表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【残念令嬢・書籍化&コミカライズ】残念の宝庫 〜残念令嬢 短編集〜  作者: 西根羽南
「残念令嬢」アイリスneoファンタジー大賞受賞&書籍化感謝リクエスト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/57

カロリーナの対抗心  カロリーナから見たヘンリー 2

 ヘンリーが領地に向かって数日後。

 カロリーナがコンラドと庭で遊んでいると、慌てた様子の男性がやって来た。


 渡された手紙を見るなり怖い顔になった父に、カロリーナは驚いて駆け寄る。

「……お父様、どうしたのですか?」

 心配になって尋ねると、コンラドはカロリーナの頭を撫でた。


「お祖父さんからの手紙でね。次の当主はヘンリーになるって。明日には屋敷に戻ってくるよ」

「本当ですか? やったあ!」

 何だか嬉しくなって喜ぶカロリーナの傍らで、コンラドは眉を顰めた。


「早すぎる。……何があったんだ」




 翌日、ヘンリーは帰ってきた。

 教えられたカロリーナが急いで迎えに行くと、そこには祖父のロベルトとヘンリー、そしてもう一人見知らぬ少年がいた。


「お帰り、ヘンリー。お祖父様、こんにちは。……その人は、誰ですか? それに、お母様は?」

「挨拶をありがとう、カロリーナ。お父様はいるかな?」

 ちょうどやって来たコンラドを見るなり、ロベルトは困ったように笑った。


「……とりあえず、お茶にしよう」




 ロベルトに促されて部屋に入ると、カロリーナはコンラドの隣に座った。

 向かいのロベルトの隣にヘンリーが座ったが、少年は横に立ったままだ。


「あなたも座ったら?」

「いえ、結構です」


 そう言って、あとは黙って立ったまま。

 ということは、使用人なのだろうか。

 別に座っても良いと思うが、彼らはそういうところは頑固なのを知っている。

 仕方ないので、カロリーナは黙ってお茶を飲むことにした。



「――次期当主は、ヘンリーだ」


 前置きもなくロベルトがそう言うと、コンラドはため息をついた。

「資質を見る試験の第一回目。しかも初日だったはずでしょう。何故、そんなに急ぐのですか」

「急いでなどいない。だが、無駄な試験は必要ない」


「では、ニコラスに何か不足が?」

「いや、あれに問題はない。ヘンリーが圧倒的過ぎただけだ」

 ロベルトの言葉に、コンラドの顔が一気に険しくなった。

「では、ファティマがいないのも」


「……ああ。おかげで、屋敷の使用人達が総崩れだ。もちろん、ファティマもな。――おそらく、私以上の資質を持っている」

 コンラドが言葉を失っているが、カロリーナには何の話だかいまいちよくわからない。

 じっと見ていると、コンラドは紅茶を一口飲んで、大きなため息をついた。



「……それで、その子は?」

「屋敷の使用人の子供だが、この子だけは何とか耐えられた。耐性があるのだろう。ヘンリーにつけるといい」

 コンラドはうなずくと、少年を見つめた。


「君、名前は?」

「ビクトル・ダビーノです」


「ではビクトル。これからヘンリーの従者として仕えてくれないか。……いずれはヘンリーの補佐官となってほしい」

「補佐官?」

 何を言われたのかわからないらしい少年が、首を傾げている。


「そばにいて、支えてほしい。――兄のように」

「……はい」

 兄という言葉に何かがくすぐられたらしく、ビクトルは何だか嬉しそうだ。

「さて。私達はまだ話がある。カロリーナ、ヘンリーとビクトルを連れて行ってくれるかい?」




 部屋を出て、そのまま庭に向かう。

 良い天気だから、今日は庭でおやつを食べるのも良いかもしれない。


「ヘンリー、お帰り。試験、大変だった?」

「……うん」


 何だか、ヘンリーの元気がない。

 そう言えば、帰ってきてからほとんどしゃべっていない。

 どうしたのだろう。


「カロリーナ。俺のこと、怖い?」


 ようやく喋ったと思ったら、変なことを言っている。

「怖いって、何が?」

「俺の……」

 そう言ったきり、ヘンリーは俯いてしまった。


「よくわからないけれど、怖くなんてないわ。私はお姉さんなのよ?」

 胸を張って答えると、ヘンリーが驚いたような顔をして、そしてほんの少し笑った。

「……なら、良かった」

 何だか寂しそうな様子に、カロリーナまで切なくなってくる。



「ヘンリーが次の当主なんでしょう?」

「うん」

「凄いわ。黄色い子も、びっくりするわね」


 六歳で試験を受けて次期当主になるというのは、たぶん凄いことだ。

 ヘンリーのお友達にだって、自慢できるだろう。

 だが、ヘンリーはきょとんとした顔で首を傾げている。


「誰、それ」

「え? ヘンリーが言っていたでしょう?」

「知らない」

 その子のために頑張ると言っていたのに、どうしたのだろう。

 忘れてしまったのだろうか。


「……ああ。きっと、疲れているのよ。そういう時は、美味しいものを食べると良いってお母様が言っていたわ」

 領地は遠くて、馬車に乗っているのは疲れる。

 きっと、そのせいでいつもと違うのだ。


「今日は林檎のパイがあるの。お腹空いたでしょう? あなた……ビクトル? 一緒に食べましょうね」

「いえ、俺……私は」 

「いいから。すごくおいしいのよ。ヘンリーも行こう」

「うん」


 継承者も当主も、やっぱりよくわからないけれど、ヘンリーは可愛い弟だ。

 姉であるカロリーナが、助けてあげなければ。

『兄のように』と言われたビクトルに多少の対抗心はあるが、今は美味しいおやつが優先だ。

 カロリーナは林檎のパイの美味しさを力説しながら、二人の手を引いた。


「残念令嬢 〜悪役令嬢に転生したので、残念な方向で応戦します〜」受賞&書籍化感謝リクエストはこれで終了です。


また機会があれば、リクエストを募集します。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

-


「残念令嬢」

「残念令嬢 ~悪役令嬢に転生したので、残念な方向で応戦します~」

コミカライズ配信サイト・アプリ
ゼロサムオンライン「残念令嬢」
西根羽南のHP「残念令嬢」紹介ページ

-

「残念令嬢」書籍①巻公式ページ

「残念令嬢」書籍①巻

-

「残念令嬢」書籍②巻公式ページ

「残念令嬢」書籍②巻

-

Amazon「残念令嬢」コミックス①巻

「残念令嬢」コミックス①巻

-

Amazon「残念令嬢」コミックス②巻

「残念令嬢」コミックス②巻

一迅社 西根羽南 深山キリ 青井よる

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[気になる点] 黄色い人は誰だったのでしょうか そしてなぜ忘れてしまったのか 気になります
[一言] いつも楽しく読ませていただきました。ありがとう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