表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【残念令嬢・書籍化&コミカライズ】残念の宝庫 〜残念令嬢 短編集〜  作者: 西根羽南
「残念令嬢」書籍発売感謝祭リクエスト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/57

イリスのどんぐり  ヘンリーの初恋のイリス視点 1



「残念の宝庫」の「ヘンリーの初恋」を読んでから、ご覧ください。




「いたっ」

 指先に痛みを感じたイリスが見てみると、小さな針のようなものが刺さっている。

 庭に綺麗な花が咲いていたので近くで見ようと触ったのだが、どうやら棘があったらしい。


「これが綺麗な薔薇には棘があるってやつね。……薔薇じゃないけれど」

 反対の手で棘を抜こうとするのだが、つまめそうでつまめなくて、なかなか上手くいかない。

 それにしても、手に棘がささるなんて随分と久しぶりだ。


「さすがに、木登りもしなくなったものね」

 木にしがみついて登ると、手には沢山の木の破片が刺さる。

 痛いしなかなか取れないので、ちょっと切なくなる思い出だ。


「……そういえば、小さい頃にめちゃくちゃ棘抜きが上手な子がいたような……」


 あれは、五歳の頃だっただろうか。

 イリスは指をさすりながら、遠い昔のことを思い返した。



 ********



「遊んでいらっしゃい、イリス。庭から出てはいけませんよ」


 イサベルに許可を貰ったイリスは、喜び勇んでテーブルから離れる。

 庭には十五人ほどの子供達がいたが、女の子は人形遊びをしているし、男の子は木の枝を振り回している。

 どちらの気分でもなかったイリスは、ボールを抱えて庭の奥へと走っていった。



 どんぐりの木を見つけたイリスは、夢中になってどんぐりを集める。

 両手にいっぱいのどんぐりを拾うと、ポケットに詰め込んだ。


 満足したイリスは、次にボールを投げて遊び始めた。

 赤いボールはイリスのお気に入りで、弾む様が面白い。

 夢中になって放り投げていると、風に乗ったボールが木の枝に引っかかってしまった。


「大変。取らなくちゃ」


 イリスは慌てて木にしがみついて登ろうとするが、なかなか上手くいかない。

 自宅の庭の木には登っていたが、この木は幹が太くてイリスの手が届かない。

 その上、木の皮が剥けて滑るので、一緒にずり落ちてしまう。


「……痛い」


 手を見てみれば、いくつもの棘のようなものが刺さっているが、イリスには取ることができない。

 それに、このままではボールを置いて行かなくてはいけなくなる。


「お父様がくれたボールなのに……」


 何だか悲しくなって涙が浮かびそうになるが、ぐっと堪える。

 イリスはもう五歳だ。

 すぐに泣くような子供ではない。


 ごしごしと目を擦ると、足元に置いてあったどんぐりを掴み、放り投げる。

 どんぐりを下から投げてボールに当てれば、きっと落ちてくるはずだ。


 だが、いくら頑張ってもボールは落ちてこない……というか、そもそもどんぐりがそこまで飛ばない。

 途方に暮れていると、男の人がイリスのそばに立っていた。



「……どうしたの?」

 イリスと同じ黒い髪に藍色の瞳の男の人は、じっとイリスを見ている。


 プラシドよりもずっと年下で、イリスよりは年上。

 これはきっと『お兄さん』というものだ。

 覚えたての言葉を思い出したイリスは、何だか嬉しくなって微笑んだ。


「あのね、どんぐりが上手く飛ばないの」

「どんぐり?」

 お兄さんはイリスの足元に散らばるどんぐりに視線を移すと、呆れたようにため息をついた。


「……どんぐりは、殻斗をつけたら飛ぶんじゃないかな」

「かくと?」

「どんぐりの帽子のこと」


 何と、それは知らなかった。

 どんぐりの帽子は『かくと』という名前で、どんぐりとかくとがくっついているとよく飛ぶとは。



「でも、何でかくとがついていると飛ぶの? 仲良しなの?」

「……そんなところ。それよりも、君はイリスだろう? お母さんのところに戻ったら?」


「何で名前、知っているの?」

「何でだろうね」

 教えてくれないのは意地悪だと思うが、不思議とお兄さんは悪い人ではない気がした。


「……知らない人に名前を教えちゃ駄目なのよ。イリス・アラーナって答えるの」

「いや、それも駄目じゃない? 全部答えているよ」

「ええ?」


 ちゃんとできたと思ったのに、何か駄目だったらしい。

 ということは、名前は一切教えてはいけないのか。


「難しいのね」

 唇を尖らせるイリスを見て苦笑したお兄さんは、イリスの頭を優しく撫でた。


「……イリスは、お父さんとお母さんが好き?」

「うん! 大好き!」

 心からそう言うと、お兄さんはもう一度イリスの頭を撫でて深く息を吐いた。


「……うん。わかった。――なら、頑張るよ」

「頑張る?」


 首を傾げるイリスに微笑むと、お兄さんは行ってしまった。

 よくわからないが、とにかく今はボールを取らなければ。



「ええと。どんぐりとかくとが、くっつけばいいのよね」


 せっかくなら、沢山のどんぐりがあった方がいいだろう。

 スカートを広げてどんぐりを運ぶと、木の根元に座り込む。

 早速どんぐりとかくとを手に取ってみて、困ったことに気が付いた。


「……あれ? 合わない」


 どうやら、大きさや形がそれぞれ異なるらしく、適当にかくとを乗せただけでは上手くいかない。

 となると、ちょうどいい大きさのものを探さなくては駄目なのか。


 面倒ではあるが、ボールを取り戻すためだ。

 イリスは一生懸命どんぐりとかくとを合わせようと、試行錯誤を始めた。



「ねえ、何をしているの?」


 背後から突然声をかけられて驚いて振り返ると、そこには男の子が立っていた。



リクエスト内容は活動報告参照。

※1日2話更新予定です!


書籍「残念令嬢」好評発売中‼


※アニメイトオンラインの在庫が終了しました※

アニメイト特典ssは他では入手できません。

「お化け屋敷の女神編」を手に入れたい方は、店舗に問い合わせ、取り置きなどをご利用ください。


よろしければ美麗表紙と肉を、お手元に迎えてあげてくださいませ。

m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

-


「残念令嬢」

「残念令嬢 ~悪役令嬢に転生したので、残念な方向で応戦します~」

コミカライズ配信サイト・アプリ
ゼロサムオンライン「残念令嬢」
西根羽南のHP「残念令嬢」紹介ページ

-

「残念令嬢」書籍①巻公式ページ

「残念令嬢」書籍①巻

-

「残念令嬢」書籍②巻公式ページ

「残念令嬢」書籍②巻

-

Amazon「残念令嬢」コミックス①巻

「残念令嬢」コミックス①巻

-

Amazon「残念令嬢」コミックス②巻

「残念令嬢」コミックス②巻

一迅社 西根羽南 深山キリ 青井よる

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] ぐうかわ
[一言] どんぐりの質量だと、ボールを弾き飛ばすのに必要なエネルギーを乗せるのには速度が…えっと(違)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