表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/174

逃走劇 その一

 牢屋に入れられた俺は考えていた。

 まずミール達と合流することが優先だな。

 そしてそこから方針を考えないといけないが、俺達が囮になってミール達にシリウスを捕まえてもらうのが良さそうだな。

 そのためにはまず牢屋からの脱走が目標か。

 現状は、全員に手錠、牢の番が二人。


「国王も何を考えているのか、これが演習になるのか? 犯人もうここにいるじゃないか」


「まあ、こいつらの仲間も全部捕まえないといけないらしいしな」


 演習か、なるほど。


「ここって何階なんだ?」


「ん、悪いけど教えられないよ。仲間が来るまで大人しくしてな」


「なら、この塔は掘りに囲まれてたよな」


「そうだな」


 それなら正面よりも後ろから行くか、ぶっつけ本番だけどいつもの事だしな。


「ルリーラ、やるぞ」


「わかった!」


 ルリーラが力を込めると鉄でできた手錠は簡単に壊れてしまう。


「はっ!? 何してんの?」


 彼らが驚いた時にはすでにルリーラが次の行動を起こしている。

 拳を握り全力で壁を叩き壊す。

 そして俺達を抱え外に飛び出す。

 壁の外は十数メートル。


「炎よ、大鳥よ、我等を抱え地に導け、ファイアホーク」


 巨大な炎の鷹は俺達を掴み空を羽ばたく。

 慌てる憲兵を余所に俺達は人気の少なそうな街中に降り立つ。


「さて、まずはミール達を探さないとな」


 建物の影に隠れこれからの作戦を考える。

 派手に動くと憲兵に見つかる。でも、ちまちまやっていたら数の差に負けるかもしれない。


「動かないの? ここで、じっとしてても捕まるよ」


「私もルリーラちゃんに賛成です。このままだと捕まるのが遅いか早いかの違いです」


「真犯人って誰だと思う?」


 二人が顔を合わせる。


「シリウスさんでは?」


 アルシェの言葉にルリーラも頷く。


「やっぱりそう思うよな」


 二人は首を傾げた。

 俺もそう思った。思ったが本当にそれが正解なのか、確かにシリウスが俺を嵌めるためという動機はある、だがシリウスがやったのなら誰かが不審に思うはず。

 それが無いということは、シリウスじゃない。いや、シリウスだけじゃない。


「よし、まずはシリウスを探そう」


 それでもシリウスは何かを知っている。それならまずは手掛かりとして捕まえるのは決して無駄じゃない。

 俺達はしばらくは身を隠しながら街の中を探索する。

 しかし当然見つかることはない。


「中々見つからないですね」


「すぐに見つかるとは思ってない。だが流石に見張りが多い」


 建物から建物へと移動するだけでも時間がかかる。

 それにシリウスが居た場所は一つ目の関所、つまりここから車で一日かかった場所へ歩いて移動することになる。


「アルシェ、魔法であの城壁まで飛べるか?」


「そうですね、フィルさんの真似ならできます。後はルリーラちゃん頼みですけど」


 いくらか思案したものの答えは可能。

 頼みのルリーラに視線を向ける。


「私も行けるよ」


 こちらが質問する前の返答に俺は頷く。

 これで多少の余裕が生まれる。

 確認したわけではないが、城壁一つ一つの警備は地上程厳重ではないだろう。

 それに奇襲を受けようもないから守りやすい。


「とりあえず、あそこの城壁の上に行く。頼むぞ二人とも」


 大事なのはテンポと距離、ルリーラの感覚を理解しないとどうにもならない。

 俺とアルシェをルリーラが抱え、アルシェが魔力を溜める。


「いつでもいいよ」


「行くよ、ルリーラちゃん」


 二人を抱えたままルリーラが跳躍する。

 上昇から下降に変わる位置にアルシェが魔法で足場を作る。

 先出しで足場を作ってもいいのだが、奇襲に備え直前まで足場を出さないでいる。

 そしてほどほどの高さまで来たところで、今度は横の移動。

 上昇用に平らではなくわずかに傾いた足場の生成。

 それを常にルリーラの移動に合わせ何度も繰り返す。城壁についたのは、最初に跳躍してから数十分経った時だった。


「流石に疲れました」


「そうだね、私も疲れた」


「お疲れ、少し休んでいてくれ」


 城壁の上は驚くほどに警備が手薄だった。

 兵士が数名いたためルリーラが撃退し、現在は捕縛している。


「聞きたいんだけどさ、カラ・シリウスの居場所は?」


「シリウス隊長なら今日は非番だよ」


「家はどこなんだ?」


「最初の街に住んでるよ。詳しい場所はわからない」


 やっぱり最初の街か。後一つ城門まで行かないといけないのは流石に厳しいな。


「ぶっちゃけ犯人役って誰なの? シリウスだけじゃないのはわかったけどもう一人がわからない」


「自分達も聞かされていません。ただ知っているのは犯人役は聞かれたら素直に伝えること。それと質問には答えることだけです」


