表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/174

再会と激闘

 俺達は女のベルタを倒した後少しだけ進む。


「ご主人足音。五人」


 フィルの言葉に俺達は迎え撃つ準備をする。

 魔力を溜めて迎撃の準備をする。


「凄いスピードでこっちに突っ込んでくるよ」


「クォルテ―!!」


「ルリーラ!?」


 元気の有り余る声に、俺達は臨戦態勢を解く。

 そんな無抵抗の俺に弾丸になったルリーラが突っ込んできた。


「ぐはっ!」


 ベルタの全力を受けきれる能力は俺には無く、弾丸となったルリーラと共に壁にめり込んでしまう。


「クォルテ来てくれたんだ!」


「ルリーラちゃん、クォルテさんが死んじゃうよ」


 壁に埋まり息も絶え絶えになった俺に返事をする術はない。


「わー! ごめんクォルテ大丈夫?」


 動けない俺をブンブンと前後に揺すり俺の脳はぐちゃぐちゃにされ俺の意識は一旦途切れた。


「気持ち悪い」


 意識を取り戻しての一発目の発言はこれだった。

 脳がミックスされてしまった結果の嘔吐感に苛まれる。


「ごめんなさい」


「次からは気をつけろよ」


 気持ちがわかなくもないため叱ることはできず、素直に反省するルリーラの頭を撫でる。

 一日ぶりに撫でるルリーラの闇色の髪は艶があり心地いい。

 久しぶりの感じだ。


「それでそっちの四人は?」


 俺が起きるまでの間に増えた四人を指さす。


「私の仲間、一緒にここから出ようと思って」


「なるほどな」


 四人のベルタは静かに座り置物かと思うほどに大人しかった。


「一つだけ言っておくが、一緒にここを出るのは別にいい、他に居るならそれも構わない」


 いかにも奴隷といった雰囲気の四人に更に言葉を投げる。


「でも、その後にことを俺は面倒は見れない」


 はっきりと四人の同行を拒否する。

 正直一人なら多少の問題はあっても連れて行くのに問題はない。

 でも四人は無理だ、単純に倍に増えるのもあるし増えすぎだ。


「それはそうですよね」


 俺の言葉に肩を落とす四人。


「ただ街までは運んでやるから後は自分だけで生きていけ」


「わかりました」


 返事にみんなが頷く。

 不意に地面の動きが活発になっていく。


「何だこれ?」


「気をつけて、この床人を飲み込むよ」


「これはやばいかもな」


 周りではすでに魔獣が捕食を始めている。

 気を失っている者から次々と床や飲み込まれていく。


「ミール魔法の解除、それと動ける連中は動けない奴らを助けろ」


 俺の命令にみんなが動き始める。

 命令を出したはいいが、この状況をどう切り抜けるか。

 ここは魔獣の体内も同じ、そんな中で逃げの一手はあり得ない。

 なんで急に動き出したんだ? 一定の人数が集まったからか? それとも負傷者の数? 俺達の存在?


 考えながらも魔獣は俺達を捕食しようと何度も襲い掛かる。

 

