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猟兵としての生き方  作者: touhenboku
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よろしくお願いします。

追記:2017/12/25に改稿しました。一部設定に変更を加えています。


「え? いきなり何が起こった? それに、ここは一体……?」


 見渡す限り、白い一面が続く世界。

 上を見ても、下を見ても、左右を見ても、広がるのは果ての無い白い空間。

 そんな空間に、ラフで地味な服装の黒目黒髪の、背が高い事以外の容姿はいたって普通と平平凡凡な男が一人、ポツンと立っていた。

 事情を把握できない彼は周囲を見渡しながら戸惑いを隠せずにいた。


「(落ち着け…… こういう時は自分の事や直前の状況を思い出して気を落ち着かせるのが一番だ。

 俺の名前は相場浩一。26歳のサラリーマン。趣味はネットサーフィンやライトノベルをはじめとするネット小説を読むこと。

 つい先ほどまで自室であるアパートの一室でネット小説を読んでいて、明日も早いからそろそろ読むのをやめて寝ようと考えていたところ、気が付いたらこんなへんてこな空間に突っ立っていた。

 ……よし、落ち着てきたぞ)」


 精神に余裕を取り戻してきた浩一は改めて周囲に視線を巡らせる。

 見たところ自分以外の人の姿は全くなく、目印となるようなものも無い。


「(う~ん、動くべきか動かざるべきか迷うな。下手に動くと現在地を見失いそうだ……というか、今現在俺はどこにいるんだ? そもそもこの空間は何だ? そしてなぜ俺はここにいる? ……くそ、わからないことだらけだ)」


 頭をガシガシとかく浩一。


「(だが、この状況に類似する事例を、俺は知っている。

 ネット小説といった創作物の中などでしかありえない現象なので確実とは言えないが、概ねこういった空間は、神やそれに類する存在が何らかの目的をもって作り出したものとされることが多い。

 もっとも、ネット小説に毒された自分が見ているただの夢であるという可能性も否定できないが果たして……)」


 その答えは、浩一の頭上からもたらされることになった。


「は~い、次の方、お待たせしました~」


 妙に明るいその言葉に、浩一が見上げると、そこには一抱えはありそうな大きさの、青白くきれいに輝く光球(こうきゅう)がいつの間にか浮かんでいた。


「おはよう。こんにちは。こんばんは。初めまして。ボクは君たち人間が崇め奉る神様の一柱で~す」


 やけにテンションの高い神を自称する光球の出現に、浩一は頭を抱える。

 これが現実だとすると何か厄介ごとに巻き込まれるのではという不安に苛まれ、これが夢だとすると自分がどれほどネット小説に毒されているのかということになる。


「おんやぁ~? 反応が薄いね~。だからと言って畏まって礼を取られても困るんだけどね~。そう考えると、この反応が一番かな? うん、結構結構」


一人納得(この場合は一柱納得?)する光球は続ける。


「突然の出来事で大いに戸惑っていることだろうね。うんうん。わかるよ~その気持ち。ボクも突然今回の“神様の遊び”の説明役に抜擢されたからね~。もぅいやになっちゃうよ。事前に連絡の一つでも入れろってもんだよね~。

 でも選ばれたからには役割を全うしないとね。ボクも、君たちも、ね」


「あ、あ~、待ってくれ、神様? これは現実、それとも夢? 一体どっちなんだ? 俺としては夢であってほしいんだが。

 それに先ほどから気になっているんだが、“次の方”とか“君たち”と言っているが、ここには俺しかいないぞ。どういう意味だ?」


 浩一の待ったに、光球は「このやり取り、またか~」といった雰囲気を滲ませる。


「現実だよ~。夢じゃないよ~。それにボクは本物の神様だよ~。まぁ、その根拠は後々説明させてもらうね。

 そして次の質問の答えだけど、みんなを一か所にまとめて説明をするより、個別に説明をしたほうが実は効率が良かったと過去の事例から判断されたから、今この場には君一人しかいないんだよ。まぁ、稀に例外はあるけどね。双子とかの場合だね。

 今説明できるのかはこんなところかな? というわけで、これからは黙ってボクの話を聞いてくれると嬉しいな~」


「はぁ、わかりました。とりあえずあなたが神様であるかどうか、現実か夢かどうかは保留ということにさせてもらって、話は聞かせてもらいます」


「それで結構。では、どうして君がここにいるのかを説明させてもらうね」


 オホン、と光球は咳払いし、浩一は姿勢を正す。


「さて、君たちは選ばれた。“神様の遊び”、というものに。

 どういった遊びかというと、君が『現世(うつしよ)』と呼ぶこの世界からボクたちが作った世界、『ルジャルダン』に行ってもらい、そこで生活してもらう。

 聞いたことないかな? 創作物のジャンルでよくある異世界転移ってヤツ。それだと思ってくれていいよ。あ、聞いたことがない? 簡単に説明すると、文字通り、今いる世界から異なる世界に転移、つまりは移動して、そこで生活することだよ」


