適応5
大介はまず店の中に
入るとお目当ての
ジョン・レノンの愛した
フランスパンを5本手に取る。
さらに側に並んでいた
特製ガーリックオイル
をお盆に乗せた。
近寄ってきたユキチに、
「ここのバケットで
ガーリックトーストに
すると超うまいらしい」
「喰ってみねえとな。
あたいはクロワッサン
が食べたいな」
「だったら、ここの
塩クロワッサンも
評判だぜ。
普通のクロワッサン
とは違うらしいぜ。
あれ、まだ陳列されてねえな。
ちょっと聞いてみる。
すいません、
これで全部じゃないですよね?
えっ、あと30分
くらいでみんな焼ける」
それを聞いて
ユキチが、
「大介、洋子に電話して
どんなおかずにするか、
確かめたほうが良くねえか」
「そうだな、今かけてみるよ」
とポケットから携帯を取り出し、
履歴から洋子をピックアップすると、
コールに切り替わる。
そして、
「洋子か?
今なにしてる」
「朝ごはんの用意だよ。
大介、パンを買いに
行ってるんでしょ。今どこ?」
「ああ、パン屋の中だ」
「ユキチさんも一緒なの」
「ああそうだ、フランスパン
とクロワッサンを買おう
と思うんだけど、
おかずは何を予定してる?」
「簡単な卵料理と
サラダとコーヒー、
それにスープぐらい」
「スクランブルエッグとか
ハムエッグってとこか?」
「オムレツでもいいわよ」
「じゃあ、フランスパンと
イギリスパンがあれば問題ないな」
「イギリスパンって
食パンのことでしょ」
「ああ、四角
じゃなくて山型の食パン」
「OK!」
「ユキチがクロワッサン
を食べたがってる」
「いいんじゃない、
私も食べたいわ」
「他にパンの
リクエストはないかな」
「じゃあ、スイーツがいいな」
「わかった、あと30分
ぐらいでパンが焼ける。
だから1時間ぐらいで
戻れるから準備しておいてくれ」
「OK、2人は卵どうする?」
「うん、オムレツでいい」
「わかった、
じゃあ用意しておく」
大介は電話を切ってから
ユキチを見て、
「卵料理だって言うから
オムレツにしといたぜ」
「あいよ、洋子は
料理が上手いのか?」
「普通じゃねえか、
よくわからねえ」
「あたいは
目玉焼きが専門だ」
「誰でもできるだろ」
「お前と一緒にするん
じゃねえよ、馬鹿野郎」
「でも、ユキチがエプロンを
つけて台所に立った姿を見てみたいな」
「お前、変なこと
考えてねえか?」
「別に?」
「いいや、目つきがおかしい」
「ユキチのエプロン姿、
絵になるかもよ」
「顔が卑猥だぜ」
「いたって正常」
「だから男は嫌いだよ」
「エプロン姿が
そんなに気になるか?」
「とにかくお前
のイメージが嫌なの」
「イメージ?
だってユキチ、お前
スカートぐらいはくだろ」
「当たり前だ」
「女がスカート似合うね
って言われて嫌な気分になるのか?」
「相手による」
「あれ、それは
特別ってことかな」
「いい気になるなよ」
「だったら別に
いいじゃねえか」
「うっセーな」
「結局俺が嫌なの」
「そう言うこと」
「あれ?マジ?」
「うるせ〜な地獄へ
落ちろとうへんぼく」
「うー〜ん………」
この時の大介に
女心がわかるはずもなく、
ただ、ユキチの
エプロン姿だけが
脳裏に焼きついて
一人歩きして行くのであった。




