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カルラギーク王との謁見

 三つ目の関所でも事件はなく簡単な荷物検査だけで終わる。


「何かあるかと思ったけど、何もなく終わったな」


 二つ目の関所は時間的に無理があったとして、三つ目の関所ではシリウスが何か仕掛けてくるかと思っていた。

 それが何もなく終わり妙な違和感がある。


「隊長殿も、私怨だけで職務を放棄しないでしょう」


「だといいけどな」


 徐々に近づく巨大な塔。高さは五十メートルを超えていて二十三層に分かれているらしい。

 ちなみに公表してもいい情報らしくハリスが教えてくれた。塔の各層にはそれぞれ役割があり流石にその役割については企業秘密とのことだ。


「城はこの先です。塔に入るにも城を通らなければいけませんので、結構人通りが多いです」


「ハリスさん、そんなことまで教えていただいていいのでしょうか」


「それってつまり、塔を抑えるなら城を押さえろってことだろ」


 それは結構重要な秘密だと思うが、それほどに自信があるってことだろうけど。


「アルシェさん、心配いりません。これも公開情報です」


「それならいいんですけど」


 俺には何もなしか。

 まあ、いいけどな。それにアルシェの事を好きだって言うのは十分にわかったし。


「クォルテは仲間外れにされたの?」


「そうみたいだ」


 ムカつくニヤケ面でルリーラが近寄ってくる。


「たまに私が感じる寂しさを味わうといいよ」


「お前の時とは事情が違うからな」


 ルリーラの場合は、理解しようとしないまま話に入ろうとしてくるからで、今回のとは大きく違う。


「着きました。ここからは徒歩でお願いします」


「わかった。じゃあ行くか」


 ちなみに今車に居るのは、手形を貰った四人だけ。

 他の四人はこの第三の門を超えた段階で宿を取り、その宿で待機してもらっている。

 何があっても良いように待機組は四人での行動と、ミールの指示で動くように言っておいた。

 シリウスが相手ならフィルとサラで問題はないはずだ。


「ではご案内します」


「今回の作業階はどこなの?」


「自分もそこまで聞いてはいません。国王に直接聞いてください」


「わかった」


 城が塔の入り口と言ってはいたがその表現は正しくないと思った。

 巨大な塔の入り口として城が建てられている。塔の出っ張っている部分が城として装飾されているだけだ。

 これは確かに公開情報だろうなと納得する。

 ここ以外に入口の体を成していない。


「凄いなこの塔は……」


「先代のシェルノキュリの王が、若い時に作ったのがこの塔ですから」


 その言葉にオレイカの方を向くと、オレイカは普通に頷いた。


「シェルノキュリって本当に凄いんだな」


 改めてシェルノキュリ連合の凄まじさを知った。


 城の前に行くと当然衛兵はいる。

 塔と城を囲うように広い堀に橋が一本だけあり、そこに三名。さらにその奥の城門の前にも三名。

 その衛兵に手形を見せ、ハリスによる身分証明が住みようやく城に入る。


「ここがカルラギークの城内です」


 城内は絢爛豪華とは言えないが、落ち着いて気品のがある。

 調度品は嫌味にならない程度に豪華だ。


「城内の警備は鎧が違うんだな」


「ええ、ロイヤルと呼ばれています。自分達とは違う王直属の兵になりますね」


「喧嘩売ったら買ってくれるかな?」


「やめろ、国際問題にするつもりか」


 俺とルリーラのやり取りにハリスも笑う。


「この階段の先が玉座の間になっています」


「ハリスは来ないのか?」


「案内はここまでです。外でお待ちしています」


 そう言うと、ハリスは俺達に背中を向けて立ち去った。

 階段を上ると扉の前に居た衛兵に止められる。


「面会の約束はあるのか?」


 俺達が手形を見せると、衛兵は扉を開けてくれた。

 俺達はそのまま玉座の間に足を踏み入れる。


「よく来てくれた。現アリルド国の国王クォルテ・ロックス殿とその奴隷ルリーラ殿とアルシェ殿。それと久しいなオレイカ殿」


 アリルドと同じ強者と言われ身構えていたが、目の前にいるカルラギーク王はそれほど高圧的ではなかった。

 確かに体格はアリルドと同じほどの巨体。しかしアリルドと違い黒い髪を整え、無精ひげは無く見た目にも気を使い、柔和な笑みを浮かべている。その微笑みはまるで既知の間柄の様に親しみを持って俺達に語り掛けてくる。