 そうじゃないはずだ、それなら最初の段階で動き出さないとおかしいし負傷者の数でもミールの魔法の時点で発動しないとおかしい。

 俺達の存在だとしてもそれこそ今更だ。


「ルリーラ、この魔獣が動き出した理由に心当たりはあるか?」


「これ魔獣なの!?」


「後で説明するから早くしろ」


「えっと私がこの床を抉ったら動き出して一人が食べられたの」


「わかった、ありがとう」


 傷を負えば回復しようとする。

 なるほど、それはシンプルだ。

 魔獣が防衛本能で肉体から魔獣を生み出している。

 それなら対処もシンプルだ。


「動ける奴は全力で壁と床へ攻撃、攻撃すればするほどこの敵の攻撃は激しくなると思え!」


 俺が檄を飛ばすと動ける連中はみんな攻撃を始める。


「死にそうになったら引け! 必死に逃げろ! 死んでも逃げろ!」


「無茶苦茶な命令じゃない?」


「向かって来たら全部潰せばいいだけだぞ」


「じゃあ無茶苦茶じゃないね」


 ルリーラは即頷き壁に拳を打ち込む。

 壁が大きな窪みを作り魔獣の体は体液をばら撒きながら飛散する。

 その傷を修復しようと四方から迫る口を全て叩き潰す。


「お前達もあのくらいできるだろ!」


 ルリーラが仲間と呼んだベルタの四人に声をかけるが、不安が表情を曇らせる。


「ルリーラが仲間と呼んだんだろ、仲間なら仲間が頑張ってたら一緒に頑張るもんだ」


 目の色が変わる。

 ルリーラが何を話したかは知らないが、きっとそれはあいつが言ってほしかった言葉なはずだ。 

 それなら俺が言うべきは最後の一押しだ。

 縦の関係じゃなくて、横の関係。そのために戦えと鼓舞する。


「アルシェ、フィル、ミールお前達も頼んだぞ」


 機動力のあるフィルが短剣で肉を抉りアルシェとミールがそれを滅する。

 ベルタ達も一生懸命に壁や床を破壊し続ける。

 それから少ししてようやく一つの部屋からは魔獣の姿が消えた。


「これで大丈夫なはずだ」


 正直見えない壁の上までは確認できないが目に見える範囲からは片づけた。

 もう魔獣が襲ってくる気配はない。


「これで終わりか」


「でもここからどうやって逃げるの?」


 そう言えばルリーラにはまだ神様のことを話してなかったな。


「俺達はここに神に連れられてきたからな、後は闇の神を倒せばそれで解決だ」


「そうなんだ」


「だから安心しろ」


「――――!!」


 頭を撫でると嬉しそうに目を細めるルリーラに懐かしさを感じていると。

 突然頭上から奇声が轟いた。

 その場にいた全員が頭上を見上げると闇の中から一つ黒い何かが降ってきた。


「よけろ!」


 俺の言葉にみんなが反応し落下地点から距離を取る。


 こんな登場の仕方をするのは味方じゃないよな。


 激しい音と共に地面にぶつかったそれは蒸気を発しながらそこに立っていた。

 小さな人影、ルリーラよりも小さい影は上記の奥に見えていてもわかる真黒な闇の様な存在。

 ベルタの髪色と同じ純粋な闇の黒。

 髪も目も口もないまっさらな頭部に凹凸が感じられない体。

 人の形の闇がそこにいた。


「――!」


 近くに居た名前も知らないベルタに闇は突撃した。


「よけろ!」


 音よりも早く動いたそれは一撃でベルタの体を壁に埋め込んだ。

 そして次に狙いを定めたのは俺だ。

 緩慢な動きで首が俺を向く。


「危ない!」


 狙われたのに気が付いた時には、人型の闇は俺の目の前に届き間一髪ルリーラが間に入った。

 狙いを俺からルリーラに変え、闇の人型は足技を繰り出すが、ルリーラは避けて逆に一撃入れる。


「ルリーラ」


 そこからは何も理解ができない。俺の目が捉えられる限界を超えて音と衝撃だけを残して移動する。

 その応酬が続き俺の目に映ったのはルリーラの一撃が闇に決まり壁にぶつかった姿だった。


「――!?」


 今の攻撃に驚いたのか闇は奇妙な声を上げ首をかしげる。


「――――――――!!!!」


 闇が叫び声を上げると壁の中から現れた魔獣が折り重なりそのまま壁が闇を飲み込む。

 闇を取り込んだ壁は大きく膨れ上がると、ぶちぶちと嫌な音を立て肥大化した部分を切り離す。

 その肉片は徐々に人の形に変わりその全身を闇色に染める。


 肥大化した闇が立ち上がる。

 俺達全員を見下ろす闇色の巨人は腕を上にあげたかと思うとそのまま腕を振り下ろす。

 高速の拳圧に近くに居た人達が遠くに吹き飛ばされその拳は誰にも当たらない。


「お前らみんな逃げろ!」


 特級が可愛く見えるくらいのサイズと威力。

 体を動かすだけで強風を生み、その一撃は床を抉る。

