夢幻1
飛び出してきたのは赤信号を
無視した4トントラックだった。
ぶつかった時は
ほとんどノーブレーキで、
ユキチと大介が乗った
自転車はひとたまりもなかった。
衝撃でユキチと大介
の躰は20メートルほど飛び、
同時にブレーキ音が
けたたましく響いた。
対向車がかろうじて
急ハンドルを切ったおかげで
二重事故という
最悪の事態だけは免れた。
しかし、ユキチと大介は
頭を強く打ったのか、
あたり一面赤い
血が広がっていった。
他のメンバーたちは
突然の惨劇に言葉も出なかった。
次の瞬間洋子が、
「大介‼︎」
と必死に叫んだ。
それに続きみんな
自転車を放り投げ駆け寄る。
現場に居合わせた歩行者や
車からもドライバーたちが
一斉に飛び出して来る。
ある者は警察、
救急車に連絡し、
またある者はユキチたち
の状態を確かめようとした。
現場は人並みに溢れ、
ストップモーション
のように時が流れていった。
10分と経たないうちに
救急車や警察車両が到着し、
ユキチと大介は直ぐに
担架に乗せられ病院に向かった。
トラックの運転手は呆然
と警察官の質問に答える。
原因は馴れない道路で、
土地勘が無くスマートフォンに
写し出された画面に、
気を取られブレーキをかけずに
交差点に突っ込んで
しまった結果であった。
洋子が救急車に付き添い、
他のメンバーたちは
現場検証に立ち会った。
救急車の中では救急員が
応急処置に追われていた。
運ばれる病院が
軽井沢病院に決まると、
洋子は直ぐに大介と
ユキチの家族と連絡を取り、
事故の様子を伝え、
軽井沢病院に来るように伝えた。
その後洋子はずっと神様に
2人の無事を祈っていた。
病院に着くと待機して
いた職員たちは手際よく、
2人を担架からストレッチャーに
乗せ替え、手術室に運び込まれる。
間も無く赤い
ランプが灯った。
洋子は控え室のベンチに座って、
とにかく2人の無事を祈るだけだった。
さっきまであんなに
生き生きしていた2人が、
いま生死の境を彷徨っている。
もし何かあったら、と考えると、
洋子のハートは張り裂けそうだった。
そんなことはあり得ない、
絶対にまた2人の笑顔が見れる、
そう信じていた。
そうでなかったら
あまりにも心に大きな穴が開く。
その深さは
とても深すぎる。
しかし、洋子は
気丈に説子に電話をかけた。
直ぐに説子は電話に出た。
「洋子、そっちはどう」
「うん、今2人
とも手術が始まった」
「大丈夫そう?」
「なんともいえない、
始まったばかりだもん」
「処置をした人は
なんていってたの」
「2人とも頭と躰に
強い衝撃を受けているって」
「あんなに
飛ばされたから当然だわ」
「陥没や骨折も
してるだろうって」
「心配だわ」
「そっちはどうなの」
「うん、いま警察の人が事情
を聞いて現場検証をしてる」
「何が原因だったの」
「スマートフォンの画面を
見てたら、赤信号に気づかず
にひいてしまったんだって」
「まあ、なんてこと。
それが原因なの」
「洋子、悪気は無かったって。
家族を路頭に迷わすって、
運転手は真っ青になってた」
「ちゃんと調べて
おけば済むことじゃない。
それが原因で2人は
以前のように生きれない
かもしれないのよ」
「うん、そうだけど。
洋子、それよりもこれから
先のことを考えないと」
「そうね、ユキチさんと
大介の家族には連絡を取ったわ。
直ぐに病院に
駆けつけてくれるって」
「うん、わかった。
病院はどこなの」
「軽井沢病院」
「わかった、こっちが
片付いたら直ぐに向かうわ」
「うん」




