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生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。  作者: 柚木
機械の国 シェルノキュリ連合国
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首都 ガルベリウス その一

「結構急だから気をつけてね」


 持ち上げた扉の下にあったのは石造りの階段。

 階段を数段降りるとすぐに広い空間があった。

 踊り場と言えるほどに広く平らな場所の先にはまだ下に続く階段が続いている。


「そこで止まってて」


 そう言われ七人全員がその踊り場に集まるが、ふとここが落とし穴で俺達は誘い込まれたんじゃないだろうか。とそんな風に考えてしまう。

 嫌な想像に駆られていると鉄の扉が閉まる大きな音が響き体が反応してしまう。

 闇の空間が俺達を包み余計に不安が膨らんでいく。


「暗いですね、灯り点けましょうか?」


「大丈夫、必要ないし」


 薄っすらとオレイカの気配を追うとどうやら壁沿いを歩いているようだ。


「あった」


 魔力の反応がした瞬間に俺の不安は吹き飛んだ。

 足元を照らす様に魔力が走り道標の様に光り輝く。

 俺達は言葉を失った。

 魔力の輝きが一本の線となり暗闇を照らす。

 アインズでの妖精の輝きも自由で素晴らしいがこの規則正しく光る輝きも素晴らしい。


「これって、妖精か?」


「妖精じゃなくて純粋な魔力。溜めている魔力にこのボタンから魔力を流して刺激を与えて起動させてる」


「そういう使い方もあるんだな」


 この装置を人体に見立てているのか。

 最初の魔力で魔力に流れを与えて使用する。


「このくらいで驚いてたら街についたらショック死するね」


 誇らしげに宣言しながらオレイカは階段を下りていく。

 俺達も続いて下りていく。


「ねえオレイカのその耳と尻尾は本物?」


「ルリーラ少しは遠慮しろよ」


「いいよ別に隠すことじゃないし」


 そうやって笑える辺り本当に別に気にする必要はないみたいだ。


「そういえば神様達もそんな感じでしたね」


「そうだね、そこから着想したから」


「それは魔力が多くてっていうわけじゃないんですか?」


「そうだよ、これは狼の耳と尻尾」


 ピコピコと動かしながら俺達の質問に答える。


「セルクといっ――」


 何か不穏なことを言いかけたセルクの口をフィルが塞ぐ。


「どうかしたの?」


「いや、それでその耳と尻尾のことだが」


 こっちの質問で疑問を断ち切る。

 子供の言ったことと流してくれるらしいオレイカは話を続ける。


「これはそうだな一言で言えば強くなるための装備って感じかな」


「どういう意味だ?」


「神様達が強いのってあの人と違う部分なんじゃないかと思ってね」


「強いからああいうのが必要なんだろ?」


 あれは溢れた魔力を必要以上に溢れさせないためにあるものだ。火の神はそう言う風に言っていた。


「そう、神々の馬鹿げた力の根源はその魔力保管庫なんだよ!」


 急にオレイカは顔を近づける。

 改めて見ると綺麗な顔をしている。

 幼さから生まれる活発さに色素の薄い儚さが混在している絵画に似た容姿に思わず照れてしまう。

 しかしオレイカはそんなことは気に留めずに話を続けていく。


「神々が強い理由はそれこそ色々あるだろうけど、人外の姿をその身に宿しているゆえの魔力量にあると思うんだ!」


 そんな絵画の様な少女の言葉はどんどん熱が籠っていく。


「それを補うのがこの耳と尻尾なんだよ! 精霊結晶を使って魔力の蓄積をしていつでも使えるようにする」


「その使い方は考えてなかったな」


 なるほど魔力切れで起こる不利を無くすことは確かに重要だ。

 前に魔力が切れた時は大変だった。動くのにしばらくかかる上に魔力の補充をしないとどうしようもなくなってしまう。

