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生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。  作者: 柚木
機械の国 シェルノキュリ連合国
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天才少女 オレイカ・ガルベリウス

「ごめんクォルテ、さっきの逃がした。ってどうしたの?」


「凄い温度差ですね」


 合流した二人は現状を見て冷静に答えてくれる。

 そうだよなやっぱり温度差があるよな。

 向こうは本気でこっちの気は抜けてしまっている。

 強敵を前にしていい状態じゃない。


「何かあったの?」


 よくわからない空気にルリーラまで困惑しているようだ。


「それで全員ね。あんたら全員あたしシェルノキュリ連合国の門番オレイカ・ガルベリウスと、最強の機械人形アトゼクスが完膚なきまでに叩き潰してあげるわ!!」


「…………」


 俺達は全てを理解した。

 こいつは馬鹿だ。

 聞いてもいない自己紹介。それだけならまだしもシェルノキュリ連合国と名乗ってしまっている。

 それを隠して入口を守るのが仕事だろうに、全てを暴露してしまった。


 色々と残念なオレイカ・ガルベリウスはこっちの様子に気が付いた。


「さっきからテンション低いけど?」


「いえ、オレイカとやら、あなたが門番ってことでいいのか?」


「なんであたしの名前をしってるの!? しかも門番であることまで!」


「さっき自分で名乗ったよね」


「そうか、あなたは心を読む魔法を使えるのね。油断してしまったわ」


 今までにあったことのないタイプの人間だ。

 もういいや、さっさと要件を済ませてしまおう。


「オレイカ、君が門番ならこれを渡したいんだが」


 俺はアリルドから預かった手紙を取り出す。


「そんな初歩的な手は食わないの、天才と称されるこのオレイカ・ガルベリウスにそんな罠が効くと本当に思ってるの?」


 駄目だこいつ自分の情報は聞いてもいないのに答えるのに人のことは一切聞く耳持たない。

 おそらくこの手紙に爆発物でも仕掛けていると思っているのだろう。

 こうなられるともうお手上げになってしまう。


「罠がバレて言葉を失ったって所ね」


 あまりの馬鹿さ加減に開いた口が塞がらないだけです。


「でもチャンスを上げる、私達最強タッグに勝つことが出来たらシェルノキュリ連合国に入れてあげるわ!!」


 結局そうなるのか……。

 仕方なくこちらも攻撃の準備をする。


「やる気ね。でもガルベリウス家が生んだ史上最高の天才と、その一族が千年以上かけた究極の機械人形アトゼクスに勝てると思わないようにね!」


 耳と尻尾をピンと立たせあちらも戦闘準備は完了しているようだ。

 旅に出て二年余り経つがこれほどに無駄な争いがあっただろうか。


「アトゼクス!」


 オレイカが声を上げるとアトゼクスは二本の腕を組み大きく振り上げる。

 そしてその固めた拳を振り下ろす。


「アルシェお願い」


「わかった」


 ルリーラにアルシェが身体強化をかけると、ルリーラはこともあろうかアトゼクスの攻撃を受ける構えを取る。


「待てルリーラ!」


 俺の言葉よりも早くルリーラにアトゼクスの一撃が振り下ろされる。

 地面が隆起するほどの一撃は今回は隆起することなく大きな穴が開くだけで終わった。


「まず一人ね」


「炎よ、熱よ、敵を解かせ、フレイム」


 アルシェが放つ巨大な炎は真直ぐにアトゼクスを狙う。

 単調な攻撃では避けられると思ったが、なぜかアトゼクスは動かない。


「避けなさいアトゼクス」


 オレイカの命令に背きなぜかアトゼクスは動かない。

 それどころかアトゼクスの腕に炎が触れ片腕が溶ける。さらに反対の腕も突然宙を舞う。

 何が起きたのかわからない中、大きく開いた穴から声が聞こえる。


「成功だね、アルシェ」


「本当に耐えられるかひやひやしたけどね」


「えっ?」


 無傷のルリーラが穴の開いた地面から跳び出してくる。

 土に汚れはしているがルリーラはさっきの攻撃で傷ついてはいなかった。


 さっき腕を飛ばしたのはルリーラか。

 そこで今の出来事全てを理解した。


「何が起こったの?」


「ベルタとプリズマの二人に勝てると思うなよ、犬耳」


「オレイカさんだよ」


 さっきの攻防をしたとは思えないやり取りに気が抜けてしまうけどそれでもありえないと思った。

 プリズマの身体強化でベルタの身体能力がここまで上がるのか。

 あの巨大な鎧の動きを封じてしまうほどに強力な腕力。


「本気で行くよ、アトゼクス」


 空気が変わった。

 ふざけた空気が一気に引き締まる。

 オレイカの尻尾と耳に生える毛が一斉に逆立ち落ち着いた空気を纏う。


「地よ、仲間の腕を繋げ、アースリカバリー」


 見ると荒野の地面がアトゼクスの腕を飲み込むとアトゼクスの失われたはずの腕が生えてきた。


「地よ、檻よ、我が敵を捕らえよ、アースケージ」


 呪文とともに地面が揺れ咄嗟に逃げると、今いた場所に地面から作られた檻が生まれる。

 早い、それに精密だ。

 天才少女と言うのはあながち嘘では無いんだろう。


「ルリーラとアルシェはアトゼクスを頼む他のみんなでオレイカを倒すぞ」


 そう宣言したのはいいがアトゼクスの姿がどこかに消えていた。

 また消えた……。制御と攻撃を同時にこなしてるのか?


