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生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。  作者: 柚木
機械の国 シェルノキュリ連合国
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機械人形アトゼクス

「また出てきたな」


 繰り返し同じ映像を見せられているような既視感。

 右腕から肩、肩から頭部、頭部から左腕順番に姿を現し段差を登る様に真紅の鎧が全身を現す。


「セルクは馬車に残れ、アルシェとサラは馬車とセルクを守れ」


 二人は返事をし戦える準備をする。


「残りであれの対応をする」


 俺とルリーラ、フィルにミールが馬車から下りて大きな鎧に対峙する。

 赤い鎧は馬車とこちらを交互に見る。

 馬車から気を逸らさないとな。


「水よ、槍よ、敵を穿て、ウォーターランス」


 水の槍を一本生み出し鎧に向け放つ。

 放った水の槍は鎧を傷つけることなく弾かれ水に戻る。


「刺さらないね」


「ああ」


 当然ながら巨大な鎧にこんなものが刺さるとは思っていない。

 あくまでこれは攻撃の意思はこっちにあるぞという意思表示。

 これでこちらに気が向いてくれれば楽なんだけどどう出るか。


「こっちだぞ!」


 鎧はこっちを向いた、鎧の奥に輝く光がこちらをしっかりととらえる。

 あれが目でいいんだよな。


「フィル、攪乱させれるか?」


「あの巨体相手なら問題ないよ」


 フィルが宙を駆ける、魔法による身体強化と高速のまま行う方向転換に鎧の赤い光が追い切れていない。


「「水よ、龍よ、水の化身よ、わが敵を喰らい貪れ、その魂を地の底に送れ、災厄の名を背負いし者よ、我の命に従い顕現せよ、水の龍アクアドラゴン」」


 俺とミールによる二体の水の龍が左右から鎧を狙う。

 鎧は当然の様に両の手で水の龍の首元を掴む。

 そこも想定済みだ。

 水の龍は掴まれても水に戻ることはなく鎧の腕に巻き付く。


「行くぞ」


「はい」


「「水の龍よ、氷よ、敵の動きを止めよ、アイシクル」」


 関節部まで巻き付いた水の龍はそのまま氷へと姿を変えて鎧の両腕の動きを止める。

 フィルを目で追うことをやめ俺とミールの方を向く。


「いいのか、こっちだけ見て」


 次の瞬間に激しい衝突音と共に鎧の巨体は大きく揺れる。

 動き回るフィルの不意打ちを受けさらに視線を戻す。

 そして俺達の最強の一撃は鎧の視線に一度も捕らえられていない。


「思いっきりいくよ」


 ルリーラの拳は鎧を殴りつける。

 人と鉄のぶつかった音と思えないほどに大きく鈍く響く。

 衝撃を受け鎧はそのまま地面に倒れ込む。


「いけるぞ!」


 しかし次の瞬間には鎧が消えた。

 正に一瞬、あの巨大な鉄の塊が俺達の目の前から瞬く間に消えた。


「幻影の類でしょうか?」


「二度もか?」


 どれもしっかりとダメージを与えた感覚はあった。

 フィルとルリーラも同じ考えらしい。


「おっちゃんが門番がいるって言ってなかった?」


「なら消えないだろ」


 門番が消えるなんてまずありえない。消えてしまう門番は何の役にも立たないだろう。


「ご主人とりあえず馬車に戻ろうよ」


「そうだな」


 今起こった現象に首を傾げながら俺達は一度馬車に戻る。


「サレッドクインさんがこの先に気配があるって言ってますけど」


「そうなのか?」


「おそらく先ほど感じた視線と同じものだと思う」


 視線を感じたって奴か。

 そうなるとさっきの鎧だろうか? そうだとしたらさっきの赤い鎧は神と同じく瞬間移動したことになる。


「あの鎧とは違うよな?」


 あいつも視覚という意味では目を持っているようだったし、視線と言えなくもないが意思があるとは思えない。


「ああ、最初はそうかと思っていたが、今度のは気配だ。生きている人の気配と言えばわかりますか?」


「さっきの鎧は生きてはいないよな」


 生きた人間はあんな風に消えるわけがない。

 それよりも魔法で作られた人形と呼んだ方がしっくりくるか。

 そうなると、さっきのは魔法を解除されたということになるのか。


「この先に気配があるんだな?」


「はい」


「兄さん、こんなのの言うことを聞くんですか?」


「何もできないなら大人しくしていたらどうだ?」


「今はそんな場合じゃない」


 二人がいがみ合おうとしていたので仲裁に入り、今はサラの言うことを聞くことにする。


「アルシェとサラはそのまま操舵を続けてくれ、行先はその気配の場所」


 ミールとサラは舌打ちをし距離を取る。

 二人の仲裁に時間を割いているわけにもいかず馬車を進めさせる。


「あの鎧を動かしている奴がこの先にいると思われる。おそらくだがアルシェ並みに魔法が使えると思ってくれ」


「プリズマってことなの?」


「少なくとも色素が薄いのは確かだ」


 確かにあれほどのサイズの人形を作るなら白髪以上の魔力が必要だな。


「対人なら私よりフィルがいいよね」


「ああ、だからルリーラにはあの鎧の相手を頼む。辛いと思うが頑張ってくれ」


「わかった」


「兄さん、私は?」


 少しだけ考える。

 ミールはあまり戦闘向けではないがその分補助が上手い。

 それにこと戦闘に限ればミールよりもサラの方が慣れている。それに毒の魔法は人間に使えない。


「ミールはルリーラの援護、好きな魔法を使え、それとルリーラにはこれも渡しておく」


 神器の指輪をルリーラに渡す。

 水の魔法に対する無効化する水の神から授かったものだ。


「ルリーラにはこれを持たせるから思いっきりやってやれ」


「わかりました」


 二人を分けることでなんとか戦いやすくなってくれるはずだ。


「近づいてきたよ」


 突如ルリーラが進行方向を向く。

 敵の姿をルリーラが目視で発見したらしい。


「クォルテの言う通りみたいだけど、あれって」


「どうしたんだ?」


 ルリーラが目を細めしっかりと確かめようとしている。

 そして首をかしげ言葉にする。


「耳と尻尾が生えてるよ」


「はっ……?」


 ルリーラの言葉に間抜けな声を出してしまう。

 耳と尻尾? 何のことだ?


