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神様の贈り物

「呼び出しておいてこういうことを言うのは心苦しいが、疲れているのなら明日でもいいのだぞ」


 謁見して最初に神に気を使われた。

 きっと俺の顔が、そう言いたくなるほどにやつれているのだろう。


「いえ、今は休んでいる方が体力を削られますので」


「何やら大変なようだな」


「お察し頂いてありがとうございます」


 俺達は現在、四人そろって神に謁見している。

 なぜかお前達ともう少しだけ話をしたいと、神が自らおっしゃったためだ。


「まあ、座れ」


 促されるまま、急遽設置されたテーブルへ促され、なるべく神の前に四人が並ぶように着席する。

 円状の木製のテーブルの上にはお茶や茶菓子が並ぶ。


「適当に食べてくれて構わん。無くなればすぐに持ってこさせよう」


「ありがとう、神様」


 ルリーラは遠慮なくお茶菓子に手を伸ばし口に運ぶ。


「よく食べる子は可愛いものだな」


「ルリーラは食べ過ぎですが」


「他の者も食べて構わんぞ」


 アルシェとフィルがこちらを見るので俺はうなずく。

 そして二人はお茶菓子に手を伸ばし口にする。


「美味しいです」


「これは美味しいー」


 目をキラキラさせながら二人も喜んで次々に口にする。


「それでお話とは一体何でしょうか」


「ロックスについての話だ」


 その言葉に俺とルリーラは動きを止める。


「クォルテには従妹がおったな」


「よくお調べになりましたね」


「調べるまでもなくロックス家は有名だ。そしてその分家もな」


 そこからどう話が広がるのかが怖い。

 本家を没落させた影響は当然分家にも広がる。


「それで親戚達はどうしたんでしょうか?」


「他の一族は自分の事で精一杯だ、唯一ミール・ロックス以外はな」


「やっぱりそうですか」


 従妹と言われて最初に思い浮かんだのはミールだ。

 ミールは特に本家に憧れていた、そして俺にも、その俺が自分の手でロックス家を没落させたことを恨んでいても何もおかしくはない。


「そして先日の魔獣討伐の優秀者はお前達だ」


「ミールの耳にも入ってしまうということですね」


 国を出てから約二年、なんの音沙汰もなかったせいで気は緩んでいたのかもしれない。


「それを知ってはいたのだがな、特級を足止めなどという快挙に褒章を与えないのも都合が悪くてな」


「それは仕方ないと思っております」


 俺も国が亡びるとわかっていて放置はできなかった。

 それはミールがこちらを追っているとわかっても、おそらく手を出していたはずだ。

 それほどにあの時状況は逼迫していた。


「それでこれは今回に対する謝罪と報酬だ」


 そう言ってテーブルに置かれたのは一つの指輪。

 青い宝石がリングに埋め込まれており装飾品の類ではない戦闘を意識した頑丈そうな指輪だ。


「これは?」


「私が作った神器だ」


「…………え?」


「神器だ」


「ええええええええええええ!!!!」


 流石に大声で叫ぶしかない。

 国が二三買えてしまう価値があると言われている超規格外の道具。

 効果は様々だがそのどれもが強力で強大な能力を秘めている。

 そんな国宝に指定されてもおかしくない代物がこんな簡単にテーブルに置かれる。

 それにはルリーラ以外の二人も驚いて声が出ていない。


「神器って何?」


「神が作った道具のことだ、もの凄く凄くて強い、仮に換金したら人生が三回は遊んで暮らせる」


「クォルテが動揺するくらい凄いのはわかった」


「すまんな、一つしか準備できなくて」


 そう言って少し申し訳なさそうにする神に俺はすぐさま感謝を述べる。


「いえ、ありがとうございます。これほどの物を頂けることさえおこがましい」


「そうか、我はお前達四人に渡すつもりだったんだがな、他の連中が奴隷に与えるのは駄目だと言って聞かなくてな」


「それはしょうがないと思います」


 この三人は別だが、奴隷にも大きく二つある。

 一つはルリーラが当てはまるが、孤児や誘拐されて売られるなどの外因的な場合。

 そしてもう一つは犯罪者や借金の代わりに身を売られてしまうなどの自己責任の場合。

 そして圧倒的に多いのは後者で、それが奴隷の地位が低い理由の一端でもある。