「地よ、棘よ、我が敵を穿て、アーススパイク」


 考えている最中にも地面から生える棘は俺達を狙い迫ってくる。

 一瞬の動揺まで読んでの連続魔法に後手に回ってしまう。

 それにやっぱり魔力量は多いか、あの精度と量を連続となると流石に厄介だ。

 それにアトゼクスの姿も隠されたままだ。


「サレッドクイン参る」


 身体強化をかけたサラは一足飛びでオレイカに迫る。

 攻撃が入る寸前でアトゼクスの腕だけが現れる。

 関係なくアトゼクスごと両断しようとしたが、サラの居合は無念にも半分ほどで動きが止まってしまう。


「ちっ」


 切れないと判断し、すぐにこちらに戻ってくる。


「行くよ、アトゼクス」


 アトゼクスは音も呪文もなく俺達の前に現る。

 この人形が厄介だ。何もない所から一瞬で現れたり消えたりするせいで攻め切れない。

 無視できればいいが、無視できるほど弱くない。


「今度こそ!」


 叫ぶルリーラはサラよりも早くアトゼクスに近づき拳を振りぬく。

 しかしすでにそこにアトゼクスの姿はなくなっていた。


「見つけた!」


「なっ!?」


 何が起こっているのかわからないがルリーラは空を掴みオレイカはそれに驚いている。

 そしてそれが何故かはすぐわかった。

 ルリーラの手からアトゼクスは姿を現す。

 大きさが変わっていたのか? それも目に見えないほどに小さくなっていた。

 大きさのインパクトに惑わされていたのか。


「これで終わりだ」


 すでに構えていたルリーラの一撃に巨大なアトゼクスは遠くへと飛んでいく。


「クォルテあのデカいのは任せて」


「任せた」


 種がわかればルリーラ以外に相手はできないのがわかる。

 おそらく俺達には見つけられないサイズだ。


「ルリーラ、ネアンを持って行け、魔力は溜めてあるから細切れにしてやれ」


「いい加減手が痛かったんだよね」


 笑いながら手を振るルリーラの拳は赤くなっていた。

 サラでも切れなかったところを見ると鉄よりも硬い何かか魔法で強化されているのだろう。


「すぐに倒してくるから」


「あんた達何者?」


「アリルド国の現王クォルテ・ロックス。それとその仲間だ」


「そう、王様なの」


「だから話を聞いてくれるか?」


 幾分か理性的になったオレイカに声をかける。

 聞く気は結局ないのか落ち着いた先の熱を失った冷たい目でこちらを見据える。


「地よ、人形よ、その身に命を宿し、我が傀儡となれ、アースパペット」


 地面から数えたくなくなるほどの土の人形が生まれる。


「地よ、武具よ、我が傀儡の道具となれ、アースアームパーティー」


 続けた連続魔法でそれぞれの人形が武器を持つ。

 物量で押す作戦に出たらしく、勝っていた部分をすぐに補った。


「行け」


「残念ながら、こちとら水魔法が使えるんだよ」


 魔力をただ水に変える魔法を発動する。

 流されると思っていた人形は流されずにその場でたたずんでいる。


「なんで?」


 その答えはすぐにわかった、黒光りする人形の表面は鉄か。

 人形を土ではなく鉄で覆い自ら守る。


「アルシェ、ライトランスだ」


「承知しました」


「炎よ、槍よ、無数の槍よ、我が宿敵を討て、フレイムランスパーティー」

「水よ、槍よ、無数の槍よ、我が宿敵を討て、ウォーターランスパーティー」


 二人同時の詠唱を開始する。


「ライトランス」


 輝く槍は全ての人形とオレイカ自体を目掛け放たれる。

