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ゲーム大会その二 激突

 地図を一枚渡され指定された位置に向かう。

 地図には自分達の所定位置と収監される場所が記載されていた。

 荒野の真ん中にある街にも関わらず、この会場には草木が生い茂っている。


「よくここまで育てたな」


 外の様子を見る限り、草木が育つ環境ではなさそうだったが。


「ガリクラ様が、大会のたびにステージを毎回変えているから」


「相変わらずなんでもありだな」


 荒野にこんな立派な公園の様な場所を簡単に作り出す。

 そんな滅茶苦茶さに飽きれてしまう。


「ご主人、折角の移動時間だし、作戦を教えてくれる?」


「そうだな、たぶんだがフィルム達は俺達のスタート地点を知っている」


 俺の言葉に全員が驚く。


「それって、あの神様が教えたってことだよね。反則じゃないの?」


「そうだな。でも、俺としてはそっちの方が助かる。乱戦になるよりは遥かにマシだ」


 それに地の神は俺達が直接やりあう様子を見て楽しみたいのだろう。


「じゃあ、あっちが来るのを待ち伏せってことでいいの?」


「そうだな、その理由はもう少し離れてから話すとして。それともう一つ、警邏組を倒す場合には会場の外にぶん投げてくれ、それで警邏の数を減らせる」


「それって反則にならないの?」


「こっちは反則にならない。ルールも会場に出た奴が退場だ」


 これに関しては、向こうも使おうとしていたことだろうし問題ない。


「さて、この辺りだな。それじゃあ時間まで説明しようか」


 知っているとはいえ、流石にここまで木に囲まれていては向こうも見つけるのは簡単ではないだろう。

 一際大きな木に隠れ、俺は開始の合図があるまで作戦の説明をした。


『さて、それでは時間となりました! 皆さん準備はいいですね! それではゲーム警邏と盗人開始です!』


 実況の合図とともに、他の場所から移動の気配を感じる。


「じゃあ、作戦通りに――」


「危ない!」


 動き始めようとした瞬間に、黒い塊が俺めがけて突っ込んでくる。

 ギリギリのところでルリーラが黒い塊を受け止める。


「あんたは、さっきの」


 フィルムを抱えた奴隷だな、確かヴェルスって呼ばれてたな。

 長身で黒髪、細い線の女性、でもその細さは華奢なわけではなく、見ただけでわかるほどに鍛え絞られた肉体美。


「ちょうどよかったよ」


 低い声でルリーラを押しつぶす様に力を込める。


「残念だけどこれは一対一じゃないよ。あたし達も近くに居るんだよ」


「それはこっちのセリフ。フィルムくんじゃないからそのくらいは知ってる」


 援護に向かったフィルに突っ込んできたのは、リースと呼ばれていた口の悪い少女。

 手数の多さでフィルを攻め立てる。

 奇襲の連続でフィルまで動きを封じられる。


「ルリーラ、フィル!」


 ようやく体が動いたが、当然俺にも向かってくる敵がいた。

 茶色髪の男、フィルム・ガーベルト。

 力任せの一撃を避ける。

 避けた先の大木が、フィルムの一撃で倒れてしまう。


「なかなかの威力じゃないか、フィルム・ガーベルト」


「あんたも腑抜けのくせによく避けたな、クォルテ・ロックス」


 流石にこの状況で魔法を使う余裕はくれないよな。

 倒すまではいけないか。倒せれば話は早いんだけどな。


「行くぞ!」


 肘まで覆うように炎を纏うフィルムは、見た目に反して一撃一撃をしっかり当てに来る。

 直接当てられなくても、掠るだけで魔法のダメージを受けてしまう。


 火の魔法の嫌なところはこれなんだよな。

 対人特化。というか、対生物特化の攻撃特化。

 避けても当たってもこちらの体力を削る。


「防戦一方か、少しは反撃してみろよ!」


 でも、防ぐ手立てもある。

 単純に水で受ける。


「俺が水だってのは知ってるよな、魔法を消せればお前に負けない」


 複雑でも何でもない、水を手に纏わせるだけでフィルムの拳を受け止める。


「フィルムくんに何してんのさ!」


 フィルと戦っていたリースがこっちに向かってくる。

 その足をフィルが掴み引き戻す。

 一瞬の安堵。だがその時間が完全に命取りだった、地面で何かが破裂した音。

 その炸裂音とほぼ同時に俺の腹にフィルムの足がめり込む。

 魔法を纏う一撃に、俺は後ろにあった木にぶつかり大きく揺らす。


「これでまずお前から逮捕だ」


 熱い、服には蹴り跡と思わしき焦げ跡が残る。

 フィルムは今の一撃で安心し、こちらに歩いて向かってくる。


「水よ、龍よ、水の化身よ、我の命に従い顕現せよ、水の龍アクアドラゴン」


 もの凄く痛いけど、距離が離れてよかった。なにせこうして魔法の発動に必要な時間を稼げた。

 あの場でやられていたら確実に捕まっていた。

 水の龍はフィルムに一直線に向かうが、突如現れた壁に遮られる。


「私がいるのを忘れていませんか?」


「フィルグラム、それはこっちのセリフだ」


 次の瞬間にフィルムは土に覆われる。

 そしてフィルムが覆われているうちにフィルグラムに駆け寄り、その手を掴む。


「盗人では警邏を捕まえても意味はありませんよ」


「知ってる。だからこうするんだよ」


 フィルグラムを場外まで投げ飛ばす。


「場外で失格、気づいていましたか? ってあれ、結構高いです!」


