれば控えめな容姿だが、穏やかな雰囲気に何となく惹かれる。
――その時、少女の視線がこちらに向いた。
澄んだ水色の瞳に吸い込まれそうな錯覚に陥る。
目が合った瞬間、何かが通じたという感情、懐かしいという思いに満たされる。
ふわりと微笑まれ、ベアトリスと少女は共に会釈をした。
「結構な美少年だったわね。それにしても、サンマーメンって、食べ物なんでしょう? この世界にもあるのかしら。……ベアトリス?」
「え? あ、そうですね。食べ物ですよ。ラーメンです」
「メンってラーメンね。……え? じゃあ、サンマが乗っているの?」
一気に眉を顰めるカロリーナを見て、ベアトリスは笑う。
……ずっと昔、同じようにサンマーメンについて話す相手がいた。
日本で仲が良かったはずだが、もう顔も名前も思い出せない。
あの子は今頃どうしているだろう。
もしも同じように異世界転生していたら、いつかどこかで会えるだろうか。
その時には、サンマーメンを作って食べよう。
本来のサンマーメンはもちろん、サンマの塩焼きを乗せたものも用意したら楽しいはずだ。
困惑するカロリーナに微笑みながら、ベアトリスは遥か遠くにいるはずの友人に思いを馳せた。
リクエスト内容は活動報告参照。
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