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ゲーム大会その四 決着

 檻が打ち上げられた場所に走る。

 場所はそんなに遠くはない。


「フィル、人の場所を確認。オレイカはフィルの指示通りの場所を覆うように魔法で囲んでくれ、囲む壁はできるだけ厚く」


「気配だから誰かまではわからないからね」


「王様って無茶言うよね」


「そこは素直にはい。とかでいいだろう」


 これで、後はあいつらをどれくらいで制圧できるかだな。

 警邏側は全部で五組。フィルム組を倒しても残りは十六人。全員を退場させるのは流石に厳しいな。

 すでに半分くらいは経っているだろうしな。


「ご主人、いたよ。檻の中に一人、外に三人集まってる」


 誰かが脱落した放送はないし、檻の中を含めて四人ならそれで正解だろう。


「檻が最初に飛んだものその辺りだ。オレイカ、派手にやってくれ」


「地よ、巨壁にて敵を分断せよ、ウォール!」


 呪文と共に、今いる場所から二枚の厚い壁が生まれ伸びていく。


「これで一直線でいけるよ」


「なら、最後の戦いと行こうか」


 周りを気にする必要もなく、ただただ一直線に走っていく。

 オレイカの身体強化も合わさり、すぐに目的地には着いた。


「クォルテ・ロックス、お前はどこまでわかってゲームに参加した?」


「負けたら仲間がいなくなる。その程度だ」


「じゃあ、作戦全部その場でくみ上げたのか?」


「そうだな、と言ってももっと狡猾な奴なら負けてたよ」


 それくらい、地の神もフィルムも素直過ぎた。

 自分の作戦を押し付けるタイプ、裏も何もない作戦だったから丁寧に策を潰してこれた。


「俺はお前に憧れて旅に出た。でも、お前のことは嫌いだ」


「俺はそういうことを言える奴は嫌いじゃないぞ」


 馬鹿正直で猪突猛進。

 俺みたいに考えすぎる人間からすれば、憧れるほどに眩しい。


「話をしている場合じゃないよな」


 俺が先に一歩踏み出す。

 何の仕掛けもない水の塊をフィルムに投げる。


「フィルは、ルリーラの錠を外してくれ」


「わかった」


「リース、ヴェルス外させるな!」


「嫌だ、私はちんちくりんを直接潰す」


 雰囲気が変わってるな、何かあったのか?

