胎動5
あれから洋子は黙々と
コードチェンジを繰り返し、
右手のピッキングも慣れてきた。
それを見ていた大介は、
「だいぶ様になってきたな。
そろそろ曲の感じをつかもうか。
今 iPhoneを持ってくるから」
といって手を伸ばすと、
大介は急に振り返るなり、
「そうだ洋子、映画のバック
・トゥ・ザ・フューチャーは見たかい?」
「うん、テレビで見たけど」
「あれのダンスパーティー
の場面を覚えてないかい?
マイケル・ジェイ・フォックスが
ギターを弾きまくるシーンなんだけど…」
「そんな場面あったかしら」
「そのときの曲がこれさ。
今検索するよ。
おっと、本家チャック・ベリー
の動画が出てきたぜ」
「どんな人?」
「背が高くて、渋いタイプの黒人さ。
ほれ、こんな感じ」
「ヘェ~、長身なのね」
「なかなかカッコいいだろ?」
「そうかしら、でもギターは似合ってるわ」
「これはギブソンのセミアコで、ES-335というんだ」
「セミアコって?」
「半分アコースティックみたいに
中が空洞のエレキギターさ」
「ヘェ~」
「エレキは普通レスポールとか、
ストラトみたいなソリッドタイプが主流なんだ」
「今私が手にしてるのがそれ?」
「コピーだけど穴が空いてないだろ」
「そうね、それより
動画を見せて」
「まあ、焦らない、
焦らない。今スタートを押すよ」
と画面をタップすると、画像が流れ出す。
「パンツの裾が広がってる
けど、昔流行ってたの?」
「パンタロンっていうんだって」
「大介詳しいわね?」
「うん、本で読んだ。もう50年以上も
昔のことだから実際はよくわからないけど」
「お父さんたちも履いてたのかしら」
「まだ生まれてないと思うよ」
「50年前じゃそうよね」
「当時はセンセーショナルなことだったんだ」
「そうなの、確かにリズミカルな曲ね」
「あら、このポーズ面白い」
「有名なダックウォークだ」
「足がつらないのかしら」
「余計な心配だよ。あれ、
次の動画はジョン・レノンが出てきたぜ」
「音がこもっているわ」
「うん、録音状態が良くないね。
でも、ビートルズにも影響を
与えたなんて凄いことだぜ。
おっと、おったまげた。
今度はギターの神様エリック・クラプトン
とローリング・ストーンズの
キース・リチャーズとセッションしてるよ」
「そんなに凄いことなの」
「ああ、ギタリストを
目指す者なら夢みたいな取り合わせだ」
「ヘェ~」
「このPVみたいな感じで、
楽しんで演奏できたら最高だね」
「ふーん」
「おっと、いかんいかん。
こんなことよりコード進行の練習をやろう。
じゃあまず、AからD、またAに戻ってEからA。
これを1、2、3番と繰り返して、
サビのところはAからD、
そしてAに戻って、
E、D、A,、Eへ素早く移動する。
あとはこれに8ビートに乗せればいいんだ」
「そんなに早口でわかるはずないじゃない」
「動画に合わせて俺がコード名を叫ぶから、
それに合わせてコードチェンジ!」
「右手はどうすればいいの?」
「8ビートだから1234と、心で
カウントを取りながら、
音源のリズムに合わせればいい」
「うん、やってみる」
「よし、その調子、その調子。
慣れてきたらアンプから音を出すぞ」
「まだ下手よ」
「自分でもレベルがわかるから、
悪いところをすぐ直せばいい」
「わかったやってみる」




