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生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。  作者: 柚木
盗賊の国 アリルド その二
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王様街に出る その一

「クォルテ今日は街の視察に行け」


 翌朝、ルリーラ以外が寝間着から部屋着に着替え、全員で朝食をとっているとアリルドがそんなことを言い始める。


「視察って俺がか?」


 上座に座る俺の体面に座るアリルドは頷く。

 みんなは政治の話かと口を紡ぎ、出された食事に口に運び続ける。


「お前は自分が王だと自覚しているか?」


「自覚はないな」


 正直肩書だけでいい。

 政策をするつもりも特にないし。


「はあ……」


 アリルドはわかりやすい位に大きくため息を吐く。


「最近俺がなんて呼ばれているか知っているか?」


「アリルドがか?」


 そこはアリルドがではなく俺がじゃないのか?

 そんな疑問にアリルドは声を上げる。


「アリルド王だぞ!」


「そうなっちゃうよな」


 この国を仕切っているのは実質アリルドだし、俺は旅三昧だし。

 名前だけの王よりもよっぽど王らしいので別にいい気がしている。


「お前ならそういう反応だろうと思っていたがな」


「俺を揶揄しているだけだろ?」


「そうだなそれもある。現に巷ではお前は俺にリベンジをされ国を逃げた敗北者だと噂になっている」


「まあ、事実だろ。俺一人なら勝てないしな」


 三人がかりで辛うじての勝利だ。俺の知っている人間の中ではアリルドほどに強い人間を知らない。


「だとしてもだ、俺は負けてまだ勝ててない。それなのに勝っているとなどという噂には耐えられない」


 純粋な比べ合いの勝利を望むアリルドには、確かに耐えられないことだろうな。


「それに俺はお前達を認めている。言い方は悪いが若造と子供に俺は負けた。だからこそお前達を尊敬し下についている。そんなお前達が馬鹿にされるのは勘弁ならん!」


「わかったよ、俺が街に出て王として振舞えばいいんだな」


「そうだ。それとその時はルリーラとアルシェも同行してくれ」


 突然話を振られたルリーラとアルシェは二人揃って首をかしげる。


「二人はクォルテの政策は覚えているか?」


「奴隷の地位向上ですよね。覚えています」


 政策の意味がわからずに首をかしげるルリーラの代わりにアルシェが答えた。


「そうだ、そのために二人にはクォルテと一緒に街を歩いてもらいたい、もちろん奴隷服で」


「いいよ」


「私も嬉しいです」


「明日はフィル殿とサレッドクイン殿も同行していただきたい」


「いいよ」


「僕もか」


「サレッドクイン殿にも奴隷服の着用をお願いしたい」


「僕が奴隷服? なぜですか?」


 流石にサレッドクインの事を今回は責められない。

 火の国の総帥の娘、つまり上流階級の娘が最下層の装いをする。

 自ら生活の質を落とすのは流石に無理があるだろう。


「クォルテの妻を目指すのだろう?」


「そうですが、それとどのような関係が?」


「奴隷の地位向上はクォルテの悲願と言えるものだ」


 悲願というほどに願ってはいないけど……。

 せいぜい目標?