 平時に魔力を精霊結晶に溜めておいて戦闘時にその魔力を使う。


「それならこんな風にアクセサリーじゃダメなのか?」


 自分の持っている指輪を見せる。

 ネアンの精霊結晶から作った物だ質も問題はない。


「戦闘では見た目の有利もあるんだよ」


「なるほどな」


 俺達が考えたように色素の薄さに合わせて動物の装飾をすることで、神と同等の魔力を持っていると相手を威嚇するのか。


「聞けば聞くほど考えられているな」


「そりゃああたしは天才だから」


 決して小さくはない胸を張りながら天才を誇る姿が少しだけルリーラと重なる。


「クォルテ」


 盛り上がってきた時にルリーラに服を引かれる。


「どうし、た……」


 振り向くと不機嫌そうにこちらを見る十二の瞳が俺を見ていた。


「えっとごめん」


「わかればいい」


 確かにみんなにはつまらない話だろうな。


「兄さんはこういうタイプが好みなんでしょうか?」


 空気に亀裂が入った幻聴が聞こえた気がした。

 不機嫌そうな瞳は答えを急かすような目に変わる。

 つまらないではなくしっとからの目だったらしい。


「王様はあたしが好きなのか?」


 空気が固まる。

 何の悪意もない純粋な疑問を告げるオレイカ、俺に好意を寄せている五人の視線はより強くなる。


「えっと」


「あたしはいいぞ、理論ばかり追っているから恋愛ってのには興味がある」


 その発言に全員が俺とオレイカの間に割って入ってくる。

 顔は見えないがおそらく睨んでいるんだろうな。

 全員が背中を向けているってことは俺に見せられないほどの顔をしていることだろう。


「ルリーラでいいんだよね」


「なに?」


 棘のある鋭い言葉をものともせずに言葉を続ける。


「アトゼクスはどうだった?」


「えっ?」


 予想外の言葉を投げられたルリーラは間の抜けた声を発した。


「強かった?」


「うん。凄い強くて楽しかったよ」


「でもルリーラに負けちゃったんだよな」


「動きが単調だったし」


「そこが課題なの、硬さとか力とかは?」


「凄く強かった、手が痛いし」


「そうなると性能としては悪くないのか、やっぱり動きか」


 矢継ぎ早の質問にルリーラが押されてしまう。

 そして勢いに負け、棘が抜けルリーラの対応は柔らかくなる。


「ご主人、この人って」


「天才と馬鹿は紙一重って言うしな」


 通りで俺と話が合うはずだ。

 研究だけを目的にして生きている。

 俺がルリーラと出会わなければこうなったであろう俺のもう一つの可能性なんだ。


「あっと、そっちは駄目だよ」


 階段が二手に分かれておりオレイカが進んだ方向が気になり、そっちを見に行こうとするとオレイカが慌てて止めに入った。

 こういう風に止められると、この階段の先に何があるのか気になってしまう。


「こっちはもしかして城とかがあるのか?」


「ないよ、そっちはグシャの一族がいる方向だから。ガルベリウスがいるのはこっちの方」


 なるほど。それで止められたのか。

 こっちがアリルドが生まれた街か。


「本当に仲が悪いんだな」


「水と油?」


 戦闘と生活に特化した研究を続ける両者の溝は深そうだ。

 そうでないとこうまでして二分にはしないだろう。


「本当にその通りだね。着いたよ、ここがあたしたちの街ガルベリウス」


「すげえ」


 きっと俺はとてつもなく間抜けな顔をしていることだろう。

 それほどに圧倒される光景だった。

 石や木ではない鉄の家、街灯には階段の明かりに使われている物が使用されているらしく火よりも煌々と輝いている。

 アリルド国と同じようにここから中心部に向かい建物が高くなり真ん中には一際巨大な建造物。


 そしてこの街を覆うように煙が立ち上る。

 街には笑い声や言い合う声、それに金属同士をぶつける高い音に聞きなれない蒸気のような音まで聞こえる。

 他の国家とは全然違う職人の街といった様子だった。