「えっ? なんで!?」


「どうしたっ! うおぉ!」


 アルシェは驚いたような声を上げ馬車は急停止した。

 急停止により衝撃荷台の全員が一斉に前を見るとそこには三度目の鎧の怪物が現れた。


「クォルテごめん」


 ルリーラは俺の肩を踏み台にして一直線に鎧目掛け突っ込んでいく。


「サラ、気配は近いか!?」


「えっ、ああ、近いぞ」


 近い。それなら行けるか。

 この鎧を倒しても終わらない、それならこれを操る奴を先に倒した方が早いのは明確だ。

 ルリーラとミールなら持ちこたえてくれる。

 その隙に残りで操作してるやつを倒しきるのが一番か。


「ミール下りろ、ルリーラと一緒にあれの足止めだ」


「は、はい!」


「サラ、気配の元を絶つそこまでアルシェを誘導! 馬車の事を気にしないで全力で進め!」


「「はい」」


 ミールが下りたのを確認し一直線に向かう。

 するとすぐに俺でも視認できる距離に人間がいるのが確認できた。


「水よ、鎖よ、彼の者を捕縛せよ、ウォーターチェーン」


「確認はしないの?」


「逃げられるよりはましだ」


 もし間違えても良いように攻撃ではなく捕縛の魔法を使った。

 水の鎖は人影に向かい飛んでいく。

 奇襲のつもりの魔法は、突如隆起した地面に邪魔をされ水に戻る。


 流石に防ぐよな。でもこれで相手に敵対の意思があるのはわかった。

 そうなれば全力でいける。


「フィル、行けるか?」


「大丈夫」


 馬車から飛び出し空を蹴りながら一直線に敵に向かう。

 一人猛スピードで空中を移動するフィルに人影は飛び道具を用いてフィルに攻撃をする。


「アルシェ、ライトランスだ」


「はい」


「炎よ、槍よ、無数の槍よ、我が宿敵を討て、フレイムランスパーティー」

「水よ、槍よ、無数の槍よ、我が宿敵を討て、ウォーターランスパーティー」


 炎の槍を水の槍が覆う。


「ライトランス」


 輝く槍を全て的に向けて放つ。

 またしても水の鎖を塞いだ土の壁を作るが、触れた先から爆破をする輝く槍に通じない。

 一発二発と壁に触れるたびに破裂し、土の壁に風穴を開け人影に当たったはずだ。


「馬車から下りる、セルクは大人しくろ」


「はい」


 馬車から下りるとフィルがすぐに戻ってくる。


「どうしたんだ?」


「ちょっと困ってるんだよね」


 報告に戻ってきたはずのフィルが言葉に詰まる。


「見て貰えばわかるんだけど」


 言われてついて行くと確かに言葉に詰まった。

 そこには鉄の半球の物体があった。

 所々凹みが合るのはフィルが何発か殴ったのだろう。


「こうなるとあたしには壊せなくて」


 鉄を凹ませるのも十分に凄いがやはり割るまでは至りはしない。

 こうなるとアルシェの魔法で溶かすことはできるかもしれないが中の人間は蒸し焼きになってしまう。

 それは好ましくない、こいつが門番だとしたら殺して入るのは違うだろう。

 そうなってしまうとルリーラかアリルドじゃないと開けられないだろう。


「僕にやらせてくれ」


