入所ですな
「・・・最後になるが、君たちはいずれ世界に必要とされる人材だ。
ここの規則を覚えているね?
1、正しくあれ。
2、強くあれ。
3、生きろ。
この三つに反した者は、残念ながらここでの生活で
いずれ第三の規則を守れなくなるだろう。
覚悟して、臨むように。」
校長の話がクソ長いとか、そんなベタなお約束展開が
あったわけでもなく。
無事に、入所式が終わった。
最後のあたりがすこーし・・・いや結構気になるが。
第二章
邂逅、既視感
感情養成所。
たった五文字の中に、あふれ出んばかりの胡散臭さ。
だが、れっきとしたここの名前だ。
まあ言ってしまえば、「気」使いの養成所なんだが。
経緯を説明しよう。
それは、突如として起きた。
「気」の発生。
「気」は、言い換えると感情そのもの。
持たざる者は存在しない、といわれている。
感情は、実体を持たず、かつ不可視だ。
言霊は、実体を持ち、不可視ではない。
その丁度中間。
実体を持たないが、不可視ではないものが、「気」だ。
2020.01.01.00:00:01。
この時間。
これより後に生まれた者で、
一千万人に一人。
そんな馬鹿げた確率で、「気」使いが生まれる。
何故か。知りたい者は山といる。
だが、誰も知らない。
知った者は、恐ろしいことに。
自ら命を絶つのだ。
説明終了。
養成所というにはあまりに巨大な施設。
東京のど真ん中にあるというのに、
周りは深い森。
一辺50kmの正方形の敷地に、
その施設は建っている。
一応学校なのだ。一応。
表向きは。
だが、この養成所。
教師がいない。
いるのは施設の管理者のみ。
流石にこの話が校長の口から出たとき、
新入生はざわめいた。
たった十人の新入生。
先輩も後輩もいない、第1期生というやつだ。
去年までは九人とも東京の学校に身を潜めていたらしいが、
この施設ができたため、堂々と転校・・・?してきた。
転校と言うより、政府から招集がかかった。
といった方が正しい。
胡散臭さ極まる。
だが悪い話でもなさそうなのも事実、否めない。
「気」が目覚めて以来、どんなに心を許せる相手でも
「気」使いであることは特一級秘匿事項(国家レベル)だった。
逆に考えると、一億二千万人の好奇の視線から
十五年間も逃げ切ったということだ。
ただ者ではない。
残りの九人も、恐らくそうだろう。
ここでは、毎日生徒一人が教師になり、
感情の養成に関わる活動を自主的に行うこと。
本当に、ただ本当にそれだけしか指導はなかった。
何をしてもいいか、そういうわけではなかろう。
国民である以上、憲法や法律などは適応されるはず。
そう思っていた。
一人で考えを巡らせていると。
ふと、視界に意識が行く。
ずっと、自分が歩いてきた廊下の先に。
紅い、肩に掛かった髪。
文字通りの燃えたぎる闘志。
「見つけた」
その言葉。言霊が練られたな。
有無を言わさず飛来する、秒間十五発の弾丸。
かくして、不愉快な仲間たちとの青春が幕を開けた。