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闇の潜む場所へ

「なんで兄さんの隣にアルシェ先輩が寝てるんですか!」


 最近恒例になりつつあるやり取りで目を覚ます。

 広い客室には窓から太陽の光が室内を明るく照らしている。

 いい天気だな。


「ご主人、最近この様子に慣れてきてるよね」


 言い合いしている二人から離れるようにフィルが隣に座る。


「まあ、流石にほぼ毎日だからな」


「止めるつもりもないの?」


「ミールが武器か魔法を使い始めたら止めるよ」


 それ以外の言い合いなら大惨事にはなれないし。


「兄さんはなんで止めてくれないの! 私達にもう飽きたの?」


「そりゃあ毎日同じやり取りしていたら飽きるよ」


「兄さんはどうせ私なんかいらないんです、おっぱいとか母性とかそういう大人の女性が持っている物に惹かれるんですね。私みたいに十七になっても胸もなくて子供っぽい私には兄さんは無関心なんですよね、ええ知っていましたよ」


 何を勘違いしているのかミールはわざわざ部屋の隅に行って丸くなってしまう。

 病んでいるのは最近知ったがさらに進行している気がする。


「ミールさん、しっかりしてください」


 そして変に優しいアルシェは無駄に構ってしまう。

 これは悪循環なんだと早く気が付いたほうがいい。


「アルシェ先輩……」


 少し笑いながら涙ぐむ姿にアルシェにも心を開いてくれているはずはない。


「このおっぱいが兄さんを誘惑してるんですよね」


 アルシェ対ミールは二回戦に突入した。


「何ですかこの柔らかさは、指が埋もれるって何なんですか!」


「あっ、ちょ、ミールっ、さん、あっんっ」


「私の胸なんかすぐに骨に当たりますよ指の第一関節までも全部埋まりませんよ!」


 アルシェの胸はミールの手によって無茶苦茶に揉みしだかれ縦横無尽に動き回る。

 持つたびにミールの手が胸の中に姿を消し、離すと勢いよく元の丸みを帯びた形に戻る。


「こんなに胸が大きいのに感度がいいんですか、喘ぎ声なんてふつう出ませんよ、少なくても私は出ないですよ、この胸は完璧ですか? 完璧ですよ! ふざけんな!」


「そ、んっ、そんなこと、あんっ! 言われっ、てもっ」


 具体的には言わないがもうなんか凄い。

 朝から凄い物を見ている、アルシェの胸が跳ねに跳ねてボール遊びの様になっている。

 それだけ激しく動くせいでアルシェの衣服はそれはもう乱れる、肩から服が外れ勢いよく跳ねるボールが服から飛び出そうとしている。


「んっ、そろっ、そろそろんあっ、おやめにっ、ぅんっ、おやめになってく、ださいっ!」


「燃焼させてやりますよこの二つの脂肪の塊を完全燃焼させて私とアルシェ先輩の力量を同じにしてやりますよ」


「それで、ご主人は止めないの?」


「流石にこれ以上は不味いな、ミールも暴走しかけてるし」


 ミールの形相が鬼に変貌する反面アルシェの顔は紅潮し涙を浮かべている。

 これ以上は武器も魔法も使っていないが止めに入らないといけない。


「ミール、ストップだ」


「止めないでください兄さんこの脂肪を燃焼させることに命を懸けているので」


「命を懸ける対象はルリーラの奪還だからな」


「そうでしたね敵を間違えてはいけませんね」


 止めに入ったことに満足したのかあっさりとアルシェの胸から手を離す。


「はぁはぁ……ん、はぁ、おっぱいがヒリヒリします……」


 アルシェは桃色の吐息を整えながら衣類を直し胸が痛いのか自分でさする。


「やっぱり敵はアルシェ先輩です」


「ミールさんが怖いです」


「そろそろ行くぞ」


 睨むミールと震えるアルシェを連れて行きながら謁見の間に向かう。


「遅かったな」


「お前達も座れ」


 すでに二柱が席についていたことに恐縮しながら席に着く。


「揃ってらしたのでしたらお声かけ頂ければ」


「朝から盛っているようだったのでな」


「流石に邪魔はできないとヴォールに言われてな」


「聞いてらしたんですね」


「そこは否定してください!」


 先ほどの惨状を思い出したのかアルシェが頬を染めながら声を荒げる。

 神々が笑うと自分がからかわれていたことに気が付き更に顔を赤く染める。


「さて、皆席についたなそれではクォルテお前の作戦を聞かせてくれ」


 火の神が場を取り仕切るが、水の神はそれに意義を唱えることはせず共にこちらを見る。


「わかりました、と言っても作戦と言えるほどのことはありません」


 立ち上がり自分の案を説明する。


「ヴォール様とウォルクスハルク様には闇の神を相手していただきたいのです」


「まあ、妥当だろうな」


「我も同じだ」


 二柱の神が頷いたことを確認して話を進める。


「闇の神の居場所と大体の地理はご存知ですか?」


「移動はできるが内部については知らないな」


「奇しくもこの女と同意見だ」


 二柱が知らないとなると捜索に結構時間が結構かかってしまうな。


「お二方の探査魔法はどの程度なのでしょうか」


「「一国くらいなら余裕だ」」


 二柱の声が綺麗に重なった。

 アルシェでさえ魔力を全部使っても一国は無理だ。それを余裕という神々に恐怖さえ覚える。

 それは魔法を使える二人も同じようで目を見開いている。


「そ、それではお二方には探査でルリーラ達がいる場所を特定し教えてもらえますか?」