 異世界転移。

 その言葉に、浩一の表情が驚愕に彩られる。

 数多の創作物の中にある空想の産物。

 現実にはあり得ない出来事。

 まさかその当事者になろうとは夢にも思わなかったからだ。

 もっとも、いまだ、これは自分が見ている夢の中の出来事という可能性は捨てきれないのだが。

 光球は続ける。


「話がちょっとずれたね。元に戻すよ。

 もちろんただ生活してもらうだけじゃない。それだとボクたちの遊びにならないからね。

 『ルジャルダン』は中世ヨーロッパを参考にして作られた剣と魔法のファンタジー世界。当然モンスターと呼ばれる危険な存在なんかもいるよ。

 君たちはそこで『猟兵(イェーガー)』という狩人兼傭兵として生きてもらい、ボクたち神様の、“誰が一番長生きできるのかを当てようゲーム”の“駒”になってもらうのさ」


 その言葉を聞いて、浩一は絶句する。

 今、この光球は何と言った?

 誰が一番長生きできるのかを当てようゲーム?

 その駒として、自分たちが選ばれた?

 冗談ではない! 人の命を何だと思っている!

 抗議の声を上げようとするも、それを遮るように光球は喋り出す。


「参加なんかしたくない! 拒否させてもらう!

 今までも何人かの人はそう言っていたよ~。うんうん。そう思うのも無理もないよね~。誰だって自分の命をもてあそばれるのは面白くないもん。

 でも、もう決まったこと。今更変えることなどできはしないし『現世』に帰ることもできないよ。運がなかったと思ってあきらめることだね。

 あ、そうそう。君たちが『ルジャルダン』に行くとなると『現世』に残された家族や仕事はどうなるのかって、心配になるでしょ?

 だいじょ~ぶ、安心して。“君たちの存在は最初からなかった”として世界が再構築されるから問題ナッシング! 家族が悲しみに暮れる事もないし、仕事の引継ぎも心配ないよ。

 そして君たちが『ルジャルダン』で夜な夜な望郷の念で枕を濡らすことがないように、“家族や友人、故郷の情景といった大切な記憶”を消去してあげています!

 うん、ボクたちって優しいなぁ~」


 光球の言葉を聞き、浩一はハッとする。

 確かに自分の事についての記憶はある。だが、家族、友人、故郷といったものの記憶が思い出せない。

 どんなに頭をひねって思い出そうとするも、まるでぽっかりと抜け落ちてしまったかのようだ。


「お? その様子だと思い出せないことに気が付いたみたいだね。

 今まで覚えていたものが、忘れるはずのないものが、記憶の中からぽっかり消える。

 記憶喪失や認知症に罹患していなければ、そんな状況に突然陥るのは神の所業でしかありえない。

 だからこれが、ボクたちが神であるという、まごうことのない証明であるというわけさ」


「だ、だがっ! これが夢であるという証明にはならないっ!!」


「今からでも好きなだけ手の甲をつねったり頬を叩いてみたりすればいいさ。痛みを感じるだけで、この世界から抜け出すことはできないよ。

 アナログだけどこれが一番夢ではないと理解してもらえる方法なんだよね~」


 光球に言われるがまま、焦る浩一は手の甲をつねったり、頬を叩いてみたりする。

 だが、一向に夢から覚める気配はなく、痛みと徒労感だけが体に蓄積されてゆく。

 そして浩一はペタンと力なく床に座り込み呆然と光球を見上げる。

 これは夢ではない。まぎれもなく事実なのだと理解する。


「消沈しているところ悪いけど説明を続けるよ~。

 “ゲームの駒”として君たちは『ルジャルダン』に転移してもらうけれども、何も身一つで行ってこいってわけじゃぁない。いくつかの特典をルールにのっとって選ばせてあげよう」


「特、典……?」


 浩一は呆然としつつも、光球の放つ言葉に反応する。


「そう。特典。

 初回は酷かったんだよ。『猟兵』という職業と特典をあげずに送り込んだら、一か月もしないうちに“全員が死んじゃった”よ。

 町や村に到着する前にモンスターや獰猛な獣に襲われたり、盗賊に襲われたりして死んじゃって、ようやっと町や村に到着したとしても、会話ができないからそこにいられなくなって追い出され、野山を彷徨って野垂れ死になんてのがほとんどだったよ。

 ちなみに、初回で一番長生きしたケースは、悪徳奴隷商人に奴隷として捕まって、鉱山で労働奴隷として劣悪な環境で働かされて病死した、だったかな?