 唸る俺達に提案を持ち掛けたのはサラだった。


「できるのか?」


「僕は剣士だ、それに耐久ではなく切れ味を求めたのが刀だ」


 そう言って刀に手を添え呪文を唱え始める。


「炎よ、我が刀に宿れ、フレイム」


 魔力が刀に集まるのがわかる。

 赤く熱を持つ刀を鞘にしまう。鞘も刀の様に熱を帯び始める。


「殺すんじゃないぞ」


「わかっている。この鉄だけを切ればいいんだろう」


 呼吸を整え魔力の篭る刀に手を添える。


「しっ!」


 鞘から刀が赤い光となって放たれる。

 赤い一閃は鉄の球に跡を残すと鉄の球体を二つに分ける。

 鉄は鈍い音と共に地面に崩れる。切断面は真っ赤に染まり溶けている。


「お見事」


 自然とそう口に出るほどの技量。

 俺やルリーラと戦った時よりも格段に速い居合にみんながただ見ていた。


「何です今のは! 鉄を切りやがった!」


 中から聞える声は女の声だった。

 高い音域から発せられる声がドーム状の鉄で反響し耳に刺さる。


「何者だ!」


 中から出てきたのは小柄な女性だった。

 声からわかるように元気の有り余る少女。

 予想通り色素の薄い髪色と肌からは魔力特性が高いのは十分に伝わり、肌を露出させないようにの配慮だったであろうローブは所々が破れている。

 しかしそんなものはどうでもいい。


「どうかしたのか?」


 一番注目しないといけないのは頭の天辺と腰辺りに生えている耳と尻尾。

 犬の様なその姿は神と同じような異形の姿だ。

 人とは大きく違うその二つの部位は装飾品の類には見えない。


「えっと、それは」


 こちらの声を拾おうと耳が二つわずかに動き、人懐っこいのか尻尾が左右に揺れる。

 ルリーラの言葉を聞いた時は装飾品の類だと思っていたがどうやら本物のようだ。


「隠すの忘れてた!」


 そしてローブを被ろうとしてそこに帽子部分が無いことに驚いている。


「さっきの爆発か……」


 輝く槍の攻撃は確かに当たっていたらしい。


「よくもやってくれたな」


「ごめんなさい」


 俺はあまりの勢いに呑まれて謝ってしまう。


「こうなったら戻ってこい、アトゼクス!」


 そう叫ぶと突如目の前に先ほどの鎧が唐突に現れる。

 どうやってこの距離を一瞬で?

 その疑問は声に出さずにそのまま戦闘態勢に入る。


「アトゼクスがボロボロだ! これもお前達がやったのか!」


 しかしアトゼクスと呼ばれた赤い鎧は所々が凹み溶けている。

 ルリーラもミールも善戦してくれたらしい。


「えっとたぶん」


「絶対に許さないぞ。世紀の発明一族ガルベリウスの家名に誓って!!」


 どうしよう、真面目な戦闘に入りにくくなってしまっている。

 元気な少女、ガルベリウスの息女らしい彼女だけがこちらとは逆に戦闘態勢を取っている。

 これって結構危なくない?


 二者の温度差は広がりこちらの緊張感が保てない。

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