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生まれた国を滅ぼした俺は奴隷少女と旅に出ることを決めました。  作者: 柚木
商売の国 テルトアルレシア
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出発から到着

 ヴォールでの買い物の途中で、とあることに気が付いてしまった。


「あの、食材ってどこでしょう」


「それならこの街を出てすぐにある村に」


「ありがとうございます……」


 アルシェが近くの人に声をかけるが、全員が同じ答えだ。


 うんやっぱりそうなんだよな。

 今更気づくのもどうかと思ったが、ここに来てから特に気にしていなかった。

 出来合いの食堂はあっても、加工前の食材を売っている場所がこの国にはない。


 何せこの国の首都には何もない。

 これだけ活気があったとしても、ここはあくまでも防衛の拠点であって神の社だ。

 そうなると当然揃っているのは、武器や街での移動手段。食材を売っている店がない。


「これは、次の国まで我慢したほうが早い気がします」


「俺もそう思う」


 食料もほぼ城で食べ、小腹が空いたら何となく外で食べていたおかげで全然減っていない。


「よしもう出発だ。文句はあるか?」


「ない」「ありません」「ないよ」


 三人の返事と共にヴォールを出発することに決めた。


 滞在期間があまり長くなく、基本的に荷物は馬車に置いているおかげで荷造りはすぐに終わった。

 馬車を移動してくれる人たちを待つ方が時間は長かった。


「じゃあとりあえず出発だ、目的地は温泉の国オールス」


 俺達はまた馬車に揺られて旅路を進む。

 もうすっかり俺よりも操舵が上手くなったアルシェの隣で、俺は念のため座っている。


「この道を真っすぐでいいんですよね」


「そうだ、後は途中にある国によって食料の補充だ」


「その国ってどこなんですか?」


「次の国は商売の国だよ」


 のんびりした旅のおかげかフィルの話し方がよく馴染んでいる。


「フィルに言われたけど、買い物をするのは商売の国テルトアルレシアだ」


「凄いよ、この国に行けばなんでも手に入るから」


「なんでもですか」


「その国に行かなきゃ食べられない物とか、買えない服とか色々な国の物が売ってるよ」


「それに付け加えるなら各国に支店が最低一軒はある」


 そこの支店経由で各国の特産品や食料品を扱っている。

 そのおかげでこの国は年中通して最大級の盛り上がりを見せている。


「温泉も楽しみだけど買い物も楽しそう!」


「色々な食材も買えますね」


「折角だから服も買っていくか」


 わいわいと買う物を決めながらテルトアルレシアを目指して馬車を進めていく。


「あそこが最初の町っぽいな」


 テルトアルレシアの特徴の一つはここにもある。

 小さな町がいくつか並びその町ごとに売っている種類が違う。

 首都まで行けば何でもそろうがこっちの町に行けばマニアックな物が売っている。


「あそこの町は何があるの?」


「あそこは武器屋だな」


「興味ない」


「俺は用事あるんだよ」


 魔力が切れても問題ないように武器はいくつか欲しい。

 魔獣との戦いでそれが身に染みた。


「ルリーラとフィルの武器も買うんだからな」


「私いらないけどな」


「私も動きが鈍くなるし」


「お前達に一々武器を作ってられないだろ」


 文句を言い続けるルリーラとフィルを引きずりながら最初の町に向かう。

 活気が溢れる町並みは流石テルトアルレシアと言えるだろう。

 職人たちの怒号に値切る客達、ただの世間話色々な情報が飛び交う。


「耳が痛い……」


「あたしも……」


 身体能力の高い二人は耳を塞ぎながら歩いていく。


「流石に私もうるさく感じます」


 この活気は確かにこの辺りだとうるさいのだろう。

 武器だと俺はテンションが上がるから大して気にならないが、興味のない三人にはただの雑音に聞こえてしまうんだろう。


「なら早めに買い物を終わらせるか、二人はどんな武器がいいんだ?」


「私はこう、一撃必殺みたいなの」


「あたしは、動きやすいのかな」


 そうなるとルリーラは戦斧か大剣ってところでフィルはナイフを二三本ってところか。


「アルシェは何がいい?」


「私は特にいらないですけど」


「そういえばネアンの精霊結晶を渡してたな」


「はい、なので制御は簡単になりました」


 確かに魔力の媒介にするなら精霊結晶よりも優れている物はないし、杖とかはただ重くなるだけだしな。


「俺は買いに行くけど、みんなが辛かったら先に馬車に戻ってくれてもいいぞ」


「辛いけど行く」


「あたしも」


「私は二人に比べたら問題ありません」


「じゃあ行くか」


 俺達は手当たり次第に店に入り武器を見て回る。

 先に見つかったのはフィルの短剣だった。


「これ凄い手に馴染むよ」


「これって魔法の付与って可能ですか?」


「そこまで頻繁じゃなければ可能だよ、魔法付与ならこっちが一番だよ」


「じゃあその二本ください」


 短剣をしまうホルダーと共に購入し、フィルに渡す。

 興味ないなんて言っていたが実際身に着けると嬉しいらしく何度か抜き差しを繰り返す。


「こっちのは切れ味がいいものだから普段使ってくれ」


「わかった、それでこっちの綺麗なのは?」


「こっちは魔法を付与して使う。自分でもいいし俺とアルシェでもいい」