 それであーでもないこーでもないって、ボクたちが頭をひねって考えた末に、『猟兵』という職業と各種特典を与えようって決めたんだ。うまく使えば、安心して生き抜くことができるようになるんだよ~」


 全員が死んじゃった。

 モンスターや獰猛な獣に襲われたり、盗賊に襲われたりして。町や村から追い出されて野山を彷徨って。そして奴隷として捕まり、劣悪な環境で働かされて。

 これらの言葉を聞いて、浩一は気落ちした心を無理やり奮い起こして立ち上がる。

 そうだ。これから自分はこの神たちが主催する、生死を賭けたろくでもないゲームに強制的に参加することになるのだ。

 こんなところで消沈などしていられない。

 していたら、あっという間に死んでしまう。

 死んでたまるか! 寿命まで生き延びてやる!


「お、復活が早いね~。いいよ、いいよ~。うじうじするより建設的だ。そんな君にプレゼントだ。と言っても、全員に渡しているものなんだけどね~」


 光球がそう言うと、浩一の目の前に光の粒子が集まり、それは巷でよく見るタッチパッド付きのノートパソコンの形をとる。

 ノートパソコンは床に落ちることなく、ふよふよと空中に浮いていた。


「このノートパソコンを使って各種特典を選択し、獲得していってね」


 浩一がノートパソコンを手に取るのと同時に電源が入り、画面に文字と数字が浮かんだ。


「最初に、この三つの中から一つを選ぶんだよ。

 一つ目、『ルジャルダン』共通言語会話と6,000ポイント。

 二つ目、『ルジャルダン』共通言語会話と共通言語識字それに3,000ポイント。

 三つ目、『ルジャルダン』共通言語会話と共通言語識字、『ルジャルダン』一般常識、そして1,500ポイント。

 これらには共通して支度金が五十万ヒェルト付随されているよ。

 この三択は、選んだら変更はできないのでよ~く考えて選択するようにね。

 そしてポイントを消費して『スキル』を習得してそのレベルを設定しつつ、支度金を用いて装備と道具を整えよう。これは制限時間である二十四時間内だったら何度でもやり直すことが可能だよ~。

 だからこの『スキル』を習得したのに生かすための装備や道具が揃えられない。もしくはその逆なんてことは、よほど『スキル』や装備と道具の選択に失敗しない限り起こり得ないはずだから安心してね~。

 ただし制限時間内に決められなかった場合は、こちらでランダムに『スキル』と装備や道具類を決めてしまうから注意が必要だよ~。

 時間制限を設けていなかった昔はいたんだよね~。決まるまではこの空間にいられるから死ぬことはないって理屈をこねて選択しようとしなかった人が。その時は問答無用でランダム選択させて『ルジャルダン』に送り込んだっけ」


「質問があるがいいか?」


 浩一は画面から光球へと視線を移しながら問いかける。


「はいはい。質問は受け付けますよ~」


「まず、『猟兵』とはなんだ? 狩人兼傭兵とのことだが詳細を教えてほしい」


「『ルジャルダン』はお世辞にも治安が良いとは言えないんだよね。モンスターや獰猛な獣、野蛮な盗賊がいるからね。

 そういった存在から人々を守る存在の一つが『猟兵』さ。

 田畑を荒らすモンスターや獣を狩り、田畑を守るだけでなく、それらから有益な素材をはぎ取り獲得して市場に流す“猟師”としての役割。

 そして街道をゆく行商人をモンスターや獣、盗賊等から守り、各町村を繋ぐ物流を円滑に回す手伝いをし、戦争といった争い事の際に傭兵として雇われる“兵士”としての役割。

 そういった武力を必要とする、誰もがやりたがらないが誰かがやらなければならない血生臭い仕事を請け負う職業なのさ。

 まぁ、場合によっては前人未踏の地へと向かって希少な動植物を採取してくるなんて言うスリリングな冒険を請け負うこともあるけどね~」


「……聞く限り、まっとうな職業とは思えないんだが?」


 頭に手を当てながら呻く様に言葉を紡ぎ出す浩一。


「そうだね~。

 体力と、最低限の知恵と倫理と装備があれば誰でもなれる職業だから、手に職を持てなかった貧乏人などが日雇い感覚で『猟兵』をしている場合もあるよ。怪我等で人の出入りが激しいからいつでも人員募集中なのがそれに拍車をかけているね~。

