夢幻5
ユキチの手術は夜の8時を
過ぎてもまだ続いていた。
手術時間はかれこれ
12時間になろうとしていた。
待合室の全員が
焦りを感じはじめていた。
大介も意識を回復したとはいえ、
最低3日間は面会謝絶で、
経過を見ながら治療を
しなければならないという。
福沢薫と桐原紀子が
ここで待機して、
子供たちはユカと謙二が
探してきたビジネスホテル
に向かうことになった。
しかし洋子はなかなか
席を立とうとはしなかった。
説子が見兼ねて、
「洋子、私たちがここ
にいてもどうにもならないわ。
ホテルで躰を休めようよ」
しかし、
「まだここにいたいのよ」
「洋子、お医者さんを信じよう」
「でも…」
「洋子さん、あなたまで
具合が悪くなっては大変よ。
ここは彼女のいう通りにして」
と紀子がいうと、
洋子はやっと重い腰を上げる。
実は携帯でタクシー
会社を検索して電話をかけ、
軽井沢病院まで手配すると、
まもなくタクシーが玄関に到着した。
前席のユカが運転手に、
「アパホテルまで」
と告げると、
すぐにタクシーは出発する。
運転手が、
「5人は定員オーバーなんです。
もし、パトカーを見つけたら
1人はすぐに頭を
下げてください」
と注意されると、
後席の洋子は説子
の膝に頭をうずめた。
車内では誰も話すことは
なく重苦しい沈黙が続いた。
タクシーの運転手
も空気を読んで黙ったまま
闇夜に映し出されたライト
に沿ってハンドルを操っていく。
しばらくすると
煌々と灯が見えはじめ、
ビジネスホテルに到着した。
一行はフロントの
女性から鍵を受け取り、
それぞれ割り当てられた
シングルルームに入って行った。
30分ほどして実が各部屋を回って
夕食を食べに行こう、と声をかけた。
洋子はお腹が空いていなかったが、
1人でいると悪いことしか考えられず、
気を紛らわす意味でも
行動を共にすることにした。
ホテルから軽井沢駅は割と近かった。
実がみんなに声をかける。
「何を食べようか」
するとユカが、
「軽いものがいいな」
「そうだな、じゃあ
あそこのイタ飯はどうだい」
と実が右手で指し示すと、
「うん、ピザとか
パスタなら食べられるわ」
と再びユカが大声で答える。
「じゃあ、そうしよう」
とみんなの意見が一致した。
木目を基調とした
ロッジ風の店内に
名を「トラットリア
プリモ」といい、
メニューには手打ちパスタ
と鉄板ピッツアが売りとあった。
営業時間は9時30分
までの1時間しかなく、
取り敢えず飲み物とサラダを3品、
ピッツアとパスタを人数分頼んだ。
みんな席に着いてもユキチの
ことが心配で会話が弾まない。
沈黙を破ったのは
実の携帯コールだった。
福沢薫の名前が表示され、
実が思わず叫ぶ、
「ユキチの母さんからだ。
もしもし、実です」
すると実の表情が
パッと明るくなった。
洋子が思わず、
「なんだって」
「ユキチ、
一命はとりとめたそうだ」
と実の表情も紅潮した。
「よかった、それで」
「うん、明日の朝さらに頭部の手術を
しなければならないが山は越えたと」
「本当、じゃあ助かるのね」
「ああ、
打ち所が良かったんだ。
奇跡的だって」
「よかった」
居合わせた全員が息を吹き返す。
「希望を失わずに済むんだ」
と実がぼそりと呟いた。
「うん、またみんなで同じ
目標を掲げることができるんだわ」
とユカが力強く語りかける。
実も負けじと、
「DEAD PEOPLEは改名しよう。
今日から俺たちのバンド名を
Dead or aliveにする。みんなどうだ」
「どういう意味だ」
「生死にかかわらず、
とか、生きていようと
死んでいようと、的な意味だ」
「へえ〜、かっこいいな。
さすが実だ」と謙二。
「これからのバンドメッセージ
にも通じるかもしれないわね、実」
「ユカ、その通りだ。
デビュー曲のイメージが出来たぜ」
「大介とユキチにも頑張って
もらわないといけないわ」
「洋子、その通りだ。
いい曲を作るぜ」
「dead or aliveに乾杯しよう」
みんな、
「ヨッシャー」
と声を弾ませた。
みなさんこんにちは、
今週で「コンピテンス5」は終了します。
しかし、色々考えた末、
コンピテンスシリーズを
ここで終えるのは、
あまりにも中途半端であると決断し、
来年も「コンピテンス6」
として連載をすることにしました。
しかし、どうしても
もう1つ別の小説を書きたいため、
これまでの毎週の連載を
隔週といたします。
僕は小説を書く場合、
あまり先のことを考えていません。
はじめに構想を描くと、
何か結論に向かって
立て板に水を注ぐようで、
話がつまらなくなる、
と感じているからです。
サブタイトルもその時の
フィーリングや感性で決めています。
でも、この方法では限界があるため、
1つの作品をちゃんと構想を
練ってから書き始めようと決めました。
そうしないと巷の文学新人賞という
物には通じないと捉えているからです。
来年は的を絞って新たなチャレンジとして、
文学雑誌の新人賞にトライします。
まあ、最初は下読みで落とされるでしょうが、
自分の実力を知る上でも財産になるでしょう。
話は変わりますが、僕がコンピテンスを
連載した当初は1つの連載につき
4万文字が限界だったのですが、
現在は7万文字まで可能なため、
「コンピテンス6」は6万文字
以上の作品にする予定です。
また来年の春、お会いできる
日を心から楽しみにしています。
すいません訂正です。
今日会社の休憩中グーグルで
dead or aliveを調べたら
このバンド名のグループ
が実在していました。
この状況にもぴったりで、
事故のアクシデントにも
相通じるので、
新しいバンド名を
accidentに変更します。
この模様は小説でギャグ
にするのでお楽しみに。
沼里泰行
g.j.jijo




