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媚薬の後遺症

 翌朝俺は自分の体の痛みで目を覚ました。

 壁に寄り掛かっている自分の状況で昨日のことを思い出した。

 媚薬を少し飲んで、ルリーラを襲いかけたんだった。


 媚薬ってあんな感じになるのか……、一番の原因は媚薬だからではなくミュルダの作った媚薬だからかもしれない。

 微量であの効果ってあれを丸々飲まされてたら本当にリークステイルを出禁にさせられかねない。

 それどころかアリルドとの外交問題になりかねないな。

 即刻これは処分だな。


 誰も触れないように中の液体を魔法で凍らせ、蓋も開かないように凍らせ、更に瓶自体も凍らせる。

 流石にこれだけやれば誰も開けられないだろう。


「クォルテ、何してるの?」


 俺が動いていたからか、ルリーラはもぞもぞと起き上がる。


「ルリーラ昨日は本当にすまなかった」


 俺は昨日のことで素直に頭を下げた。

 媚薬の効果とは言え俺が襲ったことは確かだ。


「きのう……?」


 寝ぼけているらしいルリーラは一瞬疑問符を浮かべ、意識の覚醒と共に昨日のことを思い出し顔を赤くした。

 そして勢いよく布団を持ち上げ自分の体を確認している様に布団が動く。


「は、話に聞いてたよりも、その、翌日に痛みは引きずらないんだね」


 何をしているのか理解した。


「俺が変になった手前、言いにくいんだけどな。俺はお前に手を出していないし、そもそもお前に殴られて気を失ってたんだ!」


 あのまま受け入れられなくてよかったと前向きに考えよう。

 俺がそう決めたにも関わらず、ルリーラは未だに布団で自分の体を隠し続けている。


「だから何もなかったって言ってるだろ」


「ひゃうっ……!」


 何も気にせず俺は布団をはぎ取った。

 本当にいつも通り、寝ているルリーラを起こす様に布団を奪った。

 そこには身を小さくしどこか怯えた表情のルリーラがいた。


「おい、ルリーラだい――」


「クォルテさん、ルリーラちゃん来てますか? えっと……」


 アルシェがこれまた普段通りに入ってきた。

 そして現状を見て困惑している。

 布団をはぎ取る俺の前には、怯えた表情で身を縮めるルリーラ。

 普通な行動しかしていないはずなのに、ルリーラが怯えているせいで明らかにいつもと違っている。


「えっ、あの、クォルテさん、その机の上にあるのって……」


 アルシェは現状に疑問を抱いて答えを見つけたらしい……。

 アルシェの顔から光が無くなる。

 これは流石に詰んだかもしれないな……。


「あさごはんがもうすぐできるのでへやにきてくださいね」


「アルシェ、待ってくれ! 俺の話を聞いてくれ!」


 壊れた機械人形の様なぎこちない言葉と動きで部屋を出ようとするアルシェを俺は必死に呼び止めた。



「事情はわかりました。クォルテさんは、事故で媚薬を口にしてしまい、ルリーラちゃんを襲ってしまった」


「その通りです」


 説明を終え俺はアルシェの前で正座をしている。


「そしてルリーラちゃんはその時のことが怖くなってしまい、クォルテさんの顔が直視できないと」


「うん」


 ルリーラはアルシェの後ろに隠れ俺から姿が見えない。


「ルリーラちゃんもう一度聞くけど、なんでクォルテさんを拒絶しちゃったの? てっきりそのまま受け入れると思ってたけど」


「だって、本当に怖かったの……。私に触れる手も、私を見つめる目も、全部がいつもと違って怖かったんだもん……」


 実際あの時は媚薬の効果で理性なんて消えてた。

 ただただルリーラを犯したくて仕方がなかった。

 本当に昨日は街中で飲まされなくて助かった。


「ルリーラちゃんがここまで怖がるなんてクォルテさんって結構野獣ですね」


「返す言葉がありません」


 仕方ないとは言え、アルシェの言葉には棘があった……。


「ルリーラちゃんは、クォルテさんの事嫌いになっちゃった?」


「ううん、好きだよ! 好きだけど、その怖い物は怖いの……」


 嫌われていないならよかった。

 嫌われていたらショックで引きこもっていたかもしれない。

 ルリーラにそう確認したアルシェは何かを考え始めた。


「ルリーラちゃんがまだ好きなら、いい作戦があります」


 その作戦を聞き逆効果なんじゃないかと俺は少し不安はあったが、ひとまずアルシェの作戦に乗ることにした。



 俺一人だけ自室で朝食を食べた後、荷物をまとめ俺達はリークステイルを出発した。

 操舵をアルシェに任せ、俺は助手席に座る。

 そしてその膝の上にはルリーラが体を小さくして座っている。

 荒療治でアリルドに着くまでの間、俺とルリーラは常に密着していることとアルシェに命令されていた。

 他の連中もそれは承知してはいるらしいが妙に殺気立っていた。


 気まずいことに車内無言、たまに車が段差に乗り上げた音だけが車内に響く。


「パパ、みんなお話しなくてセルク暇だよ。お話して」


「そうだな。俺は後ろに言ってもいいのか?」


「ダメです。セルクちゃんは他の人とお話しててね」


「アルシェママ今日は冷たい……」


 ああ、気がまぎれると思ったのにな……。

 狭いスペースで密着することが重要なのだと、アルシェに厳命されているせいで俺は助手席に縛り付けられている。


 アルシェって俺の奴隷だよな。

 なんで俺奴隷の言うこと聞いているんだろう……、まあ、別にいいんだけど、今日はなんか強引な気がする。

 自分で現状がよくわからなくなりながら、俺はアルシェの言うことを聞いていた。


 その時ルリーラがもぞもぞと動き出す。

 座り心地が悪いのか、それとも俺の恐怖からかいつものように暴れるわけでもなく、小さく動く。

 ルリーラの臀部が俺の内ももをゆっくりと刺激している。

 痛さとは違うもどかしい感触。

 ただでさえ刺激に弱い内ももを刺激され、俺も姿勢を変えたくなるが、ここで動いてはルリーラが悲鳴を上げかねないため俺は我慢するしかない。


「ルリーラちゃんも離れたらダメ。いつも通りくっついてて」


「はい……」


 アルシェの指示でルリーラは俺の体と密着する。

 背中を俺に預けぴったりと俺に密着する。

 まだ媚薬が残っているんじゃないかと思うほどに鼓動が高まってしまう。


 こんな生殺しのまま耐えること二週間。

 俺達はようやくアリルドに到着した。

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