 まあ、こっちとしては好都合だ。


「フィルムくんを馬鹿にしたこのちんちくりんを直接潰さないと、収まりがつかない」


「よそ見をするなんて余裕だな」


 水を払ったフィルムの視線は、リースに向く。


「水よ、敵を討つ剣となれ、ウォーターソード」


 剣とは名ばかりの水の棒を作り動き出す。


「炎よ」


 フィルムが呪文を唱える瞬間に土を蹴り上げ、詠唱を防ぐ。


「何しやがる」


「詠唱の邪魔だよ」


 一歩踏み出し剣を振り下ろす。

 フィルムは炎を纏った拳でそれを必死にさばく。


「上だけじゃダメだろ」


 更に踏み込み足で横腹を蹴り飛ばし壁にぶつける。

 そしてその後を追うように剣で薙ぎ払う。


「舐めるな!」


 横からくる剣をフィルムは右手で下からはじく。


「舐めてねぇよ」


 弾かれた剣を離す。

 フィルムの弾いた右腕を掴みそのまま左に引っ張る。

 そのせいでフィルムの動きが制限される。

 死角になった右の側頭部を全力で蹴りぬく。


「かはっ」


 そしてそのままフィルムは気を失う。


「オレイカ、こいつを拘束してくれ」


「わかった」


 フィルムとの一戦を終え、ルリーラ達の戦いに目を向ける。

 すでに戦いは佳境を迎えていた。

 奴隷のヴェルスは、フィルの立体的な立ち回りに翻弄され攻撃が当てられず、リースはルリーラの攻撃に防戦一方になっている。


「王様、ここまで差がつくものなの?」


「力量にそこまで違いはない、フィルとヴェルスは同じ黒髪同士だしな。ルリーラとリースは腕力の差は当然あるけど、リースには魔法がある」


 ベルタだからプリズマだから最強ではない。


「でも、ここまでの差があるのは、簡単なことで圧倒的に相手の経験不足だな」


 今も翻弄されているヴェルスは、死角を減らし一撃を貰う覚悟でフィルを捕らえれば翻弄されない。

 リースも落ち着いて魔法を軸に戦えば、ここまで一方的になることはない。


「俺のせいってことか?」


「こんなに早く目を覚ますとは思わなかった。それとそこまで言うつもりはない。これでも俺達はお前達の先輩なんだ、魔獣も倒してるしベルタと何度も戦っているしな」


「だから負けてもしょうがないって慰めか……」


 またリースの攻撃はあっさりと止められ、ルリーラからの反撃を受け壁に衝突する。

 その光景を目にしても拘束され何もできないフィルムは、唇を噛み血が浮き出る。


「慰めじゃない。先輩からのアドバイスだ」


「聞く耳もたねぇよ」


「それで一つ聞きたいんだが、ターゲットの場所知ってるよな?」


「っ!? 知らねぇよ」


 本当に馬鹿正直でわかりやすい。

 一瞬目が一点に向かい、すぐに別を向いた。

 これでおおよその場所はわかった。


「二人とも、全員場外にぶん投げろ」


「了解」「わかった」


 二人に声をかけてからは一瞬だった。

 フィルはヴェルスの足を狙い、転がった瞬間に魔法を使い場外に投げ飛ばす。


「また今度喧嘩しようね、性悪」


「次は負けないから、ちんちくりん」


 何か一言を交わしルリーラもリースの足を掴み場外に投げ飛ばす。


「次やるまでに経験詰んでおけよ、俺達に勝てたならいつでもアリルドをくれてやる」


「そのセリフ後悔させてやる」


 フィルムも場外に飛びそのまま失格になる。


『またしても失格者が出ました! フィルム組の大将フィルム選手が場外に出たことにより、フィルム組全滅です!』


 観客は実況に釣られ落胆と歓喜の声を合わせる。


『残り時間もあとわずか! 盗人側はターゲットを一つ、脱落者は無し! 対する警邏側はターゲットと逮捕者はゼロ、そして脱落者は四人! 圧倒的に盗人有利だが、まだわからないぞ! ターゲットは残り二つある! このターゲットを手に入れたチームの優勝だ!』


「実況の人はああ言ってるけど、このままターゲットを持って隠れてるの?」


「まさか、ターゲットをもう一つ手に入れるさ」


「こっちの方に、ターゲットがあるのはなんでわかるの?」


「ガリクラが最後に仕掛けた嫌がらせだからな」


「さっきフィルムに聞いてたやつだね、王様」


「そう、俺達とフィルム達で過半数のターゲットを手に入れて互いに奪い合う。それで勝った方が総取りってシナリオだ。もっともアナウンスが無かったから、イーシャ辺りがあえて取らなかったんだろうな」


 フィルムも場所は知っていた、自力で見つけたならアナウンスがあって然るべきだが、それもなかった。

 つまり地の神から場所を聞いていたのだろう。


「オレイカ、探索を頼む」


 再び呪文を唱え俺達の体を気味の悪い感触が通り抜ける。


「もう少し先に変な物があるね」


 言われた方向に進む。

 そこには不自然なほどに集められた木葉があった。


「これかな?」


「うん、反応は人形みたいだし」


「じゃあ取るね」


 ルリーラが木葉の中から一体の人形を手にする。


『二つ目のターゲットが見つかった! これはまたクォルテ組だ、この組はどんな魔法を使ってるいるのか! 一組を全員脱落させ、過半数のターゲットを奪取した! なんという凄まじさ、実況をしていてここまで活躍した組を見たことが無い!』


「さてみんな、ここからが最大の難所だ」


 残りの十数分の間、襲ってくる連中からターゲットを守り抜かないといけない。

 残り四組十六人。

 迫りくる地鳴りを耳にし戦った。


『そこまで! なんということでしょうか、クォルテ組まさかの防衛成功! 敵味方全員から襲われながらもターゲットを守り抜きました!』


「流石にしんどいって……」


 オレイカにターゲットを持たせ、ルリーラとフィルに数人単位でまとめてもらい、俺が固める。

 単純だが俺らから奪うために、一致団結しているせいで、固めては溶かし固めては溶かしのいたちごっこ。そのせいで場外には出せず、息つく暇もなかった。


「でも、これで俺達の勝ちだな」


『結果発表! 勝利したのは当然盗人チーム! 最優秀賞はこれまた当然クォルテ組だ!』


 実況の言葉で会場はまたしても腹に響くほどの大歓声に包まれた。


 それから、表彰式を終え賞金を受け取り俺達は宿に向かう。


「クォルテ・ロックス」


 宿の前でフィルム達が待っていた。

 刀に手を乗せたサラを手で制し一歩前に出る。


「俺はいつかお前を超える」


「楽しみにしてる」


 そう一言を交わすとフィルムはすぐに背を向ける。


「クォルテさん、今の何だったんですか?」


「宣戦布告だろうな」


「兄さん、嬉しそうですね」


「そうか?」


 ああいうのは俺の周りに居なくて新鮮だからかもしれない。


「ご主人って男色?」

「違う!」


「お姉ちゃんがいるのにあんな男の事をなんてそうだあの男を消せば全部が上手くいくはず」


「ミール、珍しく意見があったな。あの男を今から」


「物騒な計画を立てるな」


「アルシェママ、男色って何?」


「ふえっ」


「私も知りたい」


「男色って言うのは――」


「フィルはルリーラとセルクに何を教え込もうとしてるんだ!」


 そんなよくわからない会話をしながら俺達は宿の中に入って行った。

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