表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/174

ミュージアム その二

「美味しかったね」


 一度は失敗したが、その後やり直してジュースをみんなで飲むことができた。

 出来上がったのは果物のジュースの様でじんわりと甘くルリーラの言う通り美味しかった。


「どうします? もう少しここで遊びますか?」


「ねえねえ、ここの番号他のと違ってるけど何?」


 ミールの質問を完全に無視してしまっているが、まだ遊び足りないらしいのでもう少しここで遊んでいくことにした。

 ルリーラが言っているのは十の扉で、他の扉と違い赤い色をしている。


「これは魔法が必要な印です。何も魔法がいらないものが白色、火の魔法が必要なら赤で水が青、地が黄色で風は緑色で数字が書いているんです」


「じゃあ、ここは火の魔法が必要ってことなんだ。アルシェがいるから入ってみよう!」


 ルリーラが暴走している……。

 楽しそうなのはいいけど、付き合わされるこっちは体力が持つかわからないんだよな……。

 ルリーラ以外が(つら)くなるのを理解しているが仕方なく十の部屋に入ることにした。


 今回の部屋も狭い一室だが、テーブルが多い。

 さっきと同じでビーカーが置いてあり、石のテーブルに石の箱なんかも並んでいる。

 正直何をしたらいいのかわからない。


 今度もテーブルの上には一枚の紙が置いてある。

 紙を手に取り書いていることを内容を見ると『手順一 台と同じ四種類の粘土作れ』と書かれていた。

 今回のヒントは中々に面倒くさいな。

 手順一ってことは最低でももう一つ手順があるはずだ。

 それをクリアしないとダメなんだな。


「台ってこれの事?」


「台っていうか皿みたいだな。それに四枚あるぞ」


 薄く平べったい器は四枚とも石の箱の中にあったようでそれぞれの色の名前が書いてあった。

 四色の粘土を作ってここに並べろってことか?

 そうなるとまず粘土を作るための材料が必要だな。


「こんなのがありましたけど、これを使うんでしょうか?」


 アルシェが見つけたのは粘土の素と書かれていた袋だった。

 中を確認するとどうやら小麦粉らしい。

 小麦粉と火の魔法と言われると爆発する姿が思い浮かんでしまう。

 なるべく慎重に扱うと心に決め、最初の手順に従うことにした。


「色付きを作るってことは小麦粉にこの液体を混ぜるんだよな」


「クォルテさんこれ小麦粉じゃなくて薄力粉です。たぶんですけど今回のお題はクッキーを作ろうとしてるんだと思います」


 アルシェは薄力粉を手に持っているが俺にはその違いがいまいちわからない。

 でも料理が得意なアルシェが薄力粉だと言っているのだからその通りなのだろう。


「見たところ砂糖とかはなさそうですし、必要な物がこの液体に入っているんだと思います」


 ビーカーを手に持ち揺らしたりして何かを確認しているらしいが、正直俺にはさっぱりわからない。


「お菓子作りってことならここにリコッタで四位に入った三人がいるんだし任せようかな」


 全くの素人が触れるよりも多少経験がある三人に任せた方がマシだろう。


「任せてください」

「今回私の出番はないみたいだね」

「私の仕事もなさそうです」


 自信があるのはアルシェだけの様で、ルリーラとミールは早くも戦線離脱した。


「二人も手伝ってください。頑張って作ったらクォルテさんから褒めてもらえるかもしれませんよ」


 その言葉にルリーラとミールは目の色を変え俺を見た。

 アルシェも俺を見て褒めてくれますよね? という顔をしている。


「わかったよ。三人が頑張ってくれるなら俺も嬉しいしな」


 俺がそう言うと三人はすぐに作業を開始した。


「混ぜる分量は紙に書かれていませんので、少し水分を少なくしています。全部混ぜたら教えてください、硬さを見てもう少し水分を追加します。しっかりと混ぜないと粉っぽくなってしまいますので丁寧に混ぜてくださいね」


 アルシェの支持の元調理が開始された。

 その間何もやることのない俺は部屋の中を色々見てみることにした。

 手順一の紙はあったが、手順二以降の紙はまだ誰も発見していない。

 おそらくこの部屋のどこかに他の手順書があるのだろうと部屋の隅々を探し始める。


 三人の邪魔にならないようにみんなから離れている部分から捜索を始めた。

 おそらくクッキーの型を取る道具の側に紙が一枚置かれていた。

 書かれている内容は『手順三 好きな形に切り取ろう』という急に対象年齢が下がった文句だった。

 もしかするとここから子供向けの作業なのかもしれない。


 更に辺りを探索すると手順四の紙を発見した。

 中身は『手順四 灼熱にさらされた箱に彼らを閉じ込めろ』だった。

 どうやら手順三は本当に子供向けの命令だったらしい。

 でも手順四で焼きに入るって慣れていないと作れないんじゃないか?


 それからトッピング作成の書かれた手順五、手順六と見つけたが手順二だけがどうしても見つからない。


「後は生地を休ませて焼けば完成です」


「結構簡単だね」


「私にも出来そうです」


 どうやら生地作りは完成したらしい。


「生地はできたのか?」


「できたよ。できたならあの台に乗せればいいのかな?」


「そうなんじゃないか?」


 だからこそ同じ色の生地を作らせているんだろうし。

 ルリーラは持っている青い生地を持って台の上に乗せた。

 そして次の瞬間には生地は盛大に弾け飛んだ。

 ペタペタと周囲に生地が弾け悲惨な状況になってしまい、これが赤い生地じゃなくてよかったな。

 などと思ってしまった。


「何か私間違えた?」


 目の前で弾け飛んだ生地を涙目で見つめたルリーラに近づき慰める。

 色を間違えたのかと思い台を見ると間違いなく青の台だった。

 どこかに何かヒントがあるのかと思い台を持ち上げると、台の下から紙が落ちてきた。

 その紙には『手順二 粘土を変化した色の台に置け』と書かれていた。


「兄さんこの生地色が変わってきています」


「そうだと思う。手順書にもそう書いてた」


 そりゃそうだよな。

 薬品を組み合わせて謎を解くのにただこねて台に置くだけなんてはずはないよな。


 盛大な間違いを犯した俺達は改めてクッキーを作り直した。

 アーモンドのトッピングとお茶のクッキーが美味しかったです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