 だからゴロツキ一歩手前の社会の底辺がなる職業と見られているから、社会の目は厳しいものがあるよ~。

 けど『ランク』が高くなるとその限りではないけどね」


「『ランク』?」


 知らない単語が出てきて、頭をひねる浩一。

 思わず聞き返しても、浩一は悪くない。


「そ、『ランク』。

 『猟兵』はその能力に応じて下から順にF、E、D、C、B、Aの六つの『ランク』に分類されているよ。

 最初はFから始まって、仕事の達成率や本人の強さ、そして社会への貢献度を考慮されて徐々に『ランク』は上がってゆくよ。

 仕事の達成率が良いということは稼ぎが良いということだね。それに荒々しい仕事をこなせるということは強い事の証明でもある。社会への貢献度があるということは社会に対する関わりが強く影響力があることに繋がる。

 だから必然的に高ランクになればなるほど、金持ちの強い武力を持った権力者となるから、社会の目は必然的に畏敬や畏怖へと移ることになるよ~」


「『ランク』は低いよりも高いほうがいいが、『猟兵』は万人受けしない職業ということか」


「そーゆーことだよ~。ちなみに君たちは強制的に『ランク:F』からのスタートとなるからね~」


 ありがたくて涙が出そうだと浩一は思った。


「わかった。次の質問だがモンスターと獣の違いとは何だ? 今一よく分からない」


「獣はそのまま、ただの動物さ~。狼や熊、豹や虎、そういった獰猛な動物が該当するね。

 モンスターは『現世』ではありえない生き物の総称さ。例えば、人体ほどの大きさもある昆虫とかだね。他には『現世』では空想上の存在とされている生き物も含まれるね。ゴブリンとかドラゴンとかがいい例だね~。

 ちなみに乱暴な分類分けだけど、モンスターと獣の違いは、体内に『魔石』と呼ばれる鉱物があるかないかだね~。無いのが獣、有るのがモンスターと覚えておこう。

 この場で説明できるのはこんなところかな~?」


 光球のこの言いよう。

 ここでは説明できないことがあるということだ。

 詳しい事は『ルジャルダン』一般常識で入手しろという事だろうかと、浩一は考察する。


「『ルジャルダン』は剣と魔法のファンタジー世界とのことだが、魔法について教えてほしい」


「魔法、それは『スキル』として習得することで使えるようになる、超常現象を操れるようになる力だよ~。

 設定としては、『ルジャルダン』にいるすべての生命体は『体内魔素(オド)』と呼ばれる特殊なエネルギーを有しているんだ。その『体内魔素』を用いて、大気中に存在する『体外魔素(マナ)』に関与し、魔法を行使しているんだよ。

 魔法を使えば使うほど体内に有している『体内魔素』を失っていき、総量が半分あたりを切ると体がだるくなって、枯渇すると気絶しちゃうよ。あぁ、安静にしていると『体内魔素』は自然回復するから枯渇しても心配は無いよ。

 他にも色々と設定があるんだけど、今ここですべてを説明することは難しいんだ。

 だから、このくらいの説明で勘弁してね~」


 ここでも説明を濁した。

 『ルジャルダン』一般常識の重要性が増しつつあると浩一は感じた。


「ポイントを消費して『スキル』を習得するとなっているが、『スキル』とは何だ? そして『スキル』のレベルとは一体?」


「『スキル』はね~、それは人知を超えた力を発揮する技能の総称。これは有ると無いでは結果や効果に雲泥の差が表れるんだよ。

 例えば【格闘術】の『スキル』を持った素人格闘家と、【格闘術】の『スキル』を持たない玄人格闘家が戦った場合どちらの勝率が勝るだろう?

 その結果はなんと! 勝敗は五分五分になるんだよ。

 なぜなら【格闘術】の『スキル』が、格闘に関する技能を向上させたからだよ~。

 そして『スキル』には『Lv.(レベル)』があって、『Lv.1』から始まって最大値は『Lv.10』となっているよ。

 極端な例だけど、【格闘術:Lv.10】の『スキル』を持った素人格闘家と、【格闘術】の『スキル』を持たない玄人格闘家が戦った場合、素人格闘家が圧勝するね~。

 だからなるべくなら『スキル』の『Lv.』は高くしておいたほうがオススメかな~。

 それから、中には『スキル』として習得しないと扱えない技能もあるよ。先ほど触れた魔法がそれに該当するね~。他にもそういった技能があるよ~。

 こんな説明でいいかな?」


「なるほど。『スキル』とそのレベルが『ルジャルダン』で生きていくうえで重要だということは理解した。じゃぁ、その『スキル』には一体いくつの種類があるんだ?」


「種類の数は膨大だよ~。今手に持っているパソコンで『スキル』を習得する際に、検索キーワードに文字を打ち込むと、それに関する『スキル』がずらっと羅列されるからそれを見て決めるといいよ」