 そして全ての槍は人形に当たり破壊される。


「嘘つきのくせにやるね」


「嘘つきって何のことだよ」


「アリルドの王はシェルノキュリ連合国でも最強のアリルド・グシャのはずだ!」


 こいつアリルドの事知っているのか。


「あの人が負けるはずはない!」


 こいつは俺達が自分の信じる存在を負かしたと嘘を吐いていると思っているのか。

 それを認めたくなく嘘を暴こうとしている。

 そういうことなら話は早い。


「なら、なおのことこれを見ろ。そのアリルドからの手紙だ」


 俺は封がされている側を見せる。

 アリルドの名前と世間で知られていないシェルノキュリ連合国の印。


「アリルドさんの文字!」


 急に耳が立ち上がり尻尾が左右に動き出す。

 本当に犬っぽいよなこいつ。

 俺から手紙を奪い取ると無防備に背中をこっちに向ける。


「アトゼクス!」


「結局やるのか?」


 またしても急に現れたアトゼクスはボロボロだった、片手と片足を失い体の所々にも傷を負っていた。


「またでっかいのが居なくなったんだけど」


 困惑した様子でルリーラが返ってきた。


「もう終わったらしいぞ」


「そうなの結構楽しかったよ」


「そりゃあよかった」


「本当にごめんなさい」


 手紙を読み終わったのかオレイカはこっちに向かって頭を下げる。

 本当に反省しているのは完全に伏せてしまっている耳と尻尾からはっきりと伝わってきた。


「まさか、本当にアリルドさんを倒した人がいるなんてしらなくて」


 急にしおらしくなったオレイカはアトゼクスの修復を終わり俺達の馬車に乗っている。

 なんでもここから少し離れたところに入口があるらしい。


「手紙を渡すだけだから中に入らなくてもよかったんだけどな」


「いえいえ、アリルドさんからも街を案内するようにってかかれてたから」


 ここまで柔順になられるとちょっと困るが、さっきまでよりは断然やりやすい。


「ねえねえ尻尾触ってもいい?」


「いいよ、ずっとあそこにいたから汚れてるけど」


「なら手入れする」


 ルリーラの失礼ともとれる言動をオレイカは快諾する。


「もふもふだ、もふもふ」


「アリルドは国から嫌われていたのか?」


「半分くらいからかな?」


 半々ね、なんとなく経緯がわかってきた気がするな。

 貴族の子息が家を出るのはそういうことだろう。


「強さを求める機械を作る人達と、生活を豊かにするための人達がいるから」


「やっぱりそういう感じか」


 それならグシャの一族は後者に属していたってことだろうな。

 それで家を飛び出して今の地位ってことか。


「オレイカ私も触ってもいい?」


 尻尾のモフモフを楽しむためにフィルまで参戦することになった。


「どうぞ」


「悪いな、無遠慮な連中で」


「話も聞かないで暴走したのはあたしだから」


 こうやって話を聞いていると、最初の時の方が素だったらしいな。ただ暴走してあそこまで人の話を聞かなかっただけで。


「着いたよ」


 その声に馬車を止める。


「ここから入るの」


 そう言って魔力を流すと荒野から扉がせり出してくる。

 凄い仕掛けだ。


「どうぞ、機械の国シェルノキュリ連合国へ」


 俺達は幻と言われる機械の国へ入国することになった。

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