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生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。  作者: 柚木
機械の国 シェルノキュリ連合国
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首都 ガルベリウス その二

「後は見て回りたいところある?」


 闘技場での出来事を消化できていない俺は考えられないので、後ろにいる全員に目を向ける。

 それを受けミールが手を挙げる。


「私は機械を作っているところが見たいです」


「じゃあ、家の工房を見せてあげよう」


 そう言って真直ぐ進みながらオレイカの話題になる。


「オレイカは何を作っているんだ?」


「この耳と尻尾」


「それは知ってる、他の機械だよ」


「他の物ね……」


 オレイカはしばらく考え始める。

 もしかしてそんなに種類は作っていないのか?

 話を聞いた限り耳と尻尾に心血を注いでいるってことか。

 そう納得しかけるとオレイカにはとんでもない発言をした。


「あの城みたいな工場と機械人形の手足、それを応用して魔力で走る新しい車かな」


「そうか」


 結構多岐に亘って仕事をしていた、建築に部品製造それに開発。

 それだけでも凄いがこの街で一番大きな工場の建設……。

 天才という自称は何も間違っていないようだった。


「これから向かうのはあの作業場、散らかってるから無暗に触らないようにねセルクちゃん」


「はい」


 セルクはサラの背中で元気に返事をする。


「魔力で走る車って機械馬の事じゃないのか?」


 手綱から魔力を流して走らせる機械馬がそれにあたるんじゃないか?


「それはそれで馬車を操舵する技術が必要でしょ?」


「まあな」


 動くのはあくまで馬だ。つまり機械馬も馬と似せて作らせているから馬を操る技術は必要だ。


「そうじゃなくて魔力があれば自由に動ける車を作ってるの」


 どうもいまいちピンとこない。

 伝わっていないことは向こうにも伝わったらしいが、オレイカ自身も構想だけしかできていないらしく頭を悩ませている。


「それはやっぱり工房についてから説明するよ、試作品とかあるし」


 新しいことの説明はやはり難しいらしくひとまず話は終了となった。


「そこにいるのはもしかしてルリーラじゃないのか?」


 オレイカの工房に向かう途中にまた声をかけられた。

 しかもオレイカにではなくルリーラにかけられている。


「本当に小さいんだな」


 知ってるのかとルリーラを見るが首を横に振った。

 当然しらないか。俺が知らないのにルリーラが知っているという状況がまず特殊だしな。


「そっちの人はもしかしてクォルテ・ロックスさんかい?」


「そうですけど」


 俺の事も知っているらしいが俺には見覚えが一切ない。

 長身で体もデカい、暗めの茶色髪を全て後ろに流してい。そして清々しいほどに整った顔つき、こんな目立つ外見の人間を忘れはしないよな。


「すまないがどこかで会ったか?」


 いくら考えても出てこないため仕方なく直接聞いてみることにした。

 すると男性は思い出したように頷いて自己紹介をしてくれた。


「俺はゲイル・モルガナ。安心してくれ俺とは初対面だ」


「それじゃあなんで俺の名前だけじゃなくルリーラの名前まで」


「ウォルクスハルクの武道大会で、試合を見させてもらった」


「そういうことか」


 仮にもルリーラはその大会の優勝者、俺は大会前のエキシビジョン。

 名前も紹介されているし俺達を知っていて、俺達が知らないのもうなずける。


「そっちの女性はもしかしてサレッドクイン・ヴィルクードさんかい?」


「ああそうだ」


 気づいてもらえたことが嬉しかったのか顔を横に向けぶっきらぼうな態度をとる。


「残念だったな。落ち込むなよあの時はこの二人が強かっただけだ、次に戦って負けると決まっているわけじゃないんだからな」


「あっ、ありがとうございます」


 サラは不意な言葉に戸惑いながらも丁寧に頭を下げる。

 ただ残念だったなや惜しかったなんてそんな慰めではなく次は負けないように頑張れという確かな応援に、サラの口元がわずかに緩んだ気がした。


「それであんたらが何の用なんだ?」


「観光客だよ」


「今週はお前の番だったが負けたのか?」


「負けた……」


「そうか負けたか、その耳と尻尾もまだまだだな」


「ちがっ、違うし! こいつらが強かっただけだもん」


 もん? 妙に子供っぽい言葉に頬が仄かな朱色に変わる。

 どこか色っぽい雰囲気を感じるし、そういう関係なんだろうか。


「それにまだ改良中だから、そんな状態でアリルドさんに勝った人に勝てるわけないじゃん!」


「アリルドさんに勝ったのか、二人とも?」


 二人の会話をほのぼのと見つめていると、急に肩を掴まれてしまい咄嗟に頷く。


「そうなのか、強いとは思っていたがそれほどとは知らなかったぞ」


「一人で勝ったわけじゃないんで」


 肩を掴む力が強く話してもらえるようにそんなことを言うが、まるでそんなのは関係ないとより力が強くなる。


「何人で勝ったんだ?」


「三人」


「一人はルリーラだろ? もう一人はサレッドクインさんか?」


「僕じゃない、そっちの色素の薄い女の子」


「君か、名前は?」


「アルシェです」


「アルシェも凄いのか!」


 嬉しそうに大声で笑い俺達三人をあっという間にまとめ抱きしめ始める。

 苦しい。

 そう思っているのは俺だけじゃないらしくルリーラとアルシェも迷惑そうな顔をしている。


「ダメっ!」


 そう言って俺達の元に最も小さいセルクが寄ってくる。


「パパたちが困ってるよ」


「パパ?」


 ゲイルは俺達を全員見渡して納得する。


「クォルテさんとルリーラは結婚していたのか」


「してないからな」


「子供は良い物だ。俺もいつか欲しいものだ」


 そういうゲイルを熱い視線でオレイカが見つめている。

 これは片思いって奴だろうな、確かにゲイルは好青年みたいだし。


「その内ゲイルにもできると思うぞ」


「一児の父親としての予言か?」


「セルクは預かってる子供だ、それにこの年の子供がいるように見えるか?」


 そう言うと改めて俺の顔をじっくりと見てルリーラの顔もまじまじと見つめる。


「見えないな」


「もうゲイルはいい加減にして! これからみんなを工房に連れて行くんだから」


 ルリーラとの距離が近いのが嫌だったのか、オレイカはゲイルを無理矢理に女性陣から遠ざける。


「そうだな、それじゃあ今日の夜は難しいな、明日の夜は久しぶりにオレイカの工房に顔出しに行く」


「へっ?」


「その時に改めて話そうな」


 爽やかな笑顔でそのまま立ち去るゲイルの姿をオレイカはずっと見つめていた。

 そして見つめて数分未だに呆然としているオレイカに声をかける。


「そろそろ行かないか?」


「ひゃいっ!」


 どれだけ自分の世界に潜り込んでいたのか声をかけただけで耳と尻尾が直立してしまった。


「それでオレイカはゲイルが好きなのか?」


 それが事実なら明日は適当な理由を付けて二人きりにさせようと思い、何となく聞いてみた。


「にゃっ!? にゃんで、いやなんで知ってるの? 魔法? それとも読心術?」


「今の見れば誰でもわかると思うよ」


 ルリーラの言葉にみんなが頷いてオレイカの顔はみるみる真っ赤に染まる。


「本当に?」


 顔どころか全身が真っ赤に染まったオレイカは可哀想なほどにテンパっている。

 手をわたわたと振ってみたり顔に触れてみたりととにかく落ち着きがない。


「まあ俺達は何かを言ったりはしないから安心しろ」


「もちろんです。なので恋する乙女として同士を応援させて下さい!」


 急にアルシェが大声を上げてオレイカの手を握る。

 何かがアルシェの琴線に触れたらしい。その目には火の魔法使いらしく炎が宿っているような気もする。


「恋愛事なら応援するしかないよ!」


 間延びした声でフィルが更に手を重ねる。


「そうですね、あの男にあなたがお似合いだと思います!」


 なぜかミールまでもが乗り気になったようで更に手を重ねる。

 そんな光景を見ながら残りのメンバーを見るがルリーラ、サラ、セルクはその光景をただ眺めるだけだ。


「あっちは盛り上がってるけどいいのか?」


「他人の恋愛はあんまり興味ないかな」


「僕も他人の恋愛に手を貸している暇もないし」


 セルクはわからないといった顔だが他の二人は中々にドライだな。


「クォルテさん、早く行きますよ! これから至急オレイカさんの工房に向かいますので!」


「何があったんだ?」


「話すのは後です、急いでください」


 俺の手をアルシェの白く細い手が掴む。


「すまんが事情が読めないんだが」


 何がどうなればアルシェがこんなに力強く俺の手を引くのか教えてもらいたい。


「あたし達乙女の恋愛応援し隊はこれから重要な使命があるんだよ、ご主人!」


 ものすごく張り切る二人にミールまでもがテンションを高めているようだ。


「是が否にもあの女にはあの男と結婚してもらわないと」


 ミールだけは何か別の目的がありそうな気はする。

 それにしても乙女の恋愛応援し隊ってどんなネーミングなんだろう。

 なんの捻りもない名前に寧ろ笑いがこみあげてくる。


「さあさあ急いで」


 急かされながら俺達は街の観光もそこそこに城の前に立っている。

 機械の国らしいのか鉄でできて城、アトゼクスでも通れそうな巨大な門にたどり着く。


「お疲れ様です」


 敬礼をする門番を無視してオレイカは門に近づき魔力を流し込むと、大きな音を立て門が開く。

 門を超え再び閉まると門を囲む掘りに橋が架かる。


「オレイカさんの工房はどれ?」


「あっち」


 そう言うとものすごい速度で工房に向かう。

 城の中にある少し小さめな建物が建っておりオレイカはその小さな建物に指を指す。

 窓から中をのぞくとただの物置といった状態に乙女の恋愛応援し隊の面々が首をかしげる。


「散らかってませんよ」


「違う、ここは入口」


 そして部屋の中央に手を置くと部屋に魔力が流れ込む、そして外の扉と同じ方法で地下への入り口が開く。


「この下だよ」


 何があるのかと天才を自称するオレイカ・ガルベリウスの工房に足を踏み入れることになった。

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