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コンピテンス5  作者: g.j.jijo
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胎動4


コテージに到着するなり、メンバー

それぞれの楽器のパートごとに居場所を確保した。


ユキチは2階の寝室へサッサと姿を消し、

実は用意されたキーボードが自分の愛用

メーカーと異なるため、鍵盤のタッチを確かめる。


謙二はドラムセットに腰かけると、

説子に初歩的なリズムの取り方を説明し、


大介は洋子にオープンコード

の押さえ方を手とり足とり教えはじめた。


ユカは1人マイペースに

ベースラインを紡ぎ出す。



大介はまず、洋子にAのオープン

コードの左指の手本を示すと、


「2フレットの4、3、2弦を

人差し指と中指と薬指で


こんな風に押さえてごらん」

とやさしく話しかける。


そしてピックをはらうと、

じゃあ~ん、とメジャーの

明るい和音が勢いよく飛び出す。


洋子もそれをマネするが、

大介のように綺麗な和音が響かない。


「うん、まだちゃんと指で

フレットを抑えていないんだよ」


「力を入れてるつもりなんだけど…」


「最初からうまくいかないさ。

そんなこと気にしないでドンドンやってごらん」


「ダメ、うまくいかな~~い」


「じゃあ、やり方を変えよう。

洋子、コード進行の基本を覚えているかい」


「トニックとかだっけ?」


「そう、大切なのはキーのトニックと

4度のサブドミナントと5度のドミナントだ。

Aをキーにしたらサブドミナントはなんだ?」


「Dでしょ」

「よし正解だ。じゃあドミナントは?」


「バカにしないで、Eじゃない」

「はは、バカにしてないさ。


とても大切なことだから復習してるだけさ。

だったら左指の押さえ方はわかるかい?」


「えーっとDは同じフレットだったはずだわ」

「そうだ、人差し指と中指が

2フレットで薬指が3フレットだ」


「じゃあ、Eも簡単だろう」

「ちょっと待ってよ、3弦が

1フレットで4、5弦が2フレット」


「よしよし、そこまで

わかっていればあとは簡単さ」


「抑えるだけじゃなくて、

動かさなければいけないん

だからちょっと待ってよ」


「あとは8ビートに乗せるだけさ」


「もう、なんでそんなせっかちなの」


「俺がリフをやるから聴いてて…」


チャララ、チャラララララララ~。


「あー、ズルイ完璧に弾けるじゃない」


「だって、一番最初にコピーした

曲だからさ、わけないよ」


「大介に比べて指が短いんだから、

時間をちょうだい」


「指が短いことは

マイナスにならないよ。


女性だから弾けないなんて

いい訳になると思うかい?」


「そりゃあ、女性のロックバンドは

いっぱいいるけど…。私は特に短いの!」


「わかったよ、じゃあシャドー

ボクシングのようにAからD、

そしてEに指を動かす練習をしてごらん」


「うん!でも曲がそんな

に早く弾けるものなの」


「完璧なんて求めていないさ。

とにかく楽しむこと。

それが一番大切なんだ」


「簡単にいわないでよ」


「でも、洋子。

説子はもっと大変なんだぜ、

歌だからな」


「え~~、そうかしら。

彼女、結構カラオケうまいわよ」


「英語の歌詞だった?」

「うう~ん、日本語」


「それみろ、暗記するくらい

うたいこなさないとユキチの相手じゃない」


「ええ~、そうなの?」


「彼女が何年ヴォーカル

をはってると思うんだい?」


「そんなの知らないもん」


「コラ、かわい子ぶってもダメ。

ユキチは今、1人で耳にタコができる

くらい音源を聴き込んでいるはずさ」


「ふ~ん」


「さあ、俺たちも負けてはいられない。

あさってにはちゃんと仕上げなきゃいけない」


「ちょっと、人ごとだと思って」


「逃げ場はないんだ」


「ええ~」




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