「それがいつも一緒にいる奴隷の少女とは別に、由緒ある家柄のヴィルクード家の息女と婚約。それは民衆の目にどう映るだろうか」


「奴隷は所詮、はっ! そういうことですか!」


「理解が早く助かる」


 にやりと不敵に笑うアリルド。

 どうやらアリルドにはアリルドの考えがあるらしい。

 そう思い結論に誘導されているサレッドクインを見続ける。


「しかし悲願の為とは言え、奴隷の装い……」


「良妻であるならば夫のために身を削り奉仕するものではないか!」


 そんな考えの妻は滅多にいない。

 それが原因で喧嘩している人たちを旅の間に見てきたし。


「言われれば確かにそれが良妻としての役目」


 段々と洗脳のようになってきたな、サレッドクインが愚直な人間だと悟りそこを突く。流石一国の主兼盗賊の党首だ。


「ではよろしいですか?」


「もちろんだ。夫のためなら僕は粉骨砕身で挑もうではないか!」


 他の仲間からいいの? と視線を向けられ俺は肩をすくめた。


「じゃあ、行ってくるな」


「おう、しっかりな」


 朝食後、奴隷服に着替えたルリーラとアルシェを連れ街へ向かう。

 すっかり改善された城の警備に感心しながら城門を出る。


「行ってらっしゃいませ! クォルテ王、ルリーラ様、アルシェ様」


「あいよ」


 直立不動の門番に挨拶をし歩き続ける。


「それでなんでこの体制のまま歩くんだ?」


 右手にルリーラ、左手にアルシェが抱き付いたままで非常に歩きにくい。


「王の婚約者候補なんだって、私達」


「嬉しいですけど恐れ多いですね」


 満面の笑みと照れ笑いの二人を見るのは嬉しいが流石に恥ずかしい。

 この姿勢が嫌とかではなく純粋に恥ずかしい。

 誰かとすれ違うたびに老若男女問わずに振り返っていく。

 それが俺が歩いていることなのかこの状況を見てなのかはわからない。


「まずはどこに行きますか?」


「それならあの病院かな」


「私も行きたい」


「跳ねるな跳ねるな」


 奴隷服の丈は短い、それは当然短い方が都合がいいからなのは言うまでもない。

 二人は中に服を着ているから大して問題はないが、下着を穿かせてもらえない奴隷は、かがむたびに局部が見えてしまうことがある。

 それ以外にも羞恥を煽るお仕置としてや、必ず両膝を地につけさせる意味合いもあったりする。

 そのため今ルリーラが跳ねた姿を凝視する輩もいたりする。


「下に穿いてるし」


「だとしてもだよ」


 見ていた輩を一睨みしルリーラに注意をする。


「私は流石に下を穿いていても恥ずかしいです」


 視線に気が付いているアルシェは、下に穿いていても恥ずかしいらしくめくれないように俺に抱き付く。

 そのせいで大きな胸がより強調され、その柔らかさを見せつける形になってしまう。

 元々目立つ容姿のアルシェに視線が向き、さらにそれに羞恥が加わってしまったため、これは穿いていないのではと男連中に思わせてしまっている。


「アルシェ、あまり密着させない方がいいぞ」


「はひっ!」


 耳元で語りかけたのがいけなかったらしく変な声と共に直立不動で固まってしまう。

 これ中々面倒なことになるな。

 そんなことを考えたまま俺は二人を連れ街を歩いていく。


 ほどなく歩き病院に到着した。


「大きくなったね」


「こんなに大きかったでしたっけ」


「一応街では一番の大きな病院だったけどな」


 アリルドを担ぎこんだ時も確かに大きかった。

 二階建てで普通の建物の三倍の広さを誇っていた。

 それもアリルドを担ぎこんだ理由なのは確かだ。

 だが今目の前にある建物は当時の三倍の建物になっていた。

 階層が一つ増え三階建て、更にその高さの建物が二つ並びその間に昔からあった建物が建っておりその三棟の建物を橋が一本結んでいる。


「これって入って大丈夫でしょうか?」


「どうだろうな」


 建物にも驚くが患者の数にも驚く。

 病院なのに人がごった返し入口を覆っている。


「これが全部怪我人?」


「病人もいるだろうがこれは流石に」


「はーい病気の患者さんは一号棟にお願いします!」


「怪我の患者さんは二号棟にお願いします」


「初診の方々は本館へどうぞ!」


 純白の看護服を着た女性が三人それぞれの建物から出てくると声を上げる。

 それぞれが人目を引く美貌を持っている。

 全員の髪色が白く一人は元気で背の背の低い可愛らしい女性、

 次に出てきたのは背が高く医者らしい知的な美人、

 最後の女性は愛嬌のある優しい雰囲気で人懐っこそうな笑顔を浮かべている。

 三人が三人スタイルがいい。

 胸が大きく女性特有の曲線が美貌をより強めている。


「クォルテ」


「いててて! 一体何だよ」


 三人を見ているとルリーラに手の甲をつねられてしまう。

 いわれのない暴力が俺を襲った。


「私も、そういう目で女性を見るのは感心しませんよ」


 アルシェまでもが俺を蔑んだ目を向けてくる。


「どんな目だよ」


「えっちな目」

「物色するような目」


 酷い言われようだった。

