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【残念令嬢・書籍化&コミカライズ】残念の宝庫 〜残念令嬢 短編集〜  作者: 西根羽南
初投稿から毎日更新2周年感謝企画

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パブロの仕事  男装夜会の裏側 3



ついに全員集合。

さあ、頭を空っぽにする時は、今です……!




 救護室から急いで戻ったパブロの目に入ったのは、伯爵夫妻に挨拶するアラーナ伯爵令嬢とモレノ侯爵令息の姿だ。


 きらきらと瞳を輝かせてはりきって挨拶する美少年に、伯爵夫妻もお嬢様も鼻の下が限界まで伸び切っている。

 二人が立ち去った後にパブロが近付くと、既に夫人は倒れそうになっていた。


「はあ……。話には聞いていたけれど。残念でも素晴らしいなんて、お世辞だとばかり思っていたけれど。男装であの眩さなら、多少おかしな格好をしたところで何の障害にもなりませんね」


「そうなんです、お母様! むしろ足を引っ張る残念がどんどん素敵に見えてくる、残念の魔力! わかってくださって嬉しいです!」


 母娘が手を取り合って深めてはいけない絆を深めているし、伯爵も納得の表情でうなずいている。


 ――既に、ソレール伯爵家は残念の手に堕ちた。

 救う術は、恐らくない。


 パブロにできることは自分の仕事をすること、被害者をできる限り減らすことだけだ。



 会場を見回せば、視線は残念の先駆者(パイオニア)一行に集中している。

 先程まではざわめいていたものが、一転して静かだ。


 だが、秘められた静かな熱気とでもいうのだろうか。

 ざわついていた時よりもよほど興奮が伝わってくる。

 グラスの縁スレスレまで水を注いであるようなものだ。


 あと少しの刺激で、何かが決壊する。

 願わくば、このままスレスレで留まっていてほしいのだが。


「それにしても、オルティス公爵夫人の凛々しい青年ぶりは素晴らしいですね」

「イリス様の初々しい美少年も素晴らしいです」


「いえ、ここはそこはかとない大人の色香を感じさせる青年が」

「いいえ、透明感しかない輝く美少年の尊さが」


 いつの間にか母娘がオルティス公爵夫人派とアラーナ伯爵令嬢派にわかれて意見をぶつけ始めたが、パブロにはどうでもいい。

 どちらも麗しいし、どちらも危険なことに変わりはないのだ。



 その時、小さな悲鳴が上がった。

 見れば、オルティス公爵夫人がアラーナ伯爵令嬢の手を取ってダンスに誘ったようだ。


 オルティス公爵夫人は優雅にリードしているし、アラーナ伯爵令嬢は花が綻ぶような麗しい笑みを浮かべている。

 一応女性同士であるとわかっているのに、美青年と美少年の親し気なダンスに妙な背徳感が付きまとう。


 ふとアラーナ伯爵令嬢が小さく首を傾げ、それに合わせて歓声が上がった。

 会場全体が彼女……いや、彼らから目を離せない状態だ。


 するとオルティス公爵夫人はアラーナ伯爵令嬢を引き寄せ、まるで抱きしめているような形になる。

 そのまま頬が触れそうなほど顔を近付けると、周囲から悲鳴と歓声が上がった。


「美青年と美少年の、禁断の扉が!」

「ああ、いけません。私には夫と子供達が!」


 いつの間にか母娘は和解したらしく、手を取り合って騒いでいる。

 見回せば会場中が興奮を抑えきれないという雰囲気だ。


 これはいよいよ、危険な気がする。

 警戒しながらダンスを終えた二人を見ていると、バルレート公爵令嬢が近寄っていく。



「私がいるのに、他の方と楽しそうに踊るなんて。……切なくなります」


 悲し気に眉を下げて伏し目がちなバルレート公爵令嬢からは、恐ろしいほどの色香が迸り、周囲の男性陣がため息をつくのが聞こえた。

 すると、オルティス公爵夫人がその手をすくい取る。


「私の目にはあなたしか映っていないのに、そんなことを言わないで。美しい人」


 流れるようにそう言うと、そのままバルレート公爵令嬢の手に口づけを落とした。

 その瞬間、周囲から悲鳴と黄色い歓声が沸き起こる。


「私のことも、忘れちゃいやよ?」

 さらにコルテス伯爵令嬢が背後から抱き着くと、オルティス公爵夫人は微笑んでその頬を撫でた。


「わかっているよ、可愛い人」

 再び周囲に歓声がこだまする……というか、もはやただの悲鳴だ。



 男装が似合うのは容姿が優れているからだと納得できるが、それにしたってオルティス公爵夫人の行動と言動が凄い。


 すっかり盛り上がってしまった会場のざわめきが邪魔をして、何を言っているのか聞こえないが、その方が安全かもしれない。


 すると、モレノ侯爵令息がアラーナ伯爵令嬢と手を繋いで何かを言ったかと思うと、微笑んで額にキスをした。

 同時に野太い悲鳴と歓声が上がり、パブロは思わず耳を押さえた。


 これはまずいという予感は的中し、数人の女性がその場に座り込んで荒い息を吐いている。

 誰もが笑顔なところを見ると、原因は残念の先駆者(パイオニア)一行のせいなのだろう。



「救護要員をホールに呼んでください。必要なら、救護室に運んで休んでいただきましょう」


 原因はハッキリしているのだから、離れれば落ち着くだろう。

 救護要員とかいう謎の役割はお嬢様の要請で用意したが、大正解だ。

 だが、数人のご令嬢を運び出すのを見送るパブロに、更なる悲鳴と歓声が襲い掛かる。


 今度は何事だと見てみれば、モレノ侯爵令息がアラーナ伯爵令嬢に顔を寄せ、頬にキスするところだった。



明日で男装夜会の裏側も完結です!

惨劇の幕引きはいかに⁉


「残念令嬢」の番外編が終わり次第、また「残念の宝庫」で連載開始ですので、しばしお待ちください。

リクエスト短編の内容は活動報告をご覧ください。

盛り沢山ですよ!



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