「俺がカルラギークの国王シシカ・ウォーカーだ」


「お初にお目にかかります。ご存知の様ですが、改めて名乗らせていただきます。アリルド国国王クォルテ・ロックスです」


 俺が膝を着くとルリーラとアルシェも同じ姿勢を取る。


「堅苦しいのはこのくらいでよいだろう。クォルテ、話はアリルドから聞いている」


「アリルドとはどのようなご関係なのですか?」


「友達は少し違うな、友達は友達だが喧嘩友達とでも思ってもらえればいい。それにしても驚いた、まさかアリルドが負けるとは思っていなかった。それもこんな若い連中に」


 俺達を優しく見つめ国王は席を立つ。


「立ち話も味気ないだろう。こっちに座ってくれ。茶や菓子もある」


 案内されるのは玉座の間に備えられている一組のテーブル。

 そこに座ると国王自ら紅茶を入れてくれる。


「不思議か? 友を招くのに使用人を使うのも気が引けるだろう」


 かちゃかちゃと手際よく準備をする国王を意外に思っていると、それに気づいたのか国王はそう答えてくれた。


「よくアリルドは来ていたんですね」


「唯一対等に話せる奴だったからな」


 準備を終え、国王は俺達にカップを置き自分も着席する。


「無礼かとは思うが、もう一度聞きたい。本当にお前達がアリルドを負かしたのか?」


 急に空気が変わる。

 嘘もごまかしも認めない威圧感が国王を包む。


「本当です」


「そうか、すまない。ベルタとプリズマがいるとはいえ、あの男が負けるとは信じられなくてな」


「わかります。それに勝てたのも辛うじてと言ったほうがいいでしょうし」


「どうだ? 俺と勝負しないか?」


「勝負ですか?」


「簡単なことだ、力比べ。ルリーラ殿がアリルドと対等に殴り合ったらしいな。俺とも立ち会わないか?」


 その言葉にルリーラは笑みを浮かべる。

 そして俺を見る。


「ルリーラは会う前からそれを望んでいました。国王がいいのであれば問題はありません」


「流石だ。本気で来いよ、失望だけはさせてくれるな」


 俺は何を見ていたのかと自分の見る目の無さに落胆した。

 国王の纏う覇気は逃げ出したくなるほどに高圧的で、大きな体がより強大に見える。

 アリルドの喧嘩友達。その言葉に嘘偽りなんてなかった。


「倒れたほうの負けでよいな」


「もちろん」


 二人の気迫が膨れ上がり、玉座の間を支配する。

 俺はそこから動けずにいた。


「いつでも来い、レディーファーストだ」


「遠慮なく」


 いつも通りの地面が破裂するほどの踏み込みでルリーラは突進する。


「ふん!」


 壁を平気で壊するルリーラの突進を国王は床に足をめり込ませながら止める。

 全力の力比べに床が悲鳴を上げ、二人の足が床に埋まっていく。


「なるほど、確かに怪力だ。訓練も欠かしていない」


「王様も流石だよ、おっちゃんと同じくらい強いね」


 ともに互いの手を掴み均衡するが、体重の差でルリーラが徐々に押され始める。

 先に攻撃に出たのはルリーラだった。

 咄嗟に手を引き国王の体制が崩れたタイミングでの蹴り。


「やるな」


 でも流石にその攻撃が入るほど甘くはなく、国王の腕が蹴りを防ぐ。


 防いだ腕と反対の拳がルリーラに向かう。

 防ぐのかと思ったがルリーラは足に更なる力を込める。

 その蹴りを軸にして体を回転させ、国王の頭部目掛けかかとを向ける。


「なるほど、流石だ」


 防ぐすべのない国王の頭部にルリーラの一撃が炸裂する。

 みしりと嫌な音を立てめり込んだ国王はそのまま地面に顔からぶつかる。


「ルリーラやりすぎだ」


「気にするな、俺が選んだのだ。手を抜かなかったことをほめてやれ」


 あれほどの一撃を受け平然と立ち上がる国王は、ルリーラをたたえた。


「納得したよ、ルリーラは確かに強いな。これならアリルドの足止めはできるだろう」


 さっきとは違う嫌な雰囲気。まだあるんだよな、当然か。


「もう一つ挑戦を受けてくれるか、クォルテ」


「魔法は無理ですよね」


 黒髪の国王がプリズマと対決できるほどの魔法があるはずはない。


「俺が見たいのはクォルテの知恵だ。手合わせして感じたが、ルリーラは策を講じるタイプではないな。では作戦を組み立てたのはクォルテかアルシェだ。見たところ奴隷のアルシェがクォルテに命令できるとは思えない」


「正解です。それで、俺に何をさせるつもりですか?」


 その問いが合図なのだと気づいたのはこの後だった。

 玉座の間に扉が開く音が響き、ロイヤルと呼ばれていた王の近衛兵が俺達に武器を向ける。


「クォルテ・ロックス。お前に機密情報を漏洩させた罪がかけられている」


 カルラギーク王は俺にそう言った。


「なるほど。これが挑戦ってわけですか」


「真犯人を探せ。ただそれだけだ」


 犯人はおそらくカラ・シリウスだ。

 タイミングはいつだ? 最初からか、手形を貰った時か?


「俺がしたことは全て不問になりますよね?」


「もちろんだ。オレイカ殿はこのまま補修をお願いしたい」


「牢に入れておけ」


 衛兵に連れられ俺達は塔の内部にある牢屋に入れられてしまった。

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