 試しに打ち込んでみたいところだが、先ほど光球が示した三択の画面で表示が止まっている

 ここは光球の言うことを信じよう。


「『スキル』を取得するのに必要なポイントは、一律同じなのか? 『Lv.』を高くしても変わらないのか?」


「違うよ~。

 ここでしか手に入らない『スキル』で効果が高いものであればあるほど消費されるポイントは高く設定されているよ。

 逆に『ルジャルダン』で簡単に手に入る『スキル』は、消費ポイントは低く設定されているからね~。

 そして『スキル』の『Lv.』を高くしようとすればするほど、消費されるポイントも高くなるから注意してね~」


「『スキル』は簡単に手に入るといったが、どういった方法で手に入れることができるんだ?」


「『ルジャルダン』では、『スキル』を手に入れることができる『技能紙(スキル・パピエ)』と呼ばれるものが市販されているんだ。『技能紙』の種類は多種多様。これを購入し消費することで『スキル』を入手できるよ。ただし有用な『スキル』であればある程、値段が高くなるよ~。

 これも色々と設定があるけど、今説明できるのはこれくらい。勘弁してね~」


 ここでもか。

 『ルジャルダン』一般常識は最重要選択項目にしても問題ないと浩一は判断する。


「『スキル』の『Lv.』はここでしか上げることができないのか? 『ルジャルダン』での生活で上昇することはあり得るのか?」


「『ルジャルダン』で上げることはできるよ。ただし定期的に使わないと上がらないし、どのくらい『スキル』を使ったから『Lv.』が上がるのは人によるとしか言えないから、高い『Lv.』の『スキル』保持者は少ないよ。

 ちなみに高い『Lv.』の『スキル』保持者は希少で、その『スキル』がもたらす効力は絶大だから、お金を払ってでもその高い『Lv.』の『スキル』の恩恵に授かりたいって人もいるね~」


「お金と言えば、ヒェルトは金額の単位だと思われるが一ヒェルトは何円に換算される?」


「一ヒェルトは一円だよ。

 ちなみに硬貨の種類は、一ヒェルト硬貨。五ヒェルト硬貨。十ヒェルト硬貨。五十ヒェルト硬貨。百ヒェルト硬貨。五百ヒェルト硬貨。千ヒェルト硬貨。五千ヒェルト硬貨。一万ヒェルト硬貨。五万ヒェルト硬貨。十万ヒェルト硬貨。五十万ヒェルト硬貨。百万ヒェルト硬貨。五百万ヒェルト硬貨。一千万ヒェルト硬貨。五千万ヒェルト硬貨。一億ヒェルト硬貨。となっているよ~。

 もっとも、五万ヒェルト以上の硬貨は使用機会が限られているから、めったに見ることはないと思うな~」


「そうか。銅貨、銀貨、金貨といった分類ではないみたいだな」


「うん。特殊な合金に金額に見合った文字や数字が刻印されていて、金額に応じて硬貨の形状も違うから、それで見分けることが可能だよ~」


「ポイントや支度金を使いきれなかった場合、それらの扱いはどうなる?」


「残余ポイントは『1ポイント×千ヒェルト』」の計算式で現金化されて、余った支度金に合計されて転移後の生活費として使用可能となるよ~。

 やろうと思えば『スキル』を一切取らずに全ポイントを生活費にすることもできなくもないね~」


 そんなリスキーな選択をする人物がいるのだろうかと浩一は思った。

 少なくとも、自分はそんなことはしない。


「HPやMP、体力や知力といった能力の数値化はされないのか?」


「されないよ~。ぶっちゃけ処理が面倒だからね」


「制限時間内にすべてを決め終えた場合、何かしらのメリットはあるのか?」


「ないよ~。デメリットも無いから安心してね~。

 さて、質問は出尽くしたかな? そろそろ選択の時間に突入してもらいたいんだけど?」


「最後に一つ。選択の途中でまた尋ねたいことが出てきた場合、質問することが可能か?」


「可能だよ。ちなみにそのノートパソコンにはQ&Aシステムが搭載されているから、それで確認することもできるようになっているよ~」


「了解した。それじゃぁ、選択に入らせてもらう」


「うんうん。待ってました! それじゃぁ、今から制限時間二十四時間の選択タイムの始まりだ! よ~い、スタート!」


 浩一の手が、ノートパソコンへと伸ばされた。




読んでいただき、ありがとうございました。

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