 確かに美人だと思いはしたが別にそんな目で見ていた記憶はない。


「おや、クォルテ・ロックス様ではありませんか?」


「そうだけど」


 愛嬌のある女性が列整理を終え列から離れている俺達に寄ってくる。


「やっぱりそうですよね。それでお体の具合がよろしくないのですか?」


 人懐っこい笑顔を向ける。

 素なのか計算なのか下から覗き込む姿に心臓の脈が速くなる。

 俺ももしかした病気なのかもしれない。


「いや、街の視察に来たんだ。院長はいるか?」


「そうですか、院長なら本館におりますのでご案内いたします」


「頼む」


 愛嬌のある女性の後をついて行こうとすると、両腕がより強く抱きしめられる。


「二人ともどうかしたか?」


「「別に」」


 腕は痛くないが二人の殺気が痛い。

 ルリーラどころかアルシェまでここまでの殺気を出したことがより緊迫感を強くする。

 俺ってそんなに女にだらしないと思われているんだろうか……。


「セクレアちゃん!」


「他の患者さんの迷惑ですからお静かにお願いしますね。マオさん」


 患者がこの女性に大声で声をかけると、彼女は人差し指を口に当て静かにと言いながら、小さくウィンクする。そのあざとい動きに、患者の男性はだらしなく鼻の下を伸ばす。

 どうやらこの病院は、いつの間にかそう言う場所になってしまったらしい。


「「……」」


 その様に俺の両サイドの女性二人が腕が痛いほどに力を込める。

 なるほどな、殺気の正体はこれか。確かに異性へのアピールは同性からは疎ましく感じるものだ。

 今にも二人が全力で攻撃しそうなほどに殺気を膨らませるなか、俺達は真ん中の建物に入っていく。


「おや、誰かと思えば国王様じゃないか」


 居たのはルリーラを治療してくれた年を取った女医だった。

 確か名前はモナ・ベックだったか。


「おばあちゃん久しぶり」


「お久しぶりです」


 今まで放っていた殺気が霧散し俺から離れベック先生の元に走っていく。


「元気そうだね」


 孫に会う様に二人の頭を撫で茶菓子を二人に振舞う。

 三人は楽しそうに談話を始める。


「ロックス様って、今お付き合いしている方はいらっしゃるんですか?」


 俺が一人のタイミングでセクレアと呼ばれていた女性は話を振る。

 わざとらしいほどに計算された仕草と視線に感心しながらも答える。


「いないよ」


「あのお二人は恋人とかじゃないんですか?」


 より声のトーンを上げ甘えるように話しかけてくる。

 本当に呆れるほどに感心してしまう男心を刺激する言動。

 視線を逸らすと豊満な胸元に向くのまで計算しているのだろう、隙を見せるためなのか隙間が空いており、覗き込む際に服が緩み刺繍の入った下着が覗く。


「もう、どこ見てるんですか?」


 ぱしっと軽くボディータッチからの胸元を閉じての恥じらいの姿。

 なるほど盛況なはずだな。ここまで計算してやっているなら彼女は相手からどう見えているかもわかっているのだろう。


「もしよろしければ奴隷の身ではありますが、恋人の選択肢に入れて頂いてもよろしいでしょうか?」


 頬を染めて恥ずかしそうに体をくねらせ自分の武器を披露する。


「セクレア、もうやめな。あんたの色仕掛けは全部バレてるし、それ以上やるとこの子達に殺されるよ」


「はーい。そんなわけで私はセクレア。奴隷でここの看護師よろしくね」


 さっきの作られた表情よりも魅力のある笑顔で、手を差し出し俺はその手を握る。


「そっちの方が、俺は魅力的だと思うぞ」


「こっちだったら王様も落ちたかな?」


「さっきの媚びた言動よりはな」


「そっか、失敗したな」


 言動は作られたものだが、にこやかな愛嬌は本物らしく表情が豊かで話していて楽しい気分にさせてくれる。

 彼女は挨拶もそこそこに再び患者の対応に戻っていった。


「じー」

「じー」


 話の輪に入ろうと近づくと、二人が俺を蔑んだ視線を向けてくる。


「嫉妬だよ」


 わざわざベック先生がそう言ってくれる。

 まあ、知ってる。俺も逆の状態ならそういう反応するだろうし。


「別にセクレアも本気じゃないだろ。営業スマイルだよ」


 俺だからではなく、誰にでもやっているものだからと言っても二人の視線は冷たいままだ。


「ほら二人とも主が困ってるんだからその目をやめなさい」


「でもおばあちゃん」

「でも先生」


「断ったんだからいいだろ。坊やもセクレアも本気じゃないんだよ、ただの挨拶だ。私はこういう人ですってね」


 その通りだ。セクレアの慣れた言動はああいう風に媚びを売ることで生きてきたという証。その生活は想像に難くない。

 それはきっと他の二人も変わらないだろう。

 だがそれを俺が言っても聞いてはくれないだろうが、なぜかベック先生が言うと二人は唸りながらもうなずいた。


「いい子達だね」


 穏やかな笑顔を向け俺の方を向く。


「それでわざわざここに来た理由は何だい?」


「ただの視察。もう一人のオルクス先生はどこにいるんだ?」


 この病院の最高責任者のベル・オルクスはアリルドを治療した年老いた医者だ。