 刀身が赤く光る短剣をフィルに渡す。


「私のは?」


「気に入った物がなかったんだろ? 次だ次」


 更に探して四店舗目、ルリーラの目に大剣が映った。


「私これがいい」


 無骨でシンプルだが大剣には珍しい片刃で刀身には波打った模様が特徴的だった。

 見ていると吸い込まれそうな美しさは、武器としてより不気味に見える。


「じゃあこれを、これって魔法付与はできますか?」


「できますよ」


「じゃあこれを下さい」


 綺麗だが、そのせいなのか細身の刀身は腕力だけではすぐに折れてしまいそうだ。そうならないように魔法を付与できるのは嬉しい。


「ほら、ルリーラ」


「やった」


 ルリーラは身の丈よりも高い大剣を手にして喜ぶ。


「後は俺の買い物だけど三人はどうする?」


「一緒に行く」


 ルリーラの言葉に他の二人もうなずき。俺の求める武器を探ししばらく街を探索する。

 何店舗めかで目に付いた短い槍に手を伸ばす。

 木製の柄、穂先は槍にしては少し長いが、その分攻撃の範囲が広い。

 これに追加で魔法も使えれば剣としても使えるかもしれない。


「意外とこういうところも楽しいね」


「楽しかったね」


「私はあんまりおもしろくなかったかな」


「アルシェは買う物なかったからな」


 馬車に乗り今度は日用品を買いに出かける。

 主に服関連。

 これに関しては三人の独壇場で俺は後を付いて行くだけとなる。


「これ可愛い」


「可愛いけど、アルシェにはおすすめできないかな」


「なんで? 私ってこういうの似合わない?」


「似合うんだけどアルシェの場合はね」


「いやらしくなるから」


「なんでですか!?」


「それには俺も賛同するぞ」


「クォルテさんまで?」


 可愛い物ってスタイルがいいほどに卑猥さが増してしまう。

 可愛いのは幼い雰囲気の物が多く、アルシェの様にスタイルがいいとその幼さが卑猥な方に進んでしまう。

 今選んでいる肩を出している服だと、襟ぐりが広くなっているため胸元も強調しすぎてしまう。


「いいんです、着てみます」


「どうぞ」


 三人で着替え終わるのを待つと、それはまあ予想通り。


「イメージと違いました……」


 出てきたのは確かに可愛いがやはり胸が強調されエロい。

 白い肌に薄いピンクの服は確かに似合っていて可愛いが、露出した肩と深い谷間、そして更にその胸を強調するようにあしらわれた大きなリボン。

 いかがわしいお店に出てくるような卑猥さ、街に居る男性の視線も集まってしまう。


「だからアルシェはこういう方が似合うよ」


 手渡されたのはシックな感じで綺麗とかカッコいいに分類される服。


「私も、可愛いのがいい……」


 ルリーラに渡された長いパンツとシャツにジャケット。

 顔がまだ少しだけ幼いアルシェだが、こういう格好も似合う。スタイルがいいためやはり変に可愛い服よりも似合っている。


 アルシェの最後の抵抗なのか、結局部屋着ならと最初に選んだ可愛い服も買った。


「あたしはどんなのでもいいけどな」


「フィルは確かになんでも似合いそうだ」


 スタイルは良いが強調しすぎない平均より少し上、可愛いもカッコいいも両方着こなせる姿に両極端なルリーラとアルシェは嫉妬の視線を送る。


「喧嘩してないで好きな物探せよ」


 早々に俺は自分の服を買ったため三人を待つことになる。


 それから一時間ほどでみんなの買い物が終わった。

 結局みんな無難な服を戦闘用、外出用、部屋着と分けて買った。


「とりあえず買い物は終わったし宿探しに行くか?」


「宿は静かなところがいいな」


「宿屋だけの町もあるよ」


「じゃあ、そこで探すか」


 向かった宿屋の町も活気にあふれていた。

 飲食店が併設している店が多いため閑静とは言えないが比較的静かだ。

 道なりに進むと飲食店の並びを抜け閑静な宿の通りへと変わった。


「静かだね、風も気持ちいいし」


「そうだな」


 たくさん並んでいる宿屋から適当に入り、大き目の六人部屋にチェックインをする。

 そして驚いたのはここは一人用の部屋だけの宿らしく、四人以上の部屋はコテージになるらしい。


「立派だね」


「四人用は埋まってたけど六人用でよかったな」


 大き目のコテージで二階建て、二階には大きな部屋が二つ、一階にはキッチンなどのスペースがある。

 周りは林に囲まれこのコテージの範囲を示しているのか生垣が周りを囲む。


「じゃあ俺が一部屋、ルリーラ達は三人で一部屋だな」


「クォルテも一緒に寝ようよ」


「そうですよ、一緒に寝ましょう」


「一緒に寝ようー」


「なんで男を無理矢理に寝せようとするんだよ」


「「「寂しいから」」」


 三人が同じことを言う。

 段々と俺は男扱いされていないんじゃないかと思って来てしまう。


「駄目だ、今回俺は一人で寝る」


 流石に毎晩毎晩悶々とした気持ちで寝るのは辛い。

 せめて一人で気楽に過ごしたい。


「我慢なんてしなくてもいいのに、あたしは他の二人と違って大人だけど?」


 フィルがこっちに寄ってきてそっと耳打ちする。


「それでも駄目なんだよ。俺が決めたことだからな」


「まあ、そういうのは嫌いじゃないよ」


 そして説得に失敗したとルリーラ達に報告に向かう。

 これで今日は落ち着いて眠れるな。

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