適応1
大介とユキチは軽井沢銀座
商店街の街灯りが薄っすらと
見えてきて安堵の表情を浮かべていた。
「大介、やっと着いたな」
「ああ、ここには
レンタルサイクル店が3つもある」
しかし、店舗がどこも
開いていないのにユキチが気づき、
不安そうに話しかける。
「おい、店がほとんど閉まっているのに
本当に自転車屋が開いているのか?」
「いや、出る前にちゃんと
8時までやってるって確認したさ」
「本当か?もう1回調べてみろ。
こんなに暗くて自転車
を使う奴なんていねえだろ」
「わかった、今調べてみるよ」
すると大介の突拍子
もない声が響き渡る。
「あれ~〜、一番近くの店は18時までだ。
もう1件…は17時。最後の店も18時だ」
「最悪、18時を8時
と勘違いする奴がいるか?」
「あちゃー、参ったな。
今19時52分。打つ手がないぜ」
「おい、でもここまで歩いて何分かかった?」
「そうだな、30分弱ってとこかな」
「ここからパン屋まで遠いのか」
「いや、そんなに遠くないはずだよ」
「じゃあ、明日の朝お前
が歩いてくるしかねえな」
「あれだけみんな期待させたからな」
「ここからまたあの
暗い道を歩いて帰るのか」
「ここまで来たんだ。
何かみんなに土産でも買って帰ろうか」
「どこの店がやってるんだよ」
「そうだよな仕方がない。
ユキチ帰ろう」
「ああ、ここは東京と違うんだな。
そうだ、コンビニもないのか?」
「その手があった。今調べるよ。
コンビニなら結構遅くまでやっているはずだ。
ハーゲンダッツでも買って帰ろうぜ」
「まあ、何もないよりかマシだ。
今度はどこまで歩くんだ」
「駅まで行こう」
「本当にお前といると疲れるぜ」
「まあ、そういわずに」
「今、洋子に電話を入れるぜ」
「ああ」
ユキチはiPhoneの画面を
タップすると、洋子がすぐに電話に出た。
「洋子か、大介が馬鹿だから
レンタルサイクルの営業時間を間違えやがった。
店が閉まってるから
ハーゲンダッツでも買って今から帰るわ」
「わかったわ、明日パンはどうするの?」
「大介が責任を持って
歩いて買いに行くそうだ」
「あら、朝早くから大変ね」
「そっちは今何をしてる」
「説子と私は楽器の特訓よ」
「そうか、じゃあ明日楽しみにしてるから」
「大介に早く帰って来てって、
伝えてくれる」
「そりゃ無理だ、
少なくても4~50分はかかる」
「ストロークを覚えたいのよ」
「それは練習して掴む以外にない。
大介が曲を聴きこめってよ」
「わかったわ、とにかく早く帰って来て」
「大介にそう伝えればいいのか?」
「うん」
「大介、今夜練習に付き合えってよ」
「ああ、わかった」
「じゃあな洋子、
お土産を買って帰るから」
「どこで買うの」
「コンビニしかやってねえんだ」
「じゃあ、コカコーラの大瓶を買って来て」
「わかった、他になんかあるか」
「サラダチキンがあったら買って来て」
「じゃあ切るぞ」
「うん」
「大介、行こうか」
「地図によると駅近にある」
「急ごうぜ」
「わかったよ、こっちを左だ」
「あいよ!」と、
2人はまた心細そうに
寄り添いながら歩き出した。
大介は土地勘のない
道路を、ただひたすら
携帯だけを頼りに歩いていた。
ユキチは大介の腕の
感触を噛み締めながら、
もう少し一緒に居られること
がちょっとだけ嬉しかった。