 年を取っていても最高責任者としてこの国随一の腕を持っている。


「じいさんなら二号館にいるよ」


「ありがとう行ってみるよ」


 俺が移動を開始するとルリーラとアルシェもベック先生に挨拶をして付いてくる。

 本館向かって右側の建物知的な美人の女性が列整理をしていた建物だ。

 二号館に入ると中に入ると早速知的な看護師が出迎えてくれた。


「ようこそオルクス病院へ」


 セクレアとは違い、隙が無い。。

 ぴっちりとした服装は変にはだけてはいないが、体のラインがしっかりと浮き出る服装。

 彼女は手慣れた様子で俺達をオルクス先生の元に案内してくれる。


「こちらでお待ちください」


「ありがとう」


 促されるままに三人が並んで座る。

 そしてその前に知的な女性が腰を下ろす。


「私の名前はシル・アウロラと申します」


「クォルテ・ロックスだ。この国の王をしている」

「ルリーラ。クォルテの奴隷」

「アルシェです。同じくクォルテさんの奴隷です」


 互いに自己紹介が終わるとしばらく無言が続く。

 アウロラはこちらを凝視したまま固まり無言を通す。

 この状況で見られているとどうも居づらい。俺が王だと認めていないのだろうか。もしくは偽物と疑われて探られているのだろうか。

 それはルリーラとアルシェも同じようでソワソワと落ち着かない様子だ。


「オルクス先生は」


「今治療中ですのでもう少々お待ちください」


 この女性は実は機械なんじゃないだろうか。

 微動だにせずただこちらを見つめる姿は置物と変わらない。

 別に悪いことはしていないのに、謝らないといけない気分になってくる。


「おお、クォルテ。久しいな」


「先生」


 異様な空気を破ったのオルクス先生に俺達は一斉に駆け寄る。

 よくわからないまま俺はやってもいない罪を吐きそうになった。


「なんじゃ、どうし……、なるほどシルか」


 よくあることなのかオルクス先生はため息交じりに納得してくれた。


「シルは研究一辺倒で人見知りなのだ。そのため知らない人の前だとこうなるんだ」


「お恥ずかしい限りです」


 そういうことらしい緊張のし過ぎで、何も話せず固まったままだったらしい。

 無駄に理知的に見えているせいで、観察された気になっていたらしい。


「それでどこか怪我でもしたのか?」


「ただの視察だよ」


「そうか、どうじゃ驚いただろ?」


 年甲斐もなく悪ガキの様な笑顔を俺に向ける。

 これもこの病院が人気の一つなのかもしれない。


「まあな、繁盛してるみたいでよかったよ」


「王としては、繁盛しない方がよかろうに。不健康な国民が多いのだぞ」


「いや、どうもここの患者のほとんどは看護師を見に来てるみたいだしな」


 美人の看護師を見るために病院にくるなんて平和だからできることだ。


「それで、うちの看板娘全員に会ったか?」


「セクレアには会った」


「嬢ちゃん達は気に入らなかったろ?」


「殺すんじゃないかと思ったよ」


 俺の言葉に二人がそっぽを向く。

 どうやらもう少しで本当に手が出ていたようだ。その辺りの見極めも流石と言えるだろう。


「なら最後にレルラを紹介しようついてこい」


「治療はいいのか?」


「シル一人でどうにかなる連中ばかりだ。というよりもシル目当ての患者だ」


 そう言って最後に一号館に向かう。

 腕は確かなのに、腕を振るう機会はなさそうだな。


「おや、大先生にそちらはさっきセクレアに連れていかれた人だ」


 元気いっぱいに駆け寄ってくる少女はルリーラと同じくらいの年だろうか。

 ルリーラと身長も変わらないみたいだ。


「レルラだよ、年は十九よろしく」


 そう言って彼女は自己紹介をした。

 一言話すたびに動き回り、病院に相応しくないほどに元気な笑顔を向ける。


「十九……」


「私よりも年上です」


「そうなの? まあいいや宜しくね。そっちの子もよろしく」


 アルシェとルリーラの順に握手をし最後に俺とも握手する。


「クォルテ・ロックス。この国の王だ」


 どうやら彼女も奴隷の様で、俺が王と言ってしまったため握手してもいいかと、手をさまよわせている。

 俺は迷いなくさまよう手を取り握手をする。


「王様なんだ。よろしくね」


 自分の手を取ったことに喜んだ様子で挨拶を済ませる。


「ちなみに三人の中ではこの子が一番治療が上手いぞ」


「そうなのか凄いな」


 だから他の二人と違い一人でここを任されているのか。


「そうだよ、凄いでしょ」


 照れ隠しなのか胸を張ると膨らみ二つが大きく揺れた。


「敵か」


「えっとそっちのちびっ子はなんで睨むの?」


「悪かったな邪魔して。大丈夫そうだから次に行くよ」


 そろそろルリーラが爆発しそうな雰囲気を出したので、俺はルリーラとアルシェの手を掴み逃げるように病院の出口に向かう。


「頑張れよ」


 オルクス先生の応援を受け別な場所に向かう。 

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