 諦めた様子のフィルグラムは場外に落ちていく。

 たぶん神様が何とかするだろう。


「卑怯な手を使いやがって!!」


 激怒したらしいフィルムは、覆う土を全部壊し出てくる。


「全員一時撤退!」


 その声にもう一つ声が重なる。


「ルリーラを確保」


 低い声で手錠の掛かったルリーラを持ち上げる。


「よし、どうするクォルテ・ロックス。これでも撤退するか?」


「これはゲームだからな、劣勢なら即離脱するに決まってるだろ。急げ逃げるぞ」


 その言葉にフィルムは、怒り心頭の様子でこちらに叫ぶ。


「仲間を置いて逃げるつもりか! 見損なったぞクォルテ・ロックス!」


 その怒声を聞き作戦の成功を確信する。

 やっぱりそういうタイプだよな、お前は。


「よし、距離を取ったら休憩して合図まで待つぞ」


 二人が頷いたのを確認し、俺達は森に身を隠す。


『始まって早々、驚きの展開です! 一人が逮捕、もう一人は場外で退場! 今のは良いのでしょうか? えっと、ありです。場外に出た人だけが失格、退場です! これは今大会波乱の幕開けと言えるのではないでしょうか!』


 実況のアナウンスを聞きながら、それなりに十分な距離を離れ一息つく。


「合図を待つっていったけど、本当にできるの? 嫌がらせとかあるんじゃないの?」


「フィルの心配は当然だが、俺達を負かしたいならその辺は気にしなくてもいいと思ってる」


「勝ちたいなら、それこそ色々と妨害があるんじゃないの?」


「それはターゲットを探しながら話すよ。それじゃあ移動しよう」


 俺達は改めて移動を開始する。

 森がメインのステージだと、探し物も難しい。


「オレイカは探索の魔法使えるか?」


「得意じゃないけど、それなりには」


「じゃあなるべく広い範囲でかけ続けてくれ、戦闘の時は俺とフィルがやるから、探索だけに集中してくれ」


「わかった。地よ、我が領域の異物を見つけよ、レーダー」


 一瞬だけ、何かが俺の体をすり抜ける不快感は、いつ浴びても慣れない。


「それで、いい加減教えてよ、ご主人」


「ああ、大した理由じゃない。ガリクラは俺達に敗北感を与えたいんだ。例えば負けたら死ぬなんでもありの殺し合いなら嫌がらせも十分に考えられるけど、これは死なないし規則のあるゲーム。そんな

ゲームで、自分が作ったルールすら破って俺達が負けても、俺が負けを認めないのはガリクラも知っている。だから嫌がらせもささやかな精々さっきのスタート地点を教えるくらいだ」


「ルール内で勝たないといけないのはわかったけど……、今回のはルール違反じゃないんだし」


「大丈夫だ、なにせこれは向こうも使う予定があったことだからな」


「つまり、未必の故意ってことだね、王様」


「そう、必ず成功する必要がない嫌がらせの積み重ね、それがわかっていれば一つずつその嫌がらせを回避すれば……」


「ご主人、どうしたの?」


 ターゲットは三つ、嫌がらせ、俺達に負けを認めさせる。


「オレイカ、普段はこの大会ってどんな地形が多いんだ?」


「普段は鉱山とか、平地とかだよ」


「もしかして今回みたいな森がステージって珍しかったりするか?」


「そう言われればそうかも、普段はあっても木箱とか土の山とかだね」


 やっぱりか、そうなるとターゲットは俺達の近くにあったわけだ。


『おおっと、ここでルリーラ選手がフィルム組に掴まり牢屋に入れられた』


「スタート地点に戻るぞ。オレイカ身体強化をみんなに、フィルはオレイカを背負ってくれとにかく急ぎたい」


 二人の準備が終わり、俺達は急いできた道を戻る。

 なるべく、ルリーラの合図が来る前にターゲットを手に入れたい。

 そして全力でスタート地点に生えていた一際大きな木にたどり着く。


「ここに何があるの?」


「オレイカ、この木にターゲットがあるはずだ。探してくれ」


「うん、わかった。地よ、この大樹に眠りし宝を探せ、レーダー」


 必ずここだ。

 最初は、フィルム達を向かわせるため目立つここにしたのかと思ったけどそれだけじゃない。

 スタート地点にターゲットがあったにも関わらず見つけられなかった。そう思わせたかっただけだ。


「あったよ、天辺付近に何かある」


「じゃあ、あたしが行ってくるね」


 俺が声かける間もないまま、フィルは魔法を使い空を駆けていく。


「あれどうやってるの? 空中を駆けあがってるけど」


「風の魔法で空気を固めてそれを蹴ってる。さっきの戦闘でも使ってたぞ」


「不規則な動きをしてるのは、そういう理由だったんだ」


「あったよ、これだよね」


 渡されたのは手のひらサイズの土でできた人形。


『おお、今大会最初にターゲットを手にしたのは、クォルテ組だ! 檻に入れらている、ルリーラ選手の無念を果たす様にターゲットを手に入れた!!』


 俺が人形を手にしたタイミングで実況がアナウンスをし、それに歓声が上がる。


 そしてその歓声を打ち破るのは鈍い音。

 空を見上げると黒い鉄の塊が打ち上げられている。

 一発上がるとすぐに二発目も打ちあがる。


『なんということでしょうか、前代未聞の出来事が起こっています。檻の天井部分が次々と宙を舞う! あの小さい身体のどこにこれほどの力があるのか!!』


「よし、合図だ。行くぞ」


 俺達はフィルム組を倒すために走り出す。

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