鼓動2
大介がアンプの前に立って
チューニングをはじめると、
洋子はその左側にポジション
を取り、合図を待っている。
ドラム付近の謙二と説子を挟んで
右側にユカが陣取り。
大介はそれを確認すると、
「洋子、合図を出したら
はじめるんだ!」
「うん、わかった」
「うまく教えられないけど、
音楽には間とか、呼吸とか、
経験を積まないとどうしても
わからないないものがある。
回数を増やせば、
なんとかなるから焦らないでくれ。
もし、途中でわからなくなったら、
そこにコード表が置いてあるから見てくれ」
「わかったわ」
「じゃあ、いくぜ」
と大介が叫ぶと。
同時に左指は5フレットから
素早く動きだし、リフを奏ではじめた。
タララ、タララらら~。
タララ、タララらら~~。
スライドとチョーキング、そして
右手のピックがめまぐるしく弦を交錯する。
一斉に他のメンバー
が演奏を開始した。
スピードに乗った
まずまずので出しである。
大介の歌がはじまった。
「Deep down in Louisiana,
close to NewOrieans~」
1、2コーラスは
無難に進んでいく。
だが、ギターソロに入ると
みんなの演奏が合わない。
ユカが右手を大きく振って合図を出す。
謙二はそれを合図に
ドラムを叩くのをやめてしまった。
ユカはすかさず、
「大介どうしたの?
先走っちゃって…。
全然合ってないじゃない」
「いや~、なんだか
入れ込み過ぎた」
「私のせい?」
「いや、洋子のせいじゃない」
「みんなとテンポを
確認しないかった俺が悪い。
謙二、8ビートを叩いてくれ」
「はいよ!」とバスドラとスネア、
そしてシンバルを叩いてリズムを刻んでゆく。
「洋子、このテンポを
よく叩き込んでおいてくれ」
「わかったわ」
「大介!もう少し
早いほうがいいかな」
「いや、こんなモンでいこう。
みんなもう1回頼む。仕切り直しだ」
と再び気を引き締め、
大介はリフをスタートさせる。
タララ、タララらら~~。
タララ、タララらら~~。
タララら、タララら、タララ~~ん。
ぽかんと立っていた
説子を見て謙二が叫ぶ。
「セッちゃん踊って」
「え~、何?」
「リズムは躰で覚えるのが一番なんだ」
「え~、ただタンバリンを
叩けばいいってものじゃないんだ?」
「ビートを躰で感じるんだ」
「わかったわ、やってみる」
そんな外野のシーンに踊らされる
ことなく大介は集中して、
すっかりジミー気分になっていた。
しかし、洋子はまだみんなに
ついていくことができなかった。
ギターソロに入るところで大介が叫ぶ。
「洋子、ベースラインに合わせるんだ!」
「え~~、何?聞こえない」
「みんなと同体になるんだよ」
演奏は3コーラスに入った。




