一体1
それから洋子は実にみっちり
コード演奏のコツを教えてもらい。
説子は説子で大介に
伴奏してもらいながら
音程、リズム感、
そして休符などの
間の取り方を
叩き込まれた。
この時、大介は説子の
歌にかなりの可能性を感じていた。
音程がハマると、
彼女の歌はとにかく
パワフルで、
聴く者を圧倒する力がある。
育て方次第では、
大橋純子のような
歌い方ができる、
と確信していた。
午前11時を
過ぎたところで、
女性陣は昼食の準備を
するためにキッチンに向かった。
洋子はまず、大きい
フライパンにベーコンを炒め、
頃合いを見てニンニクを入れ、
少し焦げ目がついた時に
生クリーム、牛乳を投入。
そして塩、コショウ
で味付けしてから、
卵黄、チーズを
加えてソースを完成させた。
そこへユカがキッチリ
茹で上がったパスタを混ぜて
あっという間に
カルボナーラが出来上がった。
それにコーンスープと野菜サラダを
説子とユキチが分担して作りランチが完成。
お腹を空かせた男性陣は、
一斉に大皿のカルボナーラに襲いかかる。
見かねた洋子が、
「まだたくさん残ってる
から焦らなくても大丈夫よ」
と声をかけても無駄だった。
大皿のパスタは
すでに影も形もなく、
女性陣はフライパン
に残った分を分けて
余ったパスタを男性陣に差し出した。
実が、
「本当に謙二はよく食べるな」
と半ば呆れ顔。
謙二はまったく意に返さず。
ひたすら山盛りのパスタにかじりつく。
「パスタを10人前も茹でたんだから」
とユカが肩が痛いというポーズをとると、
謙二はさすがに恐縮して、
「これから力仕事は俺がやる」
と宣言し、一同の笑いを誘った。
みんなの食事が終わるのを
見計らってユキチがドリップ式の
コーヒーを入れながら、
「説っちゃんと洋子は午後、
謙二とユカとグルーブ感を
強化する練習をしてもらう」
「ユキチさん、
グルーブ感って」
「洋子、ノリってわかるか?」
「よくわからないわ」
「そうだな、
どんな音楽だったら
自然と躰が動きたくなるかな」
「力強いビートかな」
「なるほど、ビートって
鼓動ともいうのよ。
私たちの心臓だって
一定のビートで刻まれているの。
だから、少しでも乱れると
命を落とすほど危険なものなの。
音楽の場合も同じで
少しでも乱れると、聴く
に耐えないものになる」
「へえー、じゃあ根幹
ともいえるんだ」
「そう、だからドラム
とベースはとても重要なわけ」
「ユキチさん、わかったわ」
「説っちゃんもわかってもらえた」
「はい」
「謙二にはもう少し
頑張ってもらわないとな」
「ユキチさん、
よくわかった。
俺も徹底的に正確な
リズムを刻む練習をするよ」
その後コーヒーに
マカロンをほうばりながら、
それぞれ音楽に対する
意識が徐々に上がってきた。