「ヴォールに聞いてはいたが、本当に闇の子の群れに突入するつもりか」


「それだけは俺達がやらないと駄目なんです」


 正気でベルタの群れに挑むのかと聞かれ、俺は頷く。


「なるほど今からでも我の子にならぬか」


 すっとウォルクスハルク様は俺の手を取る、白くて温かい手が俺の手を包みはだけた豪華な浴衣からは白磁のような膨らみが誘惑してくる。


「おいこら誰の子に手を出そうとしてやがる」


「くくく冗談だ、お前達もそう睨むな怖くて誰か男に抱き付いてしまいそうだ」


 心底楽しそうに俺達で遊ぶ火の神は笑いながら席に座りなおす。


「それならいつでも行けるな」


「大丈夫ですか」


「うむでは行こうと言いたいがその恰好では些か問題があるな」


 朝のごたごたのまま移動した俺達は今更ながら寝間着のままいた事に気が付いた。


「すぐ着替えてきます」


 俺達はまた客室に戻ると着替えを始める。

 なぜか俺まで同じ空間で着替えをさせられている。


「やっぱり赤くなってる」


「そのくらいならすぐに治るよ」


「腫れて形が崩れればいいんです」


 アルシェとフィルの会話にミールが加わる。


「ミールさん、大きくても大変なんですよ」


「肩がこるし重いとか言ったら、今この場でアクアドラゴンを全力で放ちます」


「ごめんなさい」


 ミールの脅しにアルシェは素直に従った。


「そもそも知ってるんですよそんなこと! 胸が小さい私からしたら重いとか肩がこるとかそんなもの名誉以外の何物でもないんですよ!」


 声しか聴いていないが今頃きっとミールは泣いているんだろうな。


「大きさの愚痴なんて本当の所ないんです、全部自慢なんですよこうなるほどに大きな武器を持っていますって自慢なんですよ、そんな自慢私だってしてみたいんですよ!」


 段々聞いていることが不憫になってきた。


「ご主人、私は準備できたよ」


 フィルは流石であの可哀想な自虐を聞いても我関せずで着替えを終えていた。


「短剣はどうした?」


「忘れてた」


「それなら一番はフィルさんじゃないでしょうか?」


 アルシェが仲間を道連れにした。


「そう言えばそうですね、アルシェ先輩の影に隠れてはいますがここ最近一番接近しているのはフィル先輩ですよね」


「ご主人助けて」


「頑張れ」


 涙目のフィルはミールに絡まれ始めてしまった。


「そうですよねなんでフィル先輩は最近兄さんと仲がいいんでしょうか、オールスを超えた辺りからですよね? いつも温泉に一緒に入ってましたし何かあったんですか? あったんですよね」


 俺は手を合わせて全員分の武器の準備をすることにした。


「手伝いましょうか?」


「ミールにまた絡まれるぞ」


「それは……」


 嫌そうに顔を歪めるアルシェは、後ろに下がり近くのベッドに腰を下ろして待機することに決めたらしい。


「私達がいないのをいいことに何をしていたんですかね? なんだかんだでフィル先輩って女の私が見ても羨ましいですものね」


「お前らいい加減にして準備しろ、特にミールお前はいい加減着替えろ」


「兄さんに言われたしょうがないですね」


 怒りを抑えミールは着替えを始める。


「もっと早く助けてよ」


「アルシェが着替える時間稼ぎだ、ほら短剣」


「ありがとう」


 やっぱり結構辛いらしく泣きながらホルダーを装備しアルシェとフィルの準備が完了した。

 それから少し経ってミールの準備も完了した。


 改めて全員が揃う。


「アルシェとフィルちょっとおいで」


「ならクォルテとミールはこっちだな」


 二人ずつが神に呼ばれる。


「クォルテお前の短槍と精霊結晶を寄こせ、精霊結晶はミールも持っているのだったか」


「何をするんですか?」


 疑問に思いながらも、持っている装備を水の神に渡す。

 ミールは武器らしい武器を持っていないの精霊結晶を渡す。


「これから闇の世界に行くのに何の対策もせんのは愚者の極みだ」


 そう言って俺の短槍を手に取ると魔力を込め始める。


「いい槍だ、よく魔力が貯まる」


「ありがとうございます」


「精霊結晶にもな」


 更に魔力を込め始める。

 何の魔法が込められているのかはわからないが、おそらく守護用の魔法だろう。


「これでよい」


「何の魔法を込めたんですか?」


「槍には力を結晶には守りを加えた」


「それとこれもやろう」


 小さな結晶がはまっている指輪を受け取る。


「これは、また神器なのでしょうか」


「一発限りの神槍だ」


「神槍」


 特級の魔獣を一撃で葬り去った規格外の力を持つ水の槍。

 それがこの小さな結晶の中に入っているのか。


「使いどころはクォルテに任せる、あちらも似た物のはずだ」


「わかりました」


「ここまでしてやる意味はわかっているな」


「はい、必ず生きてルリーラを取り戻して見せます」


「よし」


 人間味あふれる水の神の微笑みとともに肩に手を置かれる。


「では行こうか」


 合図なのか指を一度鳴らすと世界が暗転する。

 ヴォール様の時とは違い世界は暗転し瞬く間に知らない場所に居た。


「ここが闇の国?」


 不気味で異様な光景に俺達は慄いた。

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