慟哭4
ユキチはゆっくり歩いて
センターに立つとマイクを取り、
「テスト、テスト、テスト。
マイクは入っているか?」
と正面の実に声をかける。
「ああ、大丈夫だ。
ユキチ、ラララ〜
でうたってみてくれ」
「OK! ラララ、
ラララララ〜」
「よし、今度は説子の番だ」
「ラララ〜、
ラララララ〜。
これでいいかしら」
「うん、じゃあ次謙二、
適当に叩いてみてくれ」
「あいよ!」
ズドン、ズズチャ、
ズズチャチャ、ズズチャ〜。
「よし、ユカも」
「はーい」
ズドドドド、ズドドド〜。
「大介はギターリフから頼む」
「わかった」
チャララ、
チャラララララ〜。
「ちょっとトーン
とボリュームを上げてくれ」
「これぐらいでどうだ」
チャララ〜。
「よし、OK。洋子さん
コードを刻んでみて」
「はい」
ズズチャチャ、ズズチャ、
ズズチャチャ、チャチャーン〜」
「よーし後は俺か、
ユキチ、交代してくれ」
「あいよ実、
いつでもいいぜ」
「ああ」
ジャーン、
ジャジャジャジャーン。
「よし、こんなもんだろう。
じゃあ、さっそく録音を始めよう。
今からスタートする。
大介、タイミングを
見計らってはじめてくれ」
「よっしゃー行くぜ。ワン、
ツー、ワンツースリーフォー」
と始まった演奏は、
録音具合いを確かめながら、
テイク12まで及んだ。
今回は、完成度を
求める録音ではないため、
生の一発録り
という形で行なったが、
このライブ音源はLINEを
通してみんなで共有された。
説子は自分の声が、
想像とはかなり
違ったことに、
自信を失いかけたが、
よく声が伸びる、
とみんなに褒められた
ことで自信を取り戻していた。
洋子は迷惑にならない
ことが目標だったので、
自分が目立たなくても
十分手応えを感じていた。
一つのものをみんなで
作り上げるという作業は、
苦労も多いが、
形となって残ると、
やはり報われた心境になる。
この感覚を一度味わうと
忘れられないものである。
だから、どんな試練でも
乗り越えることができるのだ。
音源を聴きながら行う
反省会でも、活発な意見が飛び交い、
それをそれぞれが聞き入れることで、
ミュージシャンとしての自覚になる。
このチームワークが
成長にはとても重要だ。
洋子と説子はもう
DEAD PEOPLEの
立派なメンバーになった。
信頼関係が芽生えた
ことがその証拠である。
22時を回った
ところで大介が切り出した。
「よしあとは明日、
自転車を借りたから
みんなで軽井沢を満喫しよう。
その後はバーベキューで打ち上げだ」
みんな声を揃えて
「よっしゃー」
の掛け声が轟いた。
それから
洋子と説子は
共にベットに入っても
イヤホーンで自分たちの
演奏を何度も繰り返し聴いていた。
少し気分が高揚して
なかなか寝付けないでいたが、
充実感に包まれていた。
「参加してよかったね」
と説子の問いかけに洋子は、
「みんな心から音楽を愛してる。
その心境が共有出来ただけでも嬉しい」
「本当ね、洋子眠れる?」
「羊を数えてみる」
「じゃあ私も、お休みなさい」
「うん」
この言葉を最後に
夜は更けていった。