「我はお前達なら正しく使ってくれると思っているのだが、お前達に会っていない他の連中はな」


「わかっています。一つでも頂けたことは本当に嬉しく思います」


「それならよかった」


 安堵した雰囲気でお茶に口を付ける。


「ここに呼んだ理由はこれを渡すことだが、もう一つ聞いてみたいことがある」


「何でしょうか」


「先日の特級に放った魔法はアルシェの魔法か?」


「えっ、は、はい。起爆は私ですが」


「それについては私が説明します」


 元々奴隷として人の下と思っているアルシェが、人の更に上に居る神と話せるはずもなくおろおろと目を回してしまっている。


「してあの爆発はなんだ?」


「あれの主な原因は水が可燃性の集まりだということです」


「ほう、なるほどよくわかった。それはロックスで学んだことか?」


 たったそれだけの説明で理解してもらえたことに驚く。


「はい、ですが火力の元となるのはアルシェでないとあそこまではいかないと思います」


「そうだろうな一瞬で爆発させるならそれしかあるまい」


 流石は水の神、それが一体どう働くのかを理解して納得する。


「まあわかった所で我はやらんがな」


「ああ、そうかもしれないですね」


 水の神は火の神と仲が悪い、というよりも神々は総じて仲が悪い。


「それゆえに複合魔法を使うものが羨ましくもある」


 そうして神は遠い目をする。

 もしかすると神にも仲が良かった時代があったのかもしれないと考えてしまう。


「それにしても中々面白い面子だな」


「何がですか?」


 確かにベルタとプリズマがいるのは珍しいかもしれないけど。


「それを教えてしまうと、そうなってしまうだろうから言わないでおこう」


「はぁ」


 腑に落ちないが神に話す気はないらしく愉快そうにするだけだ。


「我らにはない睦まじさか。どうなるか楽しみだ」


 もはやこちらに言うでもなく一人で納得して喜んでいる様に見える。


「して、お前達はこれからどこに向かう?」


「まだ決めてませんが」


「なら、我のおすすめはオールスをおすすめしよう」


「オールスですか?」


 オールスって確か風呂が有名な国だったはずだよな。


「オールスに行くの?」


 ここから遠くない国なので一番最初に反応したのはフィルだった。

 テンションが上がっているらしいフィルは目を輝かせる。


「オールスって何が有名なの?」


「そうだな、オールスは――」


「憩いの国オーリス温泉と呼ばれる大きな風呂と、海に近く山を持つため食も美味い。定住ではなく観光を主とした娯楽の国だ」


「行こう、今行こう!」


 水の神が仰った言葉はあまりに魅力的で、聞いていたルリーラは俺を椅子ごと引っ張り出発しようとする。


「まあ落ち着け」


「落ち着いてられないよ」


「この国も見て回るんだろ?」


「そうだった」


 自分が戦闘着ではなくお洒落着なのを思い出して思いとどまる。


「どちらが奴隷かわからないな」


「ええ、最近アルシェも奴隷らしくなくなってきました」


「申し訳ありません」


 アルシェは顔を赤くして手に持っていた菓子を急いで手放しすぐに立ち上がる。


「別に攻めてるわけじゃないから、座ってろ」


 寧ろそういう面をもう少しだして貰いたいと思っている。

 誘惑するのはやめてもらいたいけど。


「ならこれからオールスに向かうということでいいかな?」


「はい」


「それなら我から紹介状を書いてやろう」


「それは流石に」


「ほれ」


 驚くほどの早業で紹介状を書いてくれた神はそれをこちらに渡す。


「ありがとうございます」


 正直ここまで至れり尽くせりでは、明日には死んでしまうんじゃないかと思ってしまう。


「それじゃあ、俺達はこれから準備がありますので」


「うむ、頑張ってこい」


 神に見送られて城を出て船に揺られる。


「じゃあ、次の行先は決まったな」


「温泉の国オールス!」


 娯楽の国と聞いてテンションが上がるルリーラ。


「私温泉って初めてです」


 初めての温泉にはしゃぐアルシェ。


「あたしも楽しみ」


 間延びした語尾が上がりハイテンションに聞こえるフィルとともに、今回必要な物を買いに街の中を探索することにした。

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