思案3
役割分担をちゃんと決めて
それぞれが違う料理を作った結果、
1時間半で夕食が出来上がった。
一番難しかったのは鳥の唐揚げで、
しょうがとにんにくがなかった
代わりに焼肉のタレを代用。
しかし、調味料に鶏肉を
漬け込む時間がなかったため、
味がうまく染み込まなかった。
加えて片栗粉はあったが、
上新粉がなく唐揚げ独特の
カラッとした仕上がりには
ならなかった点が問題だった。
一方、カレーは牛肉がトロッとろで、
ルーとの融合が素晴らしく、
みんなその食感と
味の深さに驚きを隠せなかった。
ユキチの作ったシーザーサラダは、
マヨネーズ、牛乳、粉チーズ、
レモン、さらにコンソメスープの素
を隠し味にして濃厚な味に仕上がった。
野菜の食感にクルトンで
アクセントを効かせることが
シーザーサラダの特徴である。
料理の出来にショックを
受けていたのはやはり洋子で、
食事中、みんなの口が滑らかだった分、
言葉数が少なかったのが目についた。
和やかに会食も終わり、
みんなで食器の後片づけを済まし、
おのおのが気ままに腰を下ろして、
自然と今日の反省会がはじまった。
真っ先に洋子が、
「調味料に肉をなじませなかった
のがいけなかったみたい。
唐揚げが美味しく
なくてごめんなさい」
と謝る姿が痛ましかった。
その様子に実は、
「洋子ちゃんが感じてる
ほどまずくはなかったよ。
料理はレシピ通りにやれば、
そんなにひどい味にはならないものさ。
失敗は成功のもとだからいい経験だよ。
僕も母親によく怒られながら
料理をしたから現在がある」
といういい回しに、
実らしい思いやりがにじむ。
「謙二がカレー3皿と
信じられないくらい唐揚げ
食べるのに驚いたぜ。
本当にマズかったら
あんなに食えないさ」
とユキチもフォローする。
大介が、
「明日は班の組み合わせを変えよう。
そうすれば気分も違うはずさ」
とイッチョマエの意見をいうと、
「炊飯釜のスイッチを
押しただけのやつがよくいうよ」
とユキチが反撃。
「馬鹿野郎、米を研ぐのも、
水の量を決めるのも判断力がいるんだ」
と大介は迎撃するが、
「確かに一生懸命メモリを見ていたな」
という実の一言に、周りの
雰囲気が一気に明るくなった。
「そうだ、レンタル自転車の
貸し出しが8時までだっていうから
俺行ってくるよ」
と大介が告げると、
「1人じゃ寂しいだろ、食後の運動
を兼ねてあたいもついて行ってやるよ」
とユキチが続く。
ビクッと洋子が反応するが、
気づかれないようにみんなから顔を背けた。
そのとき、
「ちょうどよかった
洋子さんと説っちゃんに
明日の練習の取り組み方
について話したかったんだ」と実。
ユカと謙二も、
「私たちも色々演奏
のアドバイスがしたい」
と意見がまとまり。
大介とユキチは晴れて、
軽井沢の暗い夜道を2人で
歩いていくことになった。




