ダニエラの結論 『碧眼の乙女』のお話
本編第五章まで読んでおいた方がわかりやすいと思います。
「ねえ。『碧眼の乙女』の二作目って、どんなお話だったの?」
その問いに、ダニエラは首を傾げた。
「どんなって、どういう意味?」
問い返されたイリスは、ティーカップを置くとうなずいた。
「だって、一作目は皆で対策を練ったじゃない。三作目はダニエラの話を聞く限り、ただの女子の友情ストーリーだったし。四作目は身をもって体験したけど。二作目だけは、よくわからないから」
なるほど、確かにそうか。
イリスは四作目しかプレイしていないのだから、疑問に思っても仕方がない。
この世界の出来事としてはもう過去のことだが、『碧眼の乙女』というゲームを知っているものとしては気になるのもわかる。
「そう言われてみれば、ベアトリスとカロリーナは二作目をプレイしているから、イリスだけが知らないのよね。……わかったわ。全作プレイしたこの私が、しっかりとポイントを教えてあげる」
楽しそうに拍手をするイリスに笑みを返すと、ダニエラは記憶を掘り起こし始めた。
『碧眼の乙女』は、その名の通り、金髪碧眼の乙女がヒロインだ。
さらに、メイン攻略対象は全員赤髪緑目で、悪役令嬢は黒髪金目。
製作者の並々ならぬ金髪碧眼へのこだわりがうかがい知れる。
一作目は、王道の乙女ゲーム展開だ。
平民のヒロインであるクララが王子と恋に落ち、王子の婚約者である公爵令嬢の妨害を乗り越えて結ばれる。
桃太郎レベルで誰もが納得の王道中の王道である。
三作目のヒロインのセレナは貴族令嬢で、すでに婚約者がいるところから物語は始まる。
なんやかんやで真実の恋とやらに目覚めたセレナは、婚約者を捨てて新たな恋に走る。
普通に考えれば浮気の末に乗り換えたのはセレナのほうなのだが、そこは乙女ゲームのヒロイン補正。
特に非がない婚約者もそれなりに悪かった風に流され、当然セレナの行動は追及されない。
……正直、公式でも一二を争うしたたかさだとダニエラは思っている。
四作目はちょっと異色だ。
話の流れは一作目と似た王道なのだが、それだけでは終わらない。
三作目まででキャラが出尽くしたのか、攻略キャラはちょっと癖が強く、何よりも悪役令嬢の癖が強い。
イリスはあまり覚えていないようだったが、結構な行動力でヒロインのリリアナを妨害する美少女に妙なファンがついていたくらいだ。
そして、四作で唯一の隠しキャラが存在する。
何も隠す気のない赤髪緑目なのが、いっそ清々しい。
「……え? 四作目の悪役令嬢って、そんなキャラだった?」
「やっていることは普通に嫉妬で妨害よ。ただ、規模がおかしいのよね。一周目は普通なんだけど、周回するにつれてメイン攻略対象のレイナルドへの執着がこじれて。最終的には舞踏会会場爆破寸前になったり」
「ええ⁉ 嘘でしょう⁉」
その嘘みたいな馬鹿げた行動力が、悪役令嬢の人気に一役買っていた。
実際のイリスは物騒なことはしないものの、行動力は十分におかしい。
そういう意味では、やはりゲームの影響はゼロではないのかもしれない。
「でも、そこまでいかないと、隠しキャラのシーロ王子が出てこなくてさあ。おかげでマニアの間では『爆破王子』の名で親しまれていたわ」
「爆破してないのに?」
「イリスが舞踏会会場を爆破するほどリリアナとレイナルドの好感度が高いって説明するのが面倒だから、『イリス爆破寸前』って表現するのよ」
「それ、私が爆破される寸前みたいじゃない」
イリスは不満そうだが、ダニエラが名付けたわけではないので勘弁してもらいたい。
問題の二作目だが、ヒロインは一作目に続いて平民のメラニア。
だが、後に貴族の娘だと判明する。
その貴族の家というのが、四作目のメイン攻略対象であるレイナルドのいる、ベネガス家だ。
「それは知っているわ。レイナルドが女性不信だったんでしょう?」
「そう。その原因がレイナルドの母親……つまり、メラニアの継母になるわけだけど……」
そこまで言って、ちらりとイリスを見た。
金色の瞳を輝かせたイリスは、興味津々といった様子でダニエラの言葉を待っている。
ダニエラは、二作目の大体の内容を覚えている。
だが、それをイリスに馬鹿正直に伝えていいものだろうか。
二作目はこれまた異色で、まさかの継母との確執までしっかりと盛り込まれている。
ちょっとした昼ドラ的な展開に、乙女ゲームだったよなとパッケージを確認すること請け合いだ。
なのでレイナルドが女性不信だったと聞いても納得しかしないし、逆にそこから救いだしたメラニアが凄すぎる。
別の意味で、セレナと張り合えるしたたかさだと言えよう。
その詳細をイリスに、話すべきだろうか。
悩むダニエラの脳内に、友人達が浮かんでくる。
ベアトリスは困ったように微笑んでいる。
カロリーナは激しく首を振っている。
ついでにどこからか湧いてきたヘンリーが、鋭い瞳で睨みつけてきた。
……うん、やめておこう。
あっさりと結論を出したダニエラは、にこりと微笑んだ。
「メラニアが、強力なヒロイン補正で全員メロメロにして終わるのよ。平和、平和」
嘘は言っていない。
実際にあの修羅場を収めるメラニアのヒロイン補正は神がかっているし、最終的には平和だ。
イリスは数回瞬くと、金色の瞳をきらきらと輝かせた。
「何だかわからないけれど、やっぱりヒロインは凄いわね! そして、それに対抗できる残念……素晴らしいわ!」
よくわからない理論で謎の結論を出すと満足したらしく、イリスは紅茶を飲み始めた。
イリスに余計な入れ知恵をするのは危険だ。
とりあえず、ダニエラの危機は去ったので、良しとしよう。
ダニエラは紅茶に口をつけると、骨付き肉の威力について熱く語るイリスに優しい笑みを向けた。
リクエスト内容は活動報告参照。
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