 尋問された体で対応しろということか。

 実際に尋問するよりも早く動けそうで助かるルールだな。


「じゃあ、俺の仲間はどこにいるか知らないか?」


 捕らえた数人は顔を見合わせ全員が首を振る。

 派手に行動はしていないってことだな。


「知らないですが、宿は襲撃したはずです。捕縛されているならこちらにも連絡が来るはずですので」


 ということは、まだ逃げ回っているということか。


「どこかで逃走があったならここから見ればわかりますから」


「まあ、そりゃそうだよな」


 これだけの高さ、塔を除けばこの国で最大の建造物。

 視界を遮る建物もなく見晴らしがとてもいい。

 見えていない位置でやっているのだろうか? でも俺達の泊まる宿はここからでも視認できるしな。

 シリウスを探すか、それともミール達と合流するか。

 どちらも手掛かりがなく両方困難だ。


「よし、決めた。これから最初の街に向かうぞ」


 ミール達も心配だが、逃げることくらいならできるはずだ。襲撃なら移動している場所もわからない。そのまま移動するよりも、俺達で最初に捕まえたほうがいいだろう。

 もう一人の犯人は当初の予定通りにシリウスを捕まえてからでいいだろう。


「もう少し休んだら二つ目の街に移動するぞ」


 ルリーラとアルシェの休息を取ったうえで二つ目の街に下りることにした。


 二つ目の街には三つ目の街程の警備はいなかった。

 適当な物陰に隠れまたタイミングをうかがう。


「さっきよりも少ない気がしますね」


「まだ三つ目の街に居ると思ってくれているだけだと思うけど、あんまりのんびりもしてられないだろうな」


 あれほどの人数だ、早々に俺達が二つ目の街に居ることがわかってもおかしくはない。


「これなら地上を正面突破でもよくない?」


「よくない。俺達はまだ三つ目の街に居ると思っていてもらわないとな」


 しかし、見ていると全員がこの訓練に本気ってわけじゃないんだな。

 衛兵の態度があまりいいものではない。

 欠伸をしていたり、雑談をしていたりで真剣さが足りていない。


「それが狙いでもあるのか」


 おそらく、この衛兵たちにも巡回のルートや、守備のための連携があるはずなのにこの体たらく。

 それのあぶり出しに手伝わされている。

 逆に言えば、警備に関してだけなら外側の街の方が警備は手薄。

 そう思った時体に何かが通り抜ける。

 サーチを使われた?

 アルシェに目を向けると、アルシェも感じ取ったらしくこちらを見ていた。


「二人とも、適当にローブを被って移動だ」


 早急にこの場所を離れたほうがいい。

 その時、唐突に空から叫び声が聞こえてきた。


「そこ、退いてーーーーー!!」


 その叫び声に咄嗟に避ける。そして俺達が居た場所に影が現れる。

 そして何かが墜落したらしい衝撃音とともに大きな土煙が辺りを包みこんでしまう。


「な、なに?」


 ルリーラ達もあまりの出来事に慌てふためく。


「パパ!」


 土煙の奥から叫びながら、大きな影が突進してきた。

 そしてそのまま俺に抱き付いてきた。

 俺はその巨大な影の持つ二つの巨大な二つの柔らかな風船に挟まれる。


「パパ、会いたかった」


 その呼び方に一瞬セルクがよぎるが、俺の知っているセルクはここまで大きくない。


「セルク、離れなさい。兄さんが困惑してるから」


 セルクと呼ばれ俺を抱きしめている人物から解放されると、目の前にいたのは一人の女性。

 確かにセルクらしい元気さがうかがえる無邪気な微笑みだが、セルクらしくない長身で女性らしく滑らかな曲線を描くスタイル。

 セルクだと確信したのは、頭についているねじれた二本の角と、魔力を魔力を抑えていたはずの腕輪。


「何がどうなってこうなったんだよ」


 セルクが成長したと見るしかない。

 そしてそれよりも驚いたのは異質な髪と目。

 髪の左は純白、反対の右は漆黒。

 その髪と反対に目は左が黒く、右が白い。

 前代未聞のその姿に、俺は疑問を持ちながらも盛大に崩壊した場所から急いでその場を離れることにした。


「説明してもらってもいいか?」


「そうですね。とは言え私も理由はわからないんです。いきなりセルクもこうなってしまい」


「パパー」


 どうやら成長は肉体だけで、内面は子供のまま。

 今現在も俺を呼びながら抱き付いている。


「セルク、少し静かにしてくれるか?」


「わかった」


 そう言ってセルクは俺の膝に座る。

 行動自体は昨日までと変わりない、変わっているのは圧倒的に肉が増えたことだ。

 胸の膨らみ、下半身にも柔らかさが増えた。

 男としては耐えたくない肉感を今は抑え込む。


「とりあえず、俺達と別れた後の話を教えてくれ」


「わかりました」


 ミールが話を始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