「ここが、機械の国ですか」


 ミールまでが口を開けたまま周りを見渡している。

 全員が全員初めての光景に心を奪われてしまう。


「そこまで驚いてくれると嬉しいね」


「すまない、本当に圧倒的で驚いてた」


 そう言いながらも俺は未だに周りを見渡している。

 魔法で結合しているのか継ぎ目のない家、この石の道もどうやっているのか凹凸がないほどに平らだ。

 アリルド国の石畳を思い出す、歩きにくく馬車も走りにくい石畳はアリルドがここから得た知識で作ったのか。


「おうオレイカなんだその後ろの連中は」


 野太い声が聞こえ、そちらを見る。


「なんだこれ」


 そこに居たのは大型の鉄の塊に乗った男性だった。

 腕と足だと思われる鉄の塊は、人形と言うには余りに異形で頭のある位置に人が収まっている。

 さらに驚くべきはその鉄の塊が持っているのは大量の資源だった、鉄や石などの重量のあるものを中心に持ち上げていた。


「アリルドさんに勝った、現アリルド国の王様ご一行方だよ」


「そうなのか、お前達は強いんだな。まあゆっくりしていってくれ」


 そう言うと鉄の塊は路地へ入っていく。


「今のは?」


「今のは運搬用の機械だね、魔力で歯車を動かしてあの手足を動かしてるの」


「あれが機械」


 話を聞くだけなら城門などに使われる当たり前の技術だ。

 それであんなのを作れるのか。

 自分にはない画期的な知識がこの国には溢れている。


「あれも括りはアトゼクスと同じで機械人形だよ」


「ならあれも強いの?」


「あれは運搬用だから、強いのが見たい?」


「見たい!」


 ルリーラの一言で俺達が向かったのは闘技場のような場所だった。


「闘技場のようだが?」


 火の国の総帥の娘としてはやはり気になるようで質問をする。


「火の国には行ったことあるの?」


「火の国の総帥が私の父だ」


「なるほどね。でもちょっと違うよここは強さを決めるための場所じゃなくてどれくらい動けるかの場所でもあるから、闘技場というよりも実験場かな」


 中に入り客席の様な場所に向かう。

 闘技場と変わらない雰囲気だが中央の舞台には一体の機械人形と一人の人間がいた。


「あれは試運転だね」


「動いてないけど?」


 フィルが首をかしげる。

 確かにさっきから一歩も動いていない。


「失敗かな、魔力が全然流れてないし」


「そうですね、それと少し危ないですね」


 アルシェが不安を口にする、俺達にはわからない何かが二人には見えているようだ。


「へえ、流石プリズマだ。魔力感知はお手の物だね」


「それよりも止めなくていいのですか?」


「この規模なら平気、死なない」


「死なないって何があるんだよ」


 不穏な言葉に思わず話に割って入る。


「あのままだと爆発します」


 アルシェの言葉に俺は慌ててしまう。


「おい、いいのか止めなくて」


「だから平気。死なないし、治療も問題ない」


「冷たいんだな」


 爆発するのをただ見ているだけのオレイカにそう言い放つ。


「失敗は身に刻め。それがこの国の理念だよ。失敗がなぜ起きたのか、教えられることはいつか脳から離れいつか大惨事を起こす。それならその失敗が起こるとどういうことになるのかを身をもって知っておくべき」


 後の大惨事よりも今の些事の方がましってことか。

 わからなくはないがやっぱり見ていたい気分じゃないよな。


「そろそろ行こう」


「そうだね、失敗を見ていてもいい気分じゃないのは確かだ」


 俺達が闘技場を出ると爆発音が聞こえた。

 皆が一様に後ろを振り返る。


「言っておくけど、中の人間はカプセルっていう鉄の防護壁の中にいるからあの程度なら無傷だよ」


「先に言えよ、それ……」


 終始オレイカに主導権を握られたまま街の探索は続く。

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