鼓動1
あれから数時間、
窓に注ぐ西日がオレンジ色に染まってきた頃、
おのおのメンバーたちの
演奏も熱を帯びてきた。
洋子は指示通りに8割方
サイドギターの演奏をマスターしていた。
その様子を見て大介は、他のメンバー
に音合わせを申し込もうと席を立つ。
そして謙二に近づくと、
「進み具合はどんな感じだい?」
と確かめる。
すると謙二は、
「案外、打楽器は
簡単そうに見えるけど、
綺麗な音を出すのは結構難しい。
ちょっとでもタイミングがズレる
とコミックバンドのオチになっちゃうからな。
一定のリズムを刻めるように
なるにはある程度時間をもらわないと」
「そうか、じゃあ
説子はコーラスだけにするか」
「今回はそれしかないけど、
今後はデジタル・ハンド・
パーカッションに挑戦しても
いいんじゃないか、と思うんだ。
それだったら手や指で、
直感的な演奏ができるから
女の子でもやりやすいと思う」
「ヘェ~、面白そうだな。
でも高いんじゃないか?」
「うん、8万円ぐらいするかな…」
「ふーん説子、腹はどうなんだ」
「すぐには高いから買えないわよ。
どんな楽器なのか、実際に確かめたいし」
「うん、そうだな焦る必要はない。
これからどういう音楽をやるのか、
決めてからでも遅くはないからな。
謙二、そろそろ夕食の準備を
しなくちゃいけないから、
その前にみんなで1度合わせてみないか?」
「そうだな大介、説子には
タンバリンをやってもらおう。
歌はどうする?
ユキチを呼ぶかい」
「説子 、やってみるか?」
「無理よ大介、サビだけならいいけど」
「そうだよな、じゃあ俺がうたうか」
「ええ~、大介がうたうの?」
「悪いか、洋子!
俺はこの曲を徹底的にコピーしたんだ。
ジミヘン・バージョンが面白いと思う」
「ヘェ~大介、
ジミヘンのジョニビーグッ
なんて聴いたことがないわ」
「ユカ、Aのブルース
進行でいくぜ」
「あら、ベースはどんな
バージョンでも大丈夫よ。
大介、歯を使ってギター・ソロやるの」
「あは、そんな芸当無理に決まってるだろ。
謙二、8ビートでついてきてくれ」
「OK、わけないよ」
「実、参加できるか?」
「大介悪い、いいメロディーが
閃いてるんだ。あとで参加する」
「よし、じゃあいくぜ。
ディストーションをフルスロットルだ」
当時のジミ・ヘンドリックスといえば、
ギターの神様とまでいわれたエリック・クラプトンですら、
同じフェンダー・ストラトキャスターを使いたくない、
といわせたほどエキセントリックなギタリストだった。
なぜ使いたくなかったのか?
それは自分の下手さ加減が如実に
わかってしまうという、
彼の実力からは信じられない理由である。
それほどジミヘンの
演奏は素晴らしく音に表れていた。
当時のあらゆるロック・ギタリスト
たちに影響を与え、彼のスリリングな演奏は、
麻薬のような怪しい輝きに満ち溢れていた。
YouTubeでその演奏は見れるので
絶対に見ておいてほしい。




