表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンピテンス5  作者: g.j.jijo
45/47

夢幻3


午後2時を回った時、

軽井沢病院の正面玄関に

1台の黒いタクシーが到着した。


後方のドアが開き、

降りて来たのはユキチ

の母の福沢薫だった。


彼女は入院に必要な下着や

寝間着など、身の回りのものを

用意してスーツケースに詰めて来た。


自動ドアが開くと、

すぐに案内の窓口に立っている


女性に声をかけて、

手術室の待合室を尋ねた。


指示された通りに歩いて

エレベーターを確認すると、


2階のボタンを押し、

脇目も振らずに実たちがいる

待合室に吸い込まれて行った。


部屋に入ると実は

すぐに立ち上がり、


「お母さん、俺が

付いていながら申し訳ありません」

と深々と頭を下げた。


「実さん、いいのよ。

そんなことより夕子の現状はどうなの」


洋子がとっさに答える。

「それが、すぐに緊急


手術が始まって、まだ

なんの説明も受けていないんです」


「そう、わかったわ。

じゃあ、窓口に行って手続き

を済ませないといけないわ」


「お母さんすみません、

2人の現状を私たちも

知りたいんですが…」


「あなたのお名前は」


「霧島洋子といいます。

夕子さんと一緒に事故にあった

桐原大介の中学時代からの友人です」


「わかったわ、実さんも来る?」


「はい」


と3人は再びエレベーター

に乗り、1階の窓口に向かった。


そこで名前を名乗り、

手続きを済ませると、


窓口の担当者が、外科部長の名前

と救急用の診察室で待つようにと告げた。


外科の診察室は1階のほぼ中央にあり、

待合室は大勢の患者で溢れていた。


救急用の診察室はそこから

少し離れた救急センターの奥にあった。


それから待つこと30分、

福沢さん、と呼ばれた。


診察室に入ると、

割と広いスペースに


横になれる長椅子と簡易な

椅子が3脚用意されていた。


白髪の医者は横澤と名乗った。

そして淡々と現状の説明を始める。


「交通事故によって2人は、

頭部・胸部・腹部打撲傷、


右助骨多発骨折による血気胸、

肝臓破裂・脾臓破裂・腹腔内出血、


出血性ショックの重体で

手術如何では命の危険性がある」

とのことだった。


特にユキチは頭部に

強い衝撃を受け、脳挫傷で


意識が回復しても後遺症は

免れないという説明であった。


全力は尽くすが、

最悪の事態も考えて

おいてくださいとのことだった。


3人はある程度

予期していたとはいえ、


ショックを隠せない。

命の危険性があるのだ。


思わず洋子の

瞳から涙がこぼれた。


両手で額を覆い

泣き崩れてしまった。


実がその両肩を掴んで必死に叫ぶ。

「あいつらは

絶対に死ねことはない。

2人の生命力を信じよう」


か細い声で洋子は、

う、う、う、とうつむき、

言葉にならない。


それでも実は、

「あいつらを神様が

見捨てるはずがないんだ。


自由に羽ばたき、

これから大空を

飛ぶ存在になるんだ。


だから洋子、

もう泣かないで。


僕たちができること

をしようじゃないか」


「私たちに何が

できるっていうの?」


「神様を信じるんだ。

僕たちができることは

人間の魂を信じて祈ることだ。


2人がこの世に必要な存在で

あることを知らしめることだ。


決してこの火を

絶やしてはいけない。


多くの人間が僕らの放つ

メッセージを待っているんだ。


その使命を絶対に

忘れてはならない」


「2人ともありがとう。

夕子は素敵な仲間に囲まれていたのね。


絶対に助かるから

お医者さんたちを信じましょう」

という薫の言葉に、


「はい」

と2人は大きな声で答えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