 その様に蜘蛛の子を散らす様に意識のあるベルタ達は、俺達五人を残してどこかへ走り出した。


「アルシェ、ルリーラに強化魔法をかけてくれ全力で、ミールはフィルに強化。それが終わったら物陰に隠れてろ」


 対峙してわかる圧倒的な体格差、このサイズであの速さ、拳を振り下ろしただけで周りから人が吹き飛ぶ。

 ルリーラとフィルでギリギリ耐えきれるかどうかの状況にアルシェとミールは置いておけない。


「クォルテさんは?」


「俺はこれを撃たないといけない」


 神が神槍を託してくれた精霊結晶。

 おそらくこいつにはこれを打ち込まないと消滅させるのは無理だろう。

 この体内全てが敵なら体力は向こうが圧倒的に上で持久戦は無理。あの体格であの速度ならルリーラの一撃でも死なない。


「わかりましたミールさん行きましょう」


「はい」


 アルシェとミールが退避したのを見て俺達は闇の巨人と対峙する。

 絶望的な戦力差に逃げ出したいという気持ちすら消えてしまう。


「なんかもう怖いとかないよね」


「だねー」


「通り越すよなコレ」


 中々動かない闇の巨人は俺達をただ見下ろす。


「神槍撃ったら避けるよな」


「だと思うよ」


「神槍撃てるんだ。それなら私があいつの動きを止めればいいんでしょ」


 制止をする暇もないルリーラは臆せず闇の巨人に突撃した。

 足元を捕らえた一撃は闇の巨人を少しだけ怯ませる。


「――!」


 驚きの声を上げる闇の巨人はルリーラを狙い腕を振り下ろす。

 拳圧というう名の暴風が俺とフィルを襲う。


「これが厄介だな」


 一振りで敵との間合いを取ってしまう一撃は、思いの他厄介で近づくことができない。


「ご主人あたしも行ってくるね」


 風を纏ったフィルもルリーラと共に突撃を開始する。

 フィルはルリーラの届かない頭部を狙い攻撃を始める。

 大したダメージにならない一撃が闇の巨人を苛つかせる。


「――――!!」


 突然の咆哮一瞬の停止を狙い何もない頭部に口が生まれた。

 闇に突然浮かぶ口は大きく開く。


「よけろフィル!」


 一度だけ見たことのある動き、ヴォールで戦った魔獣が魔力を放つ動作。

 俺の言葉に全力で逃げ出すフィルのいた場所に一筋の光が走る。

 光は向かいの壁を軽く貫通し壁が崩壊する。


「今のって」


「特級の魔獣が使ってた攻撃だ」


 ただ魔力をぶつけるだけの単純な攻撃。

 俺やミールが水を放出する単純な一撃も、魔獣になると一撃必殺の威力になってしまう。


「水よ、鎖よ、楔よ、我が敵の動きを封じよ、ウォーターバインド」


 水は大きな鎖に変わり闇の巨人を捕らえ捕縛する。


「――――!!」


 突然の動きに闇の巨人は大きな声を上げる。


「今だ!」


「おりゃああ!」


 ルリーラの全力が闇の巨人の腹部に刺さる。


「――――――――!!!!」


 断末魔と共に暴れる闇の巨人は簡単に水の拘束を破る。

 闇の巨人は口をルリーラに向け口を開ける。


「アルシェ!」


「バーンアウト!」


 呪文を唱え終えていたアルシェは魔法を発動させる。

 狙いは当然砕かれた水。

 炎はすぐに着火し闇の巨人の体を焼く。

 当然ながらこれが大してダメージにならないのはヴォールで体験済みだ。

 それでもわずかに鈍らせるくらいはできる。


「ルリーラ殴り飛ばせ!」


 ルリーラは力一杯に闇の巨人を殴りつける。プリズマの強化を受けたベルタの一撃に流石の闇の巨人も壁にぶつかる。


「もう一発!」


 次いで二発目の攻撃で、闇の巨人は壁に埋まり膝を着く。


「これで終わりだ――」


 すぐには動きだせない闇の巨人はこちらに口を向ける。


「――神槍」


 精霊結晶に格納されていた神槍は姿を現す。

 俺には決して作り出せない巨大で荘厳な槍は特級を屠る時よりも大きく感じる。

 闇の巨人はその脅威を感じ取ったのか魔力を吐き出す。


「勝負するか? 神の一撃だぞ」


 俺は神槍を放つ。

 螺旋状に回転しながら進む神の魔法は、闇の巨人の魔力をものともせず突き進む。


「――――――――!!!!」


 闇の巨人は負けじと何度も魔力を放つが神槍の前には焼け石に水。触れては消滅する。

 闇の巨人は今更勝てないと回避行動に移るが、魔力を消費している今、動きが鈍り間に合わない。

 そのまま神槍は闇の巨人に命中する。


「――――!! ――――――――!!!!」


 闇の巨人は何かを訴えるように断末魔を上げながら